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JR東日本「大井町トラックス」開業の全貌と品川圏戦略

by 田中 健司
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大井町トラックス開業と広域品川圏始動

2026年3月28日、JR東日本が手がける大規模複合施設「OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)」が東京・品川区の大井町駅前にグランドオープンしました。オフィス、ホテル、商業施設、高級賃貸住宅を備えた2棟の高層ビルを中心に、81店舗が集結する商業ゾーンには開業前から長蛇の列ができるなど、初日から大きな賑わいを見せています。

同日には高輪ゲートウェイシティも全面開業しており、JR東日本が推進する「広域品川圏」構想が本格始動した形です。本記事では、大井町トラックスの施設概要から注目テナント、さらにJR東日本の品川圏戦略まで、開業の全貌を解説します。

大井町トラックスの施設概要

2棟の高層ビルで構成される大規模複合施設

大井町トラックスは、JR東日本の広町社宅跡地など約29,400平方メートルの敷地を活用した再開発プロジェクトです。総延床面積は約26万平方メートルに及びます。施設は大きく2棟のタワーで構成されています。

1棟目の「OIMACHI TRACKS BUSINESS TOWER(ビジネスタワー)」はオフィスを中心とした高層ビルで、低層階には商業施設や映画館が入居しています。2棟目の「HOTEL & RESIDENCE TOWER(ホテル&レジデンスタワー)」は地上26階建てで、5〜13階にホテル客室285室を備える「ホテルメトロポリタン大井町トラックス東京」、14〜25階に高級賃貸住宅「OIMACHI TRACKS RESIDENCE」、26階にルーフトップバーを配置した構成です。

駅直結のアクセスと3つの広場

大井町駅には新たな改札口「トラックス口」が設けられ、歩行者デッキで施設と直結しています。このデッキからはJR東日本の東京総合車両センター(山手線の車両基地)を一望でき、鉄道ファンにとっても魅力的なビューポイントとなっています。

施設内には3つの広場が整備されました。2棟の西側に位置する約4,600平方メートルの「TRACKS PARK」は広域避難場所としても機能します。中心街区の「CROSS PLAZA」と駅前の「STATION PLAZA」を合わせ、開放的な都市空間を創出しています。

注目テナントと商業ゾーンの特徴

アウトモール型の新しい商業体験

商業ゾーン「OIMACHI TRACKS SHOPS & RESTAURANTS」は、アトレが手がける全81店舗で構成されています。歩行者デッキや広場に面したアウトモール型の商業施設で、1〜5階にわたって飲食店や物販店が展開されています。年間の来場者数は約1,100万人を見込んでいます。

開業初日は週末と重なったこともあり、飲食店を中心に長蛇の列ができました。新業態のグルメや限定メニューを求める来場者で、施設全体が大きな賑わいを見せていました。

TOHOシネマズ大井町 ― 都内初のドルビーシネマ搭載

ビジネスタワー3階に入居する「TOHOシネマズ大井町」は、全8スクリーンを備えた大型シネコンです。都内のTOHOシネマズとしては初となる「ドルビーシネマ」を導入しているほか、独自ブランドの「プレミアムシアター」や「轟音シアター」など、特殊シアター3室を含む充実のラインナップとなっています。大井町駅直結という利便性の高さも大きな魅力です。

サウナメッツァ大井町トラックス ― トレインビューサウナ

ホテル&レジデンスタワーの4階には、「サウナメッツァ大井町トラックス」が入居しています。サウナシュラン2022で全国1位に輝いた「スパメッツァ」を手がけるオークランド観光開発の新業態で、サウナクリエイティブ集団「TTNE」がプロデュースしています。

最大の特徴は、東京総合車両センターを眺めながらサウナを楽しめる「トレインビュー」の体験です。男性向けの電車モチーフの「トラムサウナ」は日本初の試みで、女性向けには天井から蒸気が降り注ぐ「薬草サウナ」が用意されています。鉄道とサウナという異色の組み合わせが注目を集めています。

広域品川圏戦略と高輪ゲートウェイシティとの同時開業

JR東日本が描く「広域品川圏」構想

JR東日本は、浜松町駅から田町駅、高輪ゲートウェイ駅、品川駅、大井町駅までの一帯を「広域品川圏」と定義し、「都市生活のイノベーションが生まれる先進エリア」として開発を進めています。同エリアにおけるJR東日本の保有ビルの総延床面積は約150万平方メートル(東京ドーム約31個分)に相当するとされています。

大井町トラックスの開業と同日の3月28日には、高輪ゲートウェイ駅周辺の大規模複合施設「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」も全面開業を迎えました。高輪ゲートウェイシティは2025年3月に一部施設が先行開業しており、今回すべての建物が完成して本格稼働となりました。開業当日には約5万人が来場したとされています。

年間1,000億円の収益目標

JR東日本は広域品川圏の開発を通じて、2034年頃までにオフィス・商業施設・住宅の賃貸収入を中心に年間約1,000億円の収益を目指すとしています。鉄道事業に依存しない収益基盤の多角化を図る狙いがあり、不動産・まちづくり事業を成長ドライバーとして位置づけています。

今回の2施設同時開業は、その戦略の大きな節目といえます。品川駅周辺ではリニア中央新幹線の開業も見据えた再開発が進んでおり、JR東日本と京急による品川駅直結のビル3棟の整備計画も公表されています。

混雑対策と1,500機ドローンショー後の定着課題

大井町トラックスの開業により、大井町エリアの回遊性は大幅に改善されました。しかし、開業直後は周辺道路の混雑や施設内の混み合いが予想されるため、来場の際は公共交通機関の利用が推奨されています。

今後は、開業記念イベントとして1,500機のドローンを使用したドローンショーも開催されるなど、話題性のある集客施策が展開されています。長期的には、品川駅周辺のさらなる再開発やリニア中央新幹線の開業と相まって、広域品川圏全体の発展が期待されます。大井町トラックスがこのエリアの新たなランドマークとして定着するかどうかは、テナントの集客力と周辺との回遊性がカギとなるでしょう。

大井町トラックスが担う年1,000億円戦略の拠点

JR東日本の大井町トラックスは、オフィス・ホテル・商業施設・高級賃貸住宅が一体となった大規模複合施設として開業しました。都内初のドルビーシネマを備えたTOHOシネマズや、トレインビューが楽しめるサウナメッツァなど、個性的なテナントが揃っています。

高輪ゲートウェイシティとの同時開業により、JR東日本の広域品川圏構想が本格始動しました。年間1,000億円の収益を目指す同社の不動産戦略において、大井町トラックスは重要な拠点となります。大井町駅直結のアクセスと充実した施設構成は、周辺エリアの魅力を大きく高めるものといえるでしょう。

参考資料:

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田中 健司

製造業・建設・インフラ

製造業・建設・インフラ産業を中心に取材。大企業の事業再編から建設現場の人手不足問題まで、日本の産業基盤の変化を追い続ける。

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