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日経平均急落と原油高、ホルムズ危機が映す日本株の弱点とは

by 中村 壮志
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3月の日経平均7786円急落の背景

2026年3月の日本株は、単なる調整局面では片づけにくい下げ方になりました。日経平均株価は日経指数の月次データによると、2月末の5万8850.27円から3月末には5万1063.72円まで低下し、1カ月で7786.55円下落しました。下落率でも約13.2%に達しており、相場の重心が一段と下へ移ったことが分かります。

背景にあるのは、企業業績そのものの急変だけではありません。中東情勢の悪化によってホルムズ海峡の機能不全が意識され、原油価格が急騰し、世界景気とインフレの両方に不安が広がったことが大きいです。株式市場にとっては、コスト増と金利高止まりの懸念が同時に押し寄せた格好でした。

本記事では、3月の急落を数字で確認しながら、なぜ原油高が日本株全体に強い売り圧力をもたらしたのか、そして4月相場で何を見極めるべきかを整理します。

月間急落の構図

指数の幅と率が示すショックの大きさ

日経指数の月次データでは、2026年2月の終値は5万8850.27円、3月の終値は5万1063.72円です。差し引き7786.55円の下落で、指数水準が高い現在の相場では、歴史的にも非常に大きい月間下落幅です。一方で率に直すと約13.2%で、ロイターが3月31日に伝えた市場報道でも、月間の下落率は2010年5月以来の大きさと受け止められていました。

この「幅」と「率」の見え方の違いは重要です。現在の日経平均は5万台にあり、同じ10%前後の下げでも失うポイント数は過去より大きくなります。今回の急落は、指数の絶対水準が高い局面で、地政学リスクが一気に価格へ織り込まれたことを示しています。

日々の値動きを見ても、3月は序盤から荒い展開でした。日経指数の日次データでは、3月3日に5万6279.05円、4日に5万4245.54円、9日には5万2728.72円まで水準を切り下げています。3月末にかけては再び売りが強まり、30日は5万1885.85円、31日は5万1063.72円で月を終えました。月を通じて下げ止まりの材料が乏しく、戻り売りが優勢だったことが分かります。

ホルムズ海峡リスクと原油ショックの連鎖

相場の震源地は、中東の戦闘拡大とホルムズ海峡の混乱でした。IEAは2025年平均でホルムズ海峡を通過する原油・石油製品が日量2000万バレル、世界の海上石油取引の約4分の1を占めると整理しています。EIAも2024年の同海峡通過量を日量2000万バレル、世界の石油液体消費の約2割相当としています。つまり、ここが詰まると、単なる地域紛争ではなく世界インフレの問題に直結します。

ロイター配信の記事では、3月13日時点でもホルムズ海峡の閉鎖継続が意識され、ブレント原油は103.14ドル、WTIは98.71ドルで引けました。さらに3月30日のロイター記事では、原油は月間で過去最大級の上昇率に向かっていると報じられました。日本株が下げたのは、原油高そのものよりも、「供給制約が長引けば各国中銀は利下げしにくくなる」という連想が広がったためです。

日本市場では、この連想がとくに効きやすいです。日本はエネルギーの海外依存度が高く、中東からの供給不安が輸入物価、企業収益、家計負担に波及しやすい構造だからです。JOGMECの資料が示すように、日本は国家備蓄と民間備蓄を持っていますが、備蓄は需給途絶への緩衝材であって、価格上昇そのものを打ち消す仕組みではありません。

日本株が売られた理由

原油高が半導体株だけでは済まない理由

3月の下落では半導体関連株の弱さが目立ちましたが、問題はハイテクだけではありません。エネルギー価格が上がると、素材、機械、輸送、消費関連まで広くコスト増圧力が及びます。さらに、原油高が長引けば設備投資の先送りや個人消費の鈍化も起きやすくなり、景気敏感株全体のバリュエーションを押し下げます。

ロイターの3月31日時点の記事でも、東京市場では米ハイテク株安の影響が重なり、半導体関連が相場の下押し役になったとされました。ただし、より本質的なのは、日経平均が幅広い景気敏感株と値がさ株で構成されている点です。原油高と金利不安が同時に走る局面では、利益成長期待の高い銘柄ほど割高感が意識されやすく、指数全体が押し下げられやすくなります。

また、今回の下落は需給面でも説明できます。日経平均採用銘柄の売買代金シェアは3月末まで高水準で推移しており、不安局面で指数先物や大型株から先に換金売りが出た可能性が高いです。大型株中心の売りは、指数の見かけ以上に投資家心理を冷やします。個別の業績材料がなくても、まず流動性の高い銘柄が売られるからです。

4月相場で問われる三つの確認点

4月に相場が安定するかどうかは、第一にホルムズ海峡の機能回復が見えるかにかかっています。IEAが示す通り、代替輸送ルートには限界があり、封鎖や通航制限が続けば世界の石油市場は引き続き不安定です。海峡問題が政治発言で一時的に緩和したように見えても、実際の船舶通航や積み出し回復が伴わなければ、市場はすぐに再警戒へ戻ります。

第二に、原油価格が100ドル前後で高止まりするのか、それとも下げに向かうのかが重要です。原油が下がれば、企業収益とインフレ見通しの両面で安心感が出ます。逆に高止まりすれば、米国でも日本でも金融政策の正常化や利下げ後ずれ観測が残り、株式の戻りは限定的になりやすいです。

第三に、日本株の反発が景気期待主導なのか、単なる自律反発なのかを見分ける必要があります。3月のような急落後は短期の買い戻しが入りやすいですが、原油、海運、為替、長期金利が改善しないままの上昇は持続性に欠けます。指数が戻っても、景気敏感株や内需株まで広く戻るかを確認しないと、本格反転とは言いにくいです。

原油・物流正常化まで残る割安判断リスク

今回の相場で注意したいのは、「中東情勢が落ち着けばすぐ元通り」という見方です。エネルギー市場は物理的な供給回復より早く期待で動きますが、株式市場はその後に企業業績の再評価を迫られます。3月に積み上がったコスト増や景気減速懸念は、停戦観測だけでは消えません。

もう一つの注意点は、下落幅の大きさだけで割安と判断しないことです。今回は需給ショックに加え、インフレと成長鈍化が同時進行する可能性が意識されました。この組み合わせでは、PERの切り上がり余地が限られやすいです。相場反転の条件は「不安がやや後退」ではなく、「原油と物流の正常化が数字で確認されること」に近いです。

ホルムズ通航回復と4月反転条件

2026年3月の日経平均急落は、単なる利益確定売りではなく、ホルムズ海峡リスクを起点とするエネルギーショックが日本株の弱点を突いた結果でした。日経平均は2月末から3月末にかけて7786.55円、約13.2%下落しました。原油高は輸入コストを通じて日本経済に重くのしかかり、同時に世界の金融政策見通しまで揺らします。

4月相場の焦点は明確です。ホルムズ海峡の実際の通航回復、原油価格の落ち着き、そして日本株の反発が幅広い銘柄に広がるかどうかです。指数の値動きだけではなく、エネルギーと物流の正常化が確認できるかを基準に見ると、今回の下落の本質が見えやすくなります。

参考資料:

中村 壮志

国際情勢・地政学・安全保障

中東・米中関係を中心に国際情勢を取材。地政学リスクが日本経済に与える影響を、現地の視点から分析する。

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