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マイクロン売上4.5倍、AIメモリー特需市場はいつまで続くのか

by 山本 涼太
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615億ドル予想が示すメモリー循環の変質

米Micron Technologyの業績見通しは、メモリー半導体が従来の景気循環商品からAIインフラの制約資源へ変わりつつあることを示しています。同社は2027会計年度第1四半期、つまり2026年9〜11月期の売上高を615億ドル前後と予想しました。前年同期にあたる2026会計年度第1四半期の売上高は136億4300万ドルだったため、単純計算で約4.5倍です。

注目すべきは、単に売上規模が大きいことではありません。AIサーバー向けのHBM、高容量DDR5、データセンターSSDが同時に伸び、粗利益率も高水準にとどまっている点です。AI投資がGPUだけでなく、メモリー容量、帯域、ストレージ階層まで押し上げている構図が鮮明になりました。

HBMとDDR5が押し上げた異例の利益率

9〜11月期4.5倍予想の計算根拠

Micronが9月30日に発表した2026会計年度第4四半期の売上高は542億2900万ドルでした。前年同期の113億1500万ドルから約4.8倍、前四半期からも31%増えています。通期売上高は1331億8800万ドルで、前年度の373億7800万ドルから3.6倍近い拡大となりました。

会社側が示した次四半期見通しは、売上高615億ドルプラスマイナス15億ドル、非GAAP粗利益率86.25%、非GAAP希薄化後EPS38.15ドルプラスマイナス1ドルです。メモリー企業としては極めて高い収益性で、短期的な在庫循環だけでは説明しにくい水準です。

製品別では、2026会計年度第4四半期のDRAM売上高が398億ドルで全体の73%を占めました。NAND売上高は141億ドルで、全体の26%です。DRAMは前年同期比343%増、NANDは526%増とされ、AIサーバー向けだけでなく、推論処理の周辺で使われるストレージ需要も拡大しています。

AI推論が増やすメモリー搭載量

AI半導体市場ではGPUの演算性能が注目されがちですが、実際のシステム性能を左右するのはデータをどれだけ速く、どれだけ多く供給できるかです。NVIDIAのGB200 NVL72は、72基のBlackwell GPUと36基のGrace CPUを接続するラックスケール設計で、仕様上は13.4TBのHBM3Eと576TB/sのメモリー帯域を備えます。

このような構成では、HBMは単なる付属部品ではなく、AIアクセラレーターの性能上限を決める中核部材になります。大規模言語モデルではパラメーター数、コンテキスト長、同時処理数が増えるほど、GPU近傍の高速メモリーとCPU側のサーバーDRAMが同時に必要になります。Micronがデータセンター向け製品群を強調する理由はここにあります。

同社のCore Data Center Business Unitの第4四半期売上高は180億ドル、Cloud Memory Business Unitは163億ドルでした。データセンターSSD売上高も約100億ドルに達し、前年同期比で10倍超と説明されています。生成AIの利用が学習中心から推論、エージェント、検索拡張、KVキャッシュ退避へ広がるほど、DRAMとNANDの境界をまたぐ需要が生まれます。

供給契約と設備投資が変える半導体の力学

長期契約が支える価格交渉力

今回の決算で重要なのは、Micronが需要の可視性を数年単位で語り始めた点です。同社は戦略的顧客契約を26件締結し、2030年までの売上高の35%超に相当すると説明しています。顧客からの金融コミットメントは320億ドルに増え、その多くが現金預託とされています。

Reuters報道によれば、これらの契約に関連する残存履行義務は約1500億ドル規模に拡大しました。これは、クラウド事業者やAIチップ企業がメモリー確保を調達部門の通常業務ではなく、事業継続上の戦略課題として扱っていることを意味します。

背景には、供給増の難しさがあります。HBMはDRAMダイを積層し、TSVや先端パッケージングを使うため、通常のDRAMより製造工程が複雑です。TrendForceは、主要3社のDRAMウエハー投入に占めるHBM比率が2025年末の18%から2026年末に22%、2027年末に30%へ上がると予測しています。一方で、HBMのビット供給比率は同期間に8%、9%、13%にとどまる見通しです。

SamsungとSK hynixにも広がる需給逼迫

メモリーの逼迫はMicronだけの話ではありません。SK hynixは2026年第2四半期に売上高79兆3187億ウォン、営業利益60兆5426億ウォンを記録し、営業利益率は76%でした。同社はHBM4の量産出荷を第2四半期に開始し、AIインフラ投資の拡大で顧客需要が供給能力を上回っていると説明しています。

Samsung Electronicsも2026年第2四半期に連結売上高171兆5000億ウォン、営業利益89兆5000億ウォンを計上しました。半導体を含むDevice Solutions部門の売上高は127兆5000億ウォン、営業利益は89兆2000億ウォンで、メモリー事業は過去最高の四半期売上高と営業利益を更新しています。同社も2026年後半について、サーバーDRAM、eSSD、HBMの需要加速と供給制約の継続を見込んでいます。

業界全体の見方も強気です。TrendForceは2026年の世界メモリー市場予測を8893億ドル、2027年を1兆2800億ドル超へ引き上げました。DRAM市場だけでも2026年は6187億ドル、2027年は9033億ドルを予想しています。WSTSも2026年の世界半導体市場を1兆5100億ドルとし、メモリーが8000億ドル超へ拡大すると見ています。

熱狂を冷ます可能性のある三つの圧力

まず注意すべきは、AI需要の強さと顧客の投資採算が同じではない点です。クラウド企業がメモリーを確保しても、AIサービスの収益化が想定より遅れれば、次の契約更新や追加発注に影響します。長期契約は売り手に可視性を与える一方、価格帯や数量の条件次第では将来の柔軟性を制限します。

次に、設備投資の時間差です。Micronは米国投資を2035年までに2500億ドル超へ増やし、アイダホ、ニューヨーク、バージニアなどで生産基盤を広げています。さらに日本、台湾、シンガポールでも拡張を進めます。ただし、新工場の初期ウエハー出力から市場に meaningful な供給が出るまでには数四半期を要します。短期的には供給不足を解消しにくく、長期的には過剰投資のリスクも残ります。

三つ目は、製品仕様そのものの変化です。TrendForceは、DRAM供給の逼迫によりNVIDIAが次世代Rubin UltraのHBM構成を複数案で検討していると指摘しました。AIチップ側がメモリー搭載量を抑える方向へ設計変更すれば、短期の不足は緩和されますが、メモリー単価や製品ミックスには別の圧力がかかります。特需が続くほど、顧客側も圧縮、階層化、低容量構成でコストを抑えようとします。

投資家と企業が確認すべき次の指標

Micronの615億ドル見通しは、AIメモリー市場がなお熱を帯びていることを示す強いシグナルです。ただし、見るべき指標は売上高だけではありません。HBMの契約価格、DRAMとNANDの平均販売価格、サーバー向け出荷ビット、戦略的顧客契約の残高、設備投資の内訳を併せて確認する必要があります。

企業側にとっては、メモリーを安価な汎用品として調達する時代が終わりつつあります。AI基盤を構築するなら、GPU、ネットワーク、電力だけでなく、HBM、RDIMM、LPDDR、SSDまで含めた容量計画が必要です。メモリーがAI競争力の制約条件になる局面では、調達戦略そのものが技術戦略になります。

参考資料:

山
山本 涼太

AI・半導体・先端技術・SaaS

AI・半導体・通信などの先端技術とそれを事業化する企業を取材。技術の本質と市場インパクトをわかりやすく解説する。

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