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ホルムズ海峡封鎖で原油タンカーが滞留、海上倉庫化の実態

by 中村 壮志
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2月28日攻撃後のホルムズ封鎖危機

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を実施して以降、世界のエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥っています。攻撃から約2週間が経過した現在、ペルシャ湾は原油を積んだまま海峡を通過できないタンカーが数百隻規模で滞留する「海上倉庫」と化しています。

世界の海上石油輸送量の25%以上、石油消費量の約20%がこの海峡を通過しています。この封鎖は日本を含む世界経済に深刻な影響を及ぼしており、原油価格の高騰やガソリン価格の上昇が現実のものとなっています。本記事では、最新のデータをもとにホルムズ海峡の現状と日本経済への影響を整理します。

ホルムズ海峡封鎖の経緯と現状

軍事攻撃から事実上の封鎖へ

2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃を受け、イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡を通過する船舶への攻撃を警告しました。IRGCはVHF無線を通じて航行中の船舶に対し「いかなる船舶の通過も許可しない」と通告しています。

これを受けて日本郵船や川崎汽船を含む世界中の海運各社が相次いで通峡を停止しました。3月1日から2日にかけて海峡は事実上の封鎖状態に入り、タンカーの通過量は90%以上の激減を記録しています。東洋経済オンラインの報道によれば、1日あたり120隻が通過していた海峡を通る船舶数はわずか5隻まで落ち込みました。

タンカー滞留の実態

封鎖が続く中、ペルシャ湾内のタンカー滞留は深刻化しています。3月6日時点で400隻以上のタンカーがペルシャ湾内で身動きが取れない状態に置かれていると報じられています。3月12日には、85隻の大型タンカーが少なくとも210億リットルの原油を積んだまま湾内に閉じ込められている状況です。

また、海峡の外側でも150隻を超えるタンカーが錨を下ろして待機しています。日本関係の船舶も44隻がペルシャ湾内に残されており、その約3分の2が原油タンカーやLNG運搬船です。

イラン側の動き

注目すべきは、イラン自身はこの混乱の中でも原油輸出を続けている点です。3月15日にはイランのスーパータンカーが海峡を押し通って中国向けに原油を輸送したと報じられています。一方で、他国のタンカーに対してはIRGCが攻撃を警告しており、3月11日にはCNNが海峡付近での機雷敷設の可能性を報じました。3月12日にはペルシャ湾内でさらに3隻の船舶が攻撃を受けています。

こうした状況は、イランがホルムズ海峡における事実上の支配力を強めていることを示しています。

日本経済への影響

原油価格とガソリン価格の高騰

日本は原油輸入の9割超を中東地域に依存しており、ホルムズ海峡は文字通りエネルギーの「生命線」です。封鎖の影響で原油価格は急騰し、Bloombergの報道によれば1バレル100ドルの視野に入っています。

ニッセイ基礎研究所の試算では、ドバイ原油が110ドルまで上昇した場合、日本のガソリン価格は1リットルあたり204円前後まで急上昇する計算です。現在のレギュラーガソリン平均価格は政府補助金込みで約161〜165円ですが、補助金がなければ185〜200円水準に達すると推計されています。

家計とGDPへの打撃

時事通信によると、ガソリン価格だけでなく電気・ガス料金の高騰も避けられない状況です。封鎖が長期化すれば家計に深刻な打撃を与え、国内総生産(GDP)を大きく押し下げる可能性が指摘されています。

Business Insider Japanの分析では、最悪のシナリオとして1ドル200円を目指す「超円安」の可能性にも言及されています。エネルギーコストの上昇は物流費にも波及し、食品をはじめとする生活必需品の値上げにつながる恐れがあります。

政府の対応策

事態を受けて日本政府も動き始めています。経済産業省は3月13日、以下の対応策を発表しました。

  • 3月16日以降に民間備蓄15日分を放出
  • 3月下旬から当面1カ月分の国家備蓄を放出
  • 3月19日からガソリン補助を開始し、全国平均170円程度に抑制

ただし、備蓄放出はあくまで時間稼ぎの措置であり、封鎖が長期化すれば供給不足の根本的な解決にはなりません。

米軍護衛困難と封鎖長期化リスク

米軍による護衛は困難

Fortune誌は3月13日、ホルムズ海峡がイランの「キルボックス(殺傷地帯)」と化しており、米海軍がタンカーを安全に護衛することが現時点では困難であると報じています。CNBCによれば、トランプ大統領は米海軍による護衛計画を指示していますが、軍当局者は「まだ準備ができていない」と認めています。

代替ルートの模索

サウジアラムコは紅海沿岸からの原油輸出を模索していると報じられています。しかし、紅海ルートもフーシ派による攻撃リスクがあり、完全な代替とはなりません。

長期化のリスク

イランの新最高指導者がホルムズ海峡の封鎖継続を宣言しており、事態の早期収束は見通せない状況です。封鎖が2〜3カ月以上続けば、原油価格が1バレル100ドルを大きく超える可能性があり、世界経済への影響はさらに深刻化します。

海上倉庫化が示す日本の中東依存

ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、ペルシャ湾は原油タンカーが身動きの取れない「海上倉庫」と化しています。日本にとっては中東依存度の高いエネルギー供給構造の脆弱性が改めて浮き彫りとなりました。

政府の備蓄放出やガソリン補助は短期的な緩和策にはなりますが、中長期的にはエネルギー調達先の多角化や再生可能エネルギーの推進がより重要になります。今後の原油価格や為替の動向、そして中東情勢の推移を注視する必要があります。

参考資料:

中村 壮志

国際情勢・地政学・安全保障

中東・米中関係を中心に国際情勢を取材。地政学リスクが日本経済に与える影響を、現地の視点から分析する。

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