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ふるさと納税、10月から地場産品ルール厳格化でお得度さらに低下

by 田中 健司
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10月改正がふるさと納税の選び方を変える理由

ふるさと納税の返礼品選びが、2026年10月からもう一段変わります。焦点は、返礼品が本当に寄付先の地域に根差したものかを問う「地場産品基準」の明確化です。制度上の自己負担2,000円や控除の基本構造が変わるわけではありませんが、寄付者が感じる「お得度」は下がりやすくなります。

背景には、制度の巨大化があります。総務省の現況調査を基にした報道では、2025年度の寄付額は1兆3,314億2,800万円、寄付件数は5,963万件と過去最多でした。一方で、仲介サイト経由の寄付は全体の97.2%に達し、ポータルサイト手数料も1,490億円規模に膨らんでいます。制度は地域支援の仕組みであると同時に、巨大な販売・広告市場にもなりました。

今回の改正は、返礼品競争を抑え、寄付金を地域の事業により多く回すための再設計です。寄付者にとっては、人気返礼品の終了、容量の縮小、寄附額の引き上げが起きやすくなります。自治体にとっては、返礼品の根拠を説明し、外部委託やポータル手数料を管理する力が問われます。

地場産品基準の明確化が外す人気返礼品

付加価値の過半を証明する新手続き

2026年10月からの改正で最も大きいのは、区域内で製造・加工された返礼品について、「価値の過半」がその地域内の工程で生じていることを証明する運用が厳しくなる点です。単に工場が市内にある、梱包を市内で行った、企画だけを市内で行ったという説明では足りない場面が増えます。

総務省関係資料では、地場産品基準第3号に該当する返礼品について、製造事業者が価値の過半が区域内工程で生じていることを証明し、自治体が募集開始日までに証明内容をウェブサイトで公表する必要があると整理されています。ポータル掲載の前段階で、証明書類と公表の手間が加わるわけです。

この影響を受けやすいのは、地域外の原材料を使う加工食品、全国流通品に近い日用品、工程の一部だけが域内にある工芸品やスポーツ用品などです。すべてが消えるわけではありませんが、自治体や事業者が「どの工程で、どれだけの価値が地域内に生じたか」を説明できない品は、掲載継続が難しくなります。

ポータル各社も、9月30日までに受付終了となる品や、10月以降に寄附額・内容量が変わる品が出る可能性を案内しています。寄付者から見ると、同じ自治体、同じブランドの商品でも、10月以降は寄附額が上がる、容量が減る、別の商品に差し替わるといった変化が起こり得ます。

広報目的グッズに加わる実績要件

地場産品基準第5号に関わる自治体オリジナルグッズも、扱いが厳しくなります。自治体のキャラクターグッズや地域PR品は、形状や名称から地域独自と分かることに加え、自治体が広報目的で自ら調達・配布・販売した実績や計画が求められます。

さらに、返礼品として提供する数量は、過去の配布・販売実績数量を超えないことも要件になります。これは、ふるさと納税向けにだけ大量調達した「名ばかり広報品」を抑える狙いです。地域PRの実態がある品は残りやすい一方、返礼品市場向けに作っただけのグッズは見直し対象になります。

このルールは、寄付者にとって少し分かりにくい改正です。家計の目線では、欲しい返礼品があるかどうかが重要ですが、制度の目線では「自治体が地域振興のために普段から使っている品か」が問われます。返礼品の自由度は下がりますが、税財源を使う制度としての説明責任は高まります。

過去には、果物の産地表示を巡る不適正事案も起きています。農林水産省は2025年3月、ふるさと納税返礼品として販売されたシャインマスカットで、山形県産を長野県産と表示するなどの不適正表示を確認し、事業者に是正を指示しました。こうした事例は、自治体が事業者任せにできないことを示しています。

経費圧縮と価格公表が下げる還元感

寄附金活用可能額六割への段階移行

ふるさと納税では、返礼品の調達費を寄付額の3割以下に抑えるルールが知られています。ただし、今回の流れで重要なのは、返礼品3割ルールだけではありません。寄付金のうち、自治体が地域振興などに実際に使える割合を段階的に高める方向が示されています。

2026年10月から2027年9月までの指定対象期間では、寄附金活用可能額の基準は52.5%に読み替えられます。その後、2027年10月から55%、2028年10月から57.5%へ上がり、最終的には60%が基準になります。裏返せば、返礼品、送料、広告、決済、委託、ポータル手数料などに使える余地は狭まります。

