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米国「次はキューバ」イラン後の体制転換戦略

by 中村 壮志
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イラン攻撃後に浮上する次のキューバ

2026年2月28日、米国とイスラエルはイランへの大規模軍事攻撃を開始しました。作戦開始からわずか数日でハメネイ最高指導者が殺害され、米国の圧倒的な軍事力が改めて世界に示されました。攻撃開始から約2週間が経過した現在、戦況は米国優位で推移していますが、長期化への懸念も高まっています。

こうした中、トランプ政権に近い知日派の外交専門家として知られる米ハドソン研究所日本部長のケネス・ワインスタイン氏が「次はキューバだ」と発言したことが注目を集めています。この発言は、イラン後の米国の対外戦略をどう読み解くべきかを考える上で重要な手がかりとなります。

本記事では、イラン攻撃の現状と、米国がキューバに対して進める体制転換戦略の全体像を解説します。

イラン攻撃の経緯と現在の戦況

「エピック・フューリー作戦」の展開

米国とイスラエルは2月28日、イランに対して「エピック・フューリー作戦」(壮絶な怒り)と名付けた大規模軍事作戦を開始しました。作戦の目的は、イランの核の脅威の排除、弾道ミサイル兵器庫の破壊、テロ組織ネットワークの弱体化、海軍戦力の壊滅、そして政権の打倒です。

3月1日早朝にはイラン最高指導者のハメネイ師が殺害されたことが確認されました。CNNの報道によると、CIAとイスラエルの情報機関は数カ月にわたりハメネイ師の行動パターンを監視し、居場所を特定していたとされています。

長期化の懸念と非対称戦

軍事的には米イスラエル側が圧倒的優位に立っていますが、イラン側は「指揮分散」や「非対称戦」を駆使して抵抗を続けています。ブルームバーグの報道によれば、攻撃開始から5日間でイラン国内の死者は1,000人を超えましたが、戦闘に収束の兆しは見られません。

3月8日にはハメネイ師の次男モジタバ・ハーメネイーが後継の最高指導者に選出され、イラン側の指導体制は形式的には再構築されています。長期化に備えてきたイランの継戦能力が容易には衰えないとの見方もあり、トランプ政権にとっても想定以上のコストがかかるリスクが指摘されています。

ワインスタイン氏が語る「次はキューバ」の真意

ハドソン研究所と知日派ネットワーク

ケネス・ワインスタイン氏は、米国の保守系シンクタンクであるハドソン研究所の日本部長を務める人物です。2011年から2020年まで同研究所の所長兼CEOを務め、2020年にはトランプ大統領(第1期)から駐日米国大使候補に指名された経歴を持ちます。故安倍晋三元首相とともにインド太平洋フォーラムを共同設立するなど、日米関係の要衝に位置する知日派です。

同氏がイラン攻撃について「体制の無力化を狙っているだろう」と分析したことは、トランプ政権の戦略的意図を端的に表しています。単なる軍事施設への打撃ではなく、体制そのものの転換を視野に入れた作戦であるという見立てです。

「体制転換」という共通戦略

ワインスタイン氏が「この作戦がうまくいけば次はキューバだ」と語った背景には、トランプ政権が掲げる「反米的な権威主義体制への圧力」という外交ドクトリンがあります。イランとキューバは、いずれも米国が長年にわたり制裁を科してきた国です。

トランプ大統領自身も3月15日、「キューバとは協議しているが、キューバの前にイランだ」と述べ、イラン問題の決着後にキューバへの対応を本格化させる方針を示唆しました。この発言はワインスタイン氏の分析と軌を一にしています。

追い詰められるキューバの現実

石油禁輸と経済危機

トランプ政権はすでにキューバに対して強力な経済的圧力をかけています。2026年1月29日、トランプ大統領はキューバに原油を供給する国からの輸入品に追加関税を課す大統領令に署名しました。この措置により、最大の供給国であったメキシコがキューバへの原油出荷を全面停止しました。

ブルームバーグの報道によれば、キューバは2026年1月に月間ベースで約10年ぶりに石油輸入がゼロとなりました。島国キューバにとって、エネルギーの枯渇は国家存続に関わる危機です。電力供給の不安定化、交通機関の麻痺、医療機関の機能低下など、市民生活への影響は深刻化しています。

揺れるキューバ政権の対応

追い詰められたキューバのディアスカネル大統領は、2026年3月に入り米国の代表との協議を行ったことを認めました。受刑者の釈放にも応じるなど、従来の強硬姿勢からの軟化が見られます。

一方で、キューバ政府は一貫して「米国の振る舞いは犯罪者のようだ」と批判しており、全面的な妥協には至っていません。CNNの報道では、キューバ側は米国の合意要求を公式には拒否する姿勢を示していますが、水面下での交渉は継続しているとされています。

キューバ圧力が招く中露競争と日本の課題

体制転換戦略のリスク

イランでの軍事作戦が順調に進んだとしても、キューバに同様のアプローチを適用できるとは限りません。キューバには大量破壊兵器の脅威がなく、軍事介入の正当性を国際社会に説明することは難しいでしょう。経済的圧力による「静かな体制転換」が主要な手段となる可能性が高いですが、それが市民への人道的影響を伴う点は国際的な批判の対象となり得ます。

中国・ロシアの動向

イラン攻撃後の中東秩序の再編は、中国やロシアにとっても大きな関心事です。日本国際問題研究所の分析では、米国のイラン攻撃が北京とモスクワの戦略的計算に影響を与える可能性が指摘されています。キューバは中国やロシアとも関係が深く、米国の圧力強化は大国間競争の新たな火種となる可能性があります。

日本への影響

知日派のワインスタイン氏がこうした見解を示すことは、日本にとっても重要な示唆を含んでいます。米国の対外戦略が体制転換を軸に展開される中、日本は同盟国としてどこまで関与するのか、独自の外交判断を問われる場面が増えることが予想されます。

イランからキューバへ広がる体制転換戦略

トランプ政権のイラン攻撃は、単なる軍事作戦にとどまらず、反米的な権威主義体制の転換を目指す包括的な外交戦略の一環です。ハドソン研究所のワインスタイン氏による「次はキューバ」という発言は、この戦略の方向性を明確に示しています。

すでに石油禁輸によって深刻な経済危機に追い込まれているキューバの動向は、今後の国際情勢を読む上で重要な焦点となります。イランでの作戦の帰趨、キューバの政権対応、そして中国・ロシアの出方を注視する必要があります。

参考資料:

中村 壮志

国際情勢・地政学・安全保障

中東・米中関係を中心に国際情勢を取材。地政学リスクが日本経済に与える影響を、現地の視点から分析する。

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