商船三井LNG船がホルムズ海峡通過 日本船初の突破口
はじめに
2026年4月3日、商船三井はペルシャ湾内に停泊していたLNG(液化天然ガス)運搬船「SOHAR(ソハール)LNG」がホルムズ海峡を通過したと発表しました。2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、事実上の封鎖状態が続くホルムズ海峡を日本関係船舶が通過したのは、これが初めてのケースです。
ペルシャ湾内には日本関係船舶45隻が滞留しており、そのうち約7割がエネルギー関連の船舶とされています。原油輸入の9割超を中東に依存する日本にとって、この通過が今後の海上輸送正常化への足がかりとなるかが注目されています。本記事では、今回の通過の経緯や背景、そして日本のエネルギー安全保障への影響を解説します。
SOHAR LNG通過の経緯と詳細
通過した船舶の概要
ホルムズ海峡を通過した「SOHAR LNG」は、パナマ船籍のLNG運搬船です。商船三井とオマーンの企業が共同で保有しています。同船はホルムズ海峡から約100キロの地点に停泊していたとされ、海峡を通過してオマーン湾側に出たことが確認されました。
複数の報道によれば、同船は空荷(バラスト状態)で通過したとみられています。LNGを積載していない状態での航行であったことから、リスクを最小限に抑えた形での通過だったと考えられます。
商船三井の発表内容
商船三井は「船員と船舶の無事を確認している。今後も船員、船舶、貨物の安全確保を最優先に対応していく」とコメントしています。一方で、通過した日時や、何らかの交渉が行われたかどうかについては公表していません。
日本政府関係者の話として、船の行き先は日本ではなく、政府は今回の通過に関する交渉には関わっていないとの報道もあります。
ホルムズ海峡封鎖の背景と現状
封鎖に至る経緯
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランに対する共同軍事攻撃を開始しました。これを受けてイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)は海峡の通航を禁ずる旨の警告を発出し、ホルムズ海峡の海上交通は事実上停止しました。
ホルムズ海峡は世界の原油およびLNG供給の約5分の1が通過する要衝です。封鎖前は1日あたり約120〜138隻の船舶が航行していましたが、封鎖後は激減し、一時は1日あたり数隻にまで落ち込んだと報じられています。
4月3日の通航状況
商船三井のLNG船が通過した4月3日には、ほかにもフランスの海運大手CMA CGMが所有するコンテナ船「CMA CGM Kribi」がホルムズ海峡を通過しています。西欧に関連する船舶の通過が確認されたのは開戦後初めてとされています。
さらに、オマーン所有とみられる超大型原油タンカーなど複数の船舶も、オマーン寄りの通常と異なる航路を通ってホルムズ海峡を通過した可能性が衛星データで示されています。複数の国に関連する船舶が同時期に通過したことで、海峡の通航が部分的に緩和されつつある兆候として注目を集めています。
イランの立場と外交交渉
イランのアラグチ外相は3月20日、共同通信のインタビューで「海峡を封鎖しているわけではない。イランを攻撃する敵の船舶に対して封鎖している」と主張し、日本関連船舶の通過を認める用意があると表明しました。敵対国以外の船舶については、当該国との協議の上で通航の安全を提供する用意があるとしています。
一方、日本の茂木外相はイランとの協議を否定し、ホルムズ海峡の全面的な開放を求める立場を示しています。個別交渉による通過ではなく、国際的な枠組みでの解決を目指す姿勢がうかがえます。
日本のエネルギー安全保障への影響
ペルシャ湾内の滞留船舶
国土交通省によると、ペルシャ湾内に滞留している日本関係船舶は45隻で、その内訳は原油タンカー12隻、石油精製品・化学薬品タンカー12隻、LNG船6隻などとなっています。エネルギー関連の船舶が全体の約7割を占めており、原油タンカーには日本の消費量約10日分に相当する原油が積まれているとの報道もあります。
日本籍船は5隻、日本人乗組員が乗船している船舶は5隻で、計24人の日本人が乗船しているとされています。
中東依存の構造的リスク
日本は原油輸入の約9割を中東諸国に依存しており、そのほとんどがホルムズ海峡を経由して輸送されています。LNGについても約2割を中東(主にカタール)から調達しています。
ホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合、国内の石油備蓄(約254日分とされる)が緩衝材となりますが、LNGはマイナス162℃での管理が必要なため長期備蓄が困難であり、電力・ガス供給への影響がより早期に顕在化するリスクがあります。
注意点・今後の展望
通航正常化への課題
今回の商船三井のLNG船通過は、ホルムズ海峡の通航が完全に再開されたことを意味するものではありません。空荷での通過であった点や、通過の条件が明らかにされていない点を踏まえると、積荷を満載した状態での安定的な通航にはなお課題が残ると考えられます。
また、日欧など40カ国がホルムズ海峡の代替ルートを検討しているとの報道もあり、短期的な通航再開と中長期的なエネルギー輸送の安全確保は分けて議論する必要があります。
他の滞留船舶への波及効果
今回の通過が前例となり、残る44隻の日本関係船舶の通過が順次実現するかどうかが今後の焦点です。ただし、積荷の種類(原油、LNG、化学薬品など)や船籍国、保有者の国籍によってイラン側の対応が異なる可能性もあり、一律の解決は難しい状況です。
国際社会による外交的な働きかけと並行して、個別の通航実績が積み重なることで、海峡通過の安全性に対する信頼が回復していくことが期待されます。
まとめ
商船三井のLNG船「SOHAR LNG」がホルムズ海峡を通過したことは、2月末の封鎖開始以降、日本関係船舶として初の事例となりました。空荷での通過という限定的な形ではあるものの、同日にフランスやオマーンの関連船舶も通過しており、海峡の通航が部分的に緩和される兆しが見え始めています。
ただし、ペルシャ湾内にはなお44隻の日本関係船舶が滞留しており、エネルギー供給の正常化には時間を要する見通しです。今後の動向として、イランとの外交交渉の進展、残る滞留船舶の通過状況、そして代替輸送ルートの確立に向けた国際的な取り組みを注視していく必要があります。
参考資料:
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