これまで寄付者の満足度は、返礼品の量や質、ポイント還元、ポータルの使いやすさで語られがちでした。しかし自治体財政の観点では、寄付金の半分近くが募集経費に消える状態は持続的とは言いにくいものです。制度の本来目的である地域事業への活用額を増やすには、どこかで費用を削る必要があります。

費用削減は、寄付者には「お得度低下」として見えます。配送費や原材料費が高止まりするなかで、自治体が同じ返礼品を同じ寄附額で維持する余地は小さくなります。調達価格を下げにくい品では、寄附額の引き上げや内容量の調整が現実的な選択肢になります。

ポータル手数料開示が迫る価格調整

募集費用の透明化も、自治体経営にとって大きな転換点です。2026年10月改正では、1支払先あたり年間100万円以上の募集費用について、支払先、支払額、支払目的を自治体サイトで公表する運用が求められます。令和7年度分の募集費用は、2026年9月30日までに公表が必要です。

この公表は、単なる事務作業ではありません。住民や議会は、どのポータル、委託事業者、広告会社にいくら支払っているかを見られるようになります。ふるさと納税の受入額が大きい自治体ほど、手数料や委託費の妥当性を説明する圧力が強まります。

2025年度のデータでは、ポータルサイト事業者への手数料が寄付額の11.5%に当たると報じられています。返礼品費が26.5%、事務費などが13.6%という数字もあり、寄付額の使われ方は地域事業だけでは説明できなくなっています。総務省がポータル事業者に手数料引き下げを要請したのも、この費用構造が背景です。

2025年10月には、仲介サイトによる寄付者向けポイント付与が原則禁止されました。楽天ふるさと納税のFAQでも、2025年10月1日以降は楽天ポイント付与の対象外と説明されています。カード決済に伴うポイントは残るものの、ポータル独自ポイントを上乗せする時代は終わりました。今回の10月改正は、その次に返礼品そのものと自治体経費に踏み込むものです。

寄付者と自治体に残る三つの摩擦

第1の摩擦は、寄付者の駆け込みです。ポータル各社は、9月末のアクセス集中や一部返礼品の受付終了を注意喚起しています。欲しい品が明確で、現行条件で受け取りたい場合は、9月30日までに確認する合理性があります。ただし、控除上限を超えれば自己負担は増えます。制度変更への不安だけで寄付額を積み増すのは避けるべきです。

第2の摩擦は、自治体間の格差です。証明書類、公表資料、事業者監査、ポータル交渉をこなせる自治体は、返礼品の入れ替えを進めながら寄付を維持できます。一方、人員が限られる小規模自治体では、確認事務の負担が重くなります。返礼品事業者が少ない地域ほど、1品の掲載終了が寄付額に与える影響も大きくなります。

第3の摩擦は、地域経済との関係です。加工品や日用品の中には、原材料は地域外でも、地域内の工場や物流、雇用を支えてきた品があります。地場産品基準を厳しくすれば、制度の透明性は高まりますが、これまで返礼品発注に支えられてきた事業者の売上が落ちる可能性もあります。

それでも、制度の信頼回復は避けて通れません。須坂市の事案のように、産地確認や事業者管理の不備が表面化すれば、自治体ブランド全体が傷つきます。ふるさと納税は寄付であると同時に、地域名を背負った取引です。自治体は、寄付額を追う営業部門だけでなく、財政、法務、農政、商工を含めた管理体制を持つ必要があります。

家計と地域財政を両にらみする寄付判断

10月改正後のふるさと納税は、「高還元品を探す制度」から「納得できる地域に寄付する制度」へ少しずつ戻されます。寄付者は、返礼品の寄附額、内容量、発送時期だけでなく、なぜその自治体の地場産品といえるのかも見ると判断しやすくなります。自治体サイトで証明事項や募集費用の公表を確認する習慣も役立ちます。

9月末までに確認すべきなのは、毎年リピートしている加工品、工芸品、日用品、定期便です。10月以降も残る品はありますが、同じ条件とは限りません。控除上限額、家計の支出予定、配送時期を確認したうえで、必要な分だけ前倒しするのが現実的です。

自治体側には、返礼品の数を競うより、地域内で生じる価値を説明する力が求められます。寄付金の使途を明確にし、ポータルや委託事業者に支払う費用を抑えられる自治体ほど、制度変更後も支持を得やすくなります。お得度の低下は避けにくいものの、地域に残るお金の比率が高まれば、制度の意味はむしろ分かりやすくなります。

参考資料:

田中 健司

製造業・建設・インフラ

製造業・建設・インフラ産業を中心に取材。大企業の事業再編から建設現場の人手不足問題まで、日本の産業基盤の変化を追い続ける。

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