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米軍カーグ島地上作戦案の全貌と中東情勢への影響

by 中村 壮志
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カーグ島地上占拠案とトリポリ派遣

2026年3月、米国とイランの軍事衝突が新たな局面を迎えています。トランプ政権がイラン原油輸出の約9割を担うペルシャ湾のカーグ島を地上部隊で占拠する案を検討しているとの見方が浮上しました。3月13日の大規模空爆に続き、佐世保基地配備の強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ向かっていることが確認され、地上作戦の現実味が増しています。

この記事では、カーグ島がイランにとってなぜ「心臓」と呼ばれるのか、地上作戦の具体的な内容とリスク、そして世界のエネルギー市場への影響について解説します。

カーグ島とは何か——イラン経済の「生命線」

世界有数の原油積み出し拠点

カーグ島(ハールク島)はペルシャ湾に浮かぶ小島で、イラン本土から約25キロ沖に位置しています。面積は約25平方キロメートルと小さいものの、イランの原油輸出の約90%がこの島を経由しています。島のターミナルは日量約150万バレルの原油を扱っており、その規模は多くのOPEC加盟国の産油量を上回ります。

かつては真珠貿易の中継地でしたが、現在は本土の油田とパイプラインで結ばれ、大型タンカーが停泊できる数少ない港湾施設を備えています。イランの石油収入は国家歳入の大きな割合を占めるだけでなく、革命防衛隊の軍事活動を支える資金源にもなっています。

3月13日の大規模空爆

米中央軍は3月13日、カーグ島に対して大規模な精密攻撃を実施しました。機雷やミサイルの貯蔵施設など軍事目標90カ所以上が破壊されたとトランプ大統領が発表しています。この時点では石油インフラへの直接的な攻撃は避けられましたが、トランプ大統領は「次は石油インフラが標的」と警告しました。

イラン側は米関連施設への報復を再強調しており、軍事的緊張が一段と高まっています。

地上部隊投入案の具体像

揚陸艦トリポリの中東派遣

長崎県佐世保基地に配備されている強襲揚陸艦「トリポリ」(LHA-7)が3月17日、シンガポール海峡を通過したことが確認されました。全長約260メートル、排水量4万5000トンのトリポリは事実上の小型空母として機能し、F-35Bステルス戦闘機やMV-22オスプレイを搭載しています。

同艦には沖縄を拠点とする第31海兵遠征部隊(MEU)約2200〜2500名が乗艦しており、1〜2週間でペルシャ湾周辺海域に到着する見通しです。米中央軍がこの戦力の派遣を要請した背景には、対イラン軍事作戦の選択肢を広げる狙いがあります。

島嶼占拠作戦の想定シナリオ

英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員によると、カーグ島を占領すればイランの石油という「生命線」を断つことになり、米国は将来の交渉で大きな影響力を得られるとされています。トランプ政権は開戦前からカーグ島の占拠を含む地上作戦を検討してきたとの報道もあります。

想定されるシナリオでは、まず空爆でイランの防空網と軍事施設を無力化し、その後揚陸艦から海兵隊が上陸して石油施設を確保するという流れです。

地上作戦のリスクと課題

軍事的リスク——「自殺行為」との指摘

元米陸軍情報分析官は、カーグ島への地上部隊投入を「自殺行為に近い」と警告しています。島はイラン本土からわずか25キロの距離にあり、上陸した米軍部隊はドローン、ミサイル、砲兵ロケット、短距離無人機の射程圏内に入ります。

さらに、現在派遣されている地上部隊は約1200〜2500名であり、たとえ小島の制圧であっても兵力が不足する可能性があります。イランの革命防衛隊は高度な対艦ミサイルや機雷戦能力を保有しており、ペルシャ湾という狭い海域での作戦は極めて危険です。

泥沼化の懸念

戦略国際問題研究所(CSIS)は「作戦は長期にわたるイランとの紛争の始まりである可能性が高く、管理が困難な拡散した紛争へと変貌するおそれがある」と指摘しています。カーグ島を占拠しても、イランが徹底抗戦の姿勢を崩さなければ、米軍は長期にわたる防衛態勢を維持する必要があります。

ホワイトハウスのリーヴィット報道官は「地上作戦は現時点では計画に含まれていない」と述べつつも、トランプ大統領はあらゆる選択肢を排除していないとしています。

原油市場への衝撃

JPモルガンは、カーグ島が制圧された場合、石油ショックがさらに悪化すると警告しています。日量150万バレルの輸出が停止すれば、世界の原油供給に直接的な影響を及ぼします。すでにイラン情勢の緊迫化を受けて原油価格は上昇基調にあり、地上作戦が実行された場合にはさらなる高騰が避けられません。

ホルムズ封鎖リスクと中間選挙の重圧

地上作戦をめぐる議論では、いくつかの点に注意が必要です。まず、空爆と地上占拠では軍事的・政治的な意味合いが大きく異なります。空爆は一時的な打撃ですが、占拠は長期的なコミットメントを意味し、撤退の判断も複雑になります。

また、イランはホルムズ海峡の封鎖を報復手段として示唆しており、世界の原油輸送の約20%が通過するこの海峡が封鎖されれば、日本を含む各国のエネルギー安全保障に深刻な影響が及びます。

トランプ大統領の支持率は就任時の52%から2026年1月には42%まで低下しており、軍事行動の長期化は政権の国内基盤をさらに弱体化させる可能性があります。2026年11月の中間選挙を控え、出口戦略の有無が政治的にも重要な焦点です。

原油輸出9割の島が握る中東情勢の分岐点

カーグ島をめぐる地上作戦の検討は、米イラン対立が新たな段階に入ったことを示しています。原油輸出の9割を担うこの島の占拠は、イラン経済への決定的な打撃となりうる一方、米軍の人的被害や紛争の長期化、エネルギー市場の混乱といった深刻なリスクを伴います。

揚陸艦トリポリと海兵隊の中東到着が近づく中、トランプ政権が最終的にどの選択肢を取るかが、中東情勢と世界経済の行方を左右する重大な分岐点となります。今後の動向を注視する必要があります。

参考資料:

中村 壮志

国際情勢・地政学・安全保障

中東・米中関係を中心に国際情勢を取材。地政学リスクが日本経済に与える影響を、現地の視点から分析する。

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