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富士通はなぜメインフレーム依存を脱しUvanceへ舵を切ったのか

by 山本 涼太
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2030・2035年期限とUvanceシフト

富士通の時田隆仁社長による改革を理解するうえで、最大の論点は「何を捨て、何へ移るのか」です。外から見ると、富士通は依然として官公庁、金融、大企業向けの強い顧客基盤を持つ会社です。しかし、その強さは同時に、メインフレームやUNIX、受託開発、保守運用といった旧来型ビジネスへの依存も意味してきました。

2020年代半ばの富士通は、この構図を大きく変えようとしています。公開資料では、2030年に自社レガシー資産の販売終了、2035年に保守終了を見据えつつ、モダナイゼーション需要を取り込み、その先をUvanceとコンサルティングに接続する戦略が明確になっています。この記事では、その改革の中身を整理します。

メインフレーム依存が「強み」から「制約」に変わった理由

顧客基盤は厚いが、レガシー維持だけでは伸びない

富士通は長年、国内の基幹システム市場で強い存在感を持ってきました。ただし、IR Day 2025のモダナイゼーション資料では、自社レガシープラットフォームであるメインフレームとUNIXについて、2022年に終息方針を公表し、2030年に販売終了、2035年に保守終了と整理しています。つまり、会社自身が「このまま延命するモデルでは持続的に伸びない」と判断したわけです。

さらに重要なのは、顧客側の事情です。富士通資料では、2025年度末時点でなお約490社がメインフレーム、約260社がUNIXを運用すると見込んでいます。市場規模も、国内のレガシーモダナイゼーション市場がおよそ5000億円規模へ拡大すると見積もられています。裏を返せば、レガシーは依然として巨大市場ですが、収益源として守る対象というより、刷新需要として取り込む対象に変わったということです。

問題はハード販売ではなく、技術負債と人材不足

レガシー依存の怖さは、売上の構成だけではありません。COBOLなど旧来資産の保守人材が高齢化し、顧客企業でもベンダーでも次世代人材の確保が難しくなっています。富士通は2024年に「Fujitsu PROGRESSION」を日本市場へ投入し、COBOL資産をJavaやC#へ変換する自動化サービスを本格展開しました。公式発表では、北米で20年以上、50件超の実績を積んだ技術を日本向けに展開するとしています。

ここに時田改革の本質があります。メインフレーム依存から抜けるとは、単にハードをやめることではありません。顧客企業が抱える技術負債を、富士通自身がモダナイゼーション案件として引き受け、その過程でクラウド、データ活用、AI、業務変革へとつなぐことです。過去の資産を切り捨てるのではなく、次の売上に変換する発想です。

時田改革が向かう先は「サービス化」と「Uvance」

モダナイゼーションを入口に、サービス収益へ重心移動

2025年4月の中期経営計画進捗説明資料では、富士通のService Solutions売上高は2022年度の1兆9842億円から2024年度に2兆2459億円へ拡大し、調整後営業利益率も8.2%から12.9%へ上昇しました。2025年度予想は利益率15.5%です。会社全体の収益構造を、利益率の高いサービス中心へ移していることが分かります。

この変化を支える柱の一つがモダナイゼーションです。富士通の説明資料では、モダナイゼーション事業の売上は2023年度1600億円、2024年度2969億円、2025年度計画3300億円と急拡大しています。2024年度は前年比86%増という強い伸びでした。これはレガシーが沈む事業なのではなく、むしろ改革期には大きな需要源になることを示しています。

その先に置かれているのがUvance

ただ、時田改革はモダナイゼーションで終わりません。中計資料では、Service Solutions内のUvance売上は2024年度4828億円、2025年度予想7000億円で、前年比31%増を見込んでいます。2024年度のUvanceは縦方向の業種別成長が51%、横方向のオファリング成長が22%だったと説明されています。つまり、富士通は従来型の受託開発会社から、業種知識と先端技術を組み合わせて成果を売る会社へ移ろうとしているわけです。

この流れを加速させるため、富士通は2025年4月にコンサルティング専門組織を新設し、「Uvance Wayfinders」の体制を強化しました。金融向けには同年6月、勘定系や店舗システムを核にしつつ、データやAI活用まで含めた「Uvance for Finance」を体系化しています。ここから見えるのは、レガシーの保守会社ではなく、業界変革を設計する会社を目指す姿です。

モダナイゼーション大型案件と二重構造の難路

もっとも、この改革には難しさもあります。第一に、モダナイゼーションは大型案件化しやすく、品質、納期、採算の管理を誤ると一気に収益を損ねます。第二に、顧客は富士通にレガシーの延命も刷新も求めるため、短期的には旧事業を抱えながら新事業へ移る二重構造が続きます。第三に、Uvanceやコンサルへのシフトは、単なる名称変更ではなく、人材構成や営業手法、価格設定まで変える必要があります。

それでも、方向性はかなり明確です。富士通は2030年と2035年という期限を自ら設定し、レガシーの終わりを前提に収益モデルを作り直しています。モダナイゼーションを「撤退コスト」ではなく「次の成長の入口」として扱っている点が、時田改革の特徴です。

AI・クラウド時代の富士通再定義

「このままではダメになる」という危機感の中身は、メインフレームの売上が減ること自体ではありません。レガシーに最適化された企業のままでは、AI、クラウド、データ活用が主役になる次の市場で存在感を失うという危機感です。

富士通は、その答えとして、レガシー終息を宣言しつつ、モダナイゼーション、コンサルティング、Uvanceへと重心を移しています。改革が成功するかは、古い強みを失わずに、新しい稼ぎ方へ変えられるかにかかっています。少なくとも公開資料を見る限り、時田改革はすでに「縮小均衡」ではなく「事業の再定義」の段階に入っています。

参考資料:

山本 涼太

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