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日本株3月の下落幅が過去最大を記録した背景と今後

by 鈴木 麻衣子
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日経平均7786円急落とホルムズ危機

2026年3月の日本株式市場は、歴史的な下落に見舞われました。日経平均株価は2月末の5万8849円台から3月31日の終値5万1063円まで、約7786円(約13%)もの下落を記録しています。月間の下落幅としては、2008年のリーマン・ショック時を上回り、過去最大となりました。

この急落を引き起こした最大の要因は、中東情勢の急激な悪化です。2月末に米国とイスラエルがイランへの協調攻撃を開始したことを契機に、エネルギー輸送の大動脈であるホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥りました。原油価格が急騰し、エネルギー資源の大部分を中東からの輸入に依存する日本経済には、特に深刻な打撃が及んでいます。

本記事では、3月の歴史的下落の構造的要因を整理し、4月以降の市場見通しについて解説します。

ホルムズ海峡危機と原油価格の急騰

危機の発端と経緯

2026年2月28日、米国とイスラエルは「エピック・フューリー作戦」と呼ばれるイランへの協調空爆を開始しました。軍事施設や核関連施設が標的となり、最高指導者アリー・ハーメネイー師が死亡するという衝撃的な事態に発展しています。

これに対しイラン革命防衛隊(IRGC)は3月1日から2日にかけて、ホルムズ海峡の「閉鎖」を正式に宣言しました。通航する外国船舶への攻撃を予告し、実際に3月12日までに商船への攻撃が21件確認されています。タンカー交通は当初約70%減少し、150隻以上の船舶が海峡外で投錨を余儀なくされました。その後、交通量はほぼゼロにまで落ち込んだとされています。

原油価格の推移

ホルムズ海峡は世界の原油供給の約20%が通過する要衝です。封鎖の影響は直ちに原油市場に反映されました。ブレント原油価格は3月8日に4年ぶりとなる1バレル100ドルを突破し、ピーク時には126ドルに達しています。

エネルギー市場調査会社FGEネクサントECAは、封鎖が6〜8週間続けば原油価格が150ドル、場合によっては200ドルまで急騰する可能性があると警告しました。1970年代のオイルショック以来、最大規模のエネルギー供給障害と評される事態となっています。

日本株への影響と下落のメカニズム

エネルギー依存構造がもたらす脆弱性

日本はエネルギー資源の大部分を輸入に依存しており、原油の約9割が中東から、その多くがホルムズ海峡を経由して調達されています。原油価格の急騰は、製造業、運輸業、電力など幅広い産業のコスト上昇に直結します。

ブレント原油が110ドルを超える水準に達すると、企業の利益率が圧迫されるだけでなく、消費者物価の上昇を通じて個人消費にも悪影響を及ぼします。3月の市場では、素材、機械、輸送用機器など、エネルギーコストの影響を受けやすいセクターを中心に広範な売りが広がりました。

円安との複合的な打撃

原油高に加え、円安の進行も日本経済への打撃を拡大させています。3月27日には円が対ドルで160円台に下落し、2024年7月以来の水準を記録しました。円安は輸入コストの上昇を通じてインフレ圧力を一段と強めています。

超長期国債利回りも急上昇し、新発40年国債利回りは3.925%、新発30年国債利回りは3.71%に達しました。インフレ警戒による債券売りが加速し、金利上昇が株式市場にとってさらなる逆風となっています。

セクター別の影響

3月31日の東京市場では、東証プライム市場の値下がり銘柄が91.1%に達し、ほぼ全面安の展開となりました。特に証券・商品先物取引業、輸送用機器、ガラス・土石製品が大きく下落しています。

半導体関連銘柄も、米国のハイテク株安を背景に売りが膨らみ、日経平均は一時1300円以上下げる場面がありました。エネルギーコスト上昇の直接的な影響を受けるセクターに加え、グローバルなリスク回避の動きが市場全体を押し下げた形です。

スタグフレーションリスクの高まり

インフレと景気停滞の共存

原油高と円安の同時進行により、日本経済にスタグフレーション(景気停滞とインフレの共存)のリスクが浮上しています。輸入物価の上昇は企業収益を圧迫する一方で、消費者の購買力を低下させ、景気の足を引っ張ります。

エネルギー価格と食料品を中心とした物価上昇は、家計の実質所得を目減りさせます。特に原油や食料など輸入依存度の高い品目の価格上昇は、消費マインドの悪化を通じて内需の縮小につながりかねません。

金融政策の板挟み

日本銀行にとっても難しい局面です。インフレ抑制のためには金融引き締めが求められる一方で、景気悪化への対応には緩和的なスタンスが必要です。原油高という外的ショックに起因するインフレに対して、金融政策だけで対処することには限界があり、政策判断は一層複雑化しています。

4月相場を左右する停戦交渉と原油シナリオ

停戦交渉の行方が最大の焦点

4月の相場を左右する最大の要因は、中東情勢の行方です。3月30日にはトランプ大統領が戦争終結に言及したとの報道があり、4月1日の東京市場では日経平均が前日比2675円高と急反発しました。上昇率は約5%に達し、停戦への期待がいかに大きいかを示しています。

ただし、停戦交渉には依然として不透明感が残ります。ホルムズ海峡の再開が実現しない限り、原油の高止まりが続く可能性が高く、市場の不安定な動きは継続するとみられます。

シナリオ別の株価見通し

三井住友DSアセットマネジメントの分析によれば、楽観シナリオとして原油価格が75ドル水準に低下した場合、日本株は夏場にかけて回復基調に入る展開が見込まれます。一方、リスクシナリオとして100〜120ドルの高止まりが長期化した場合、株価は二番底を探る展開になる可能性があるとされています。

投資家にとっては、中東情勢のヘッドラインに一喜一憂する展開が続く中、エネルギーコスト上昇の恩恵を受けるセクターや、内需関連銘柄への選別投資が重要になってくるでしょう。

ホルムズ正常化待ちの高ボラ相場と投資戦略

2026年3月の日本株市場は、ホルムズ海峡の事実上の封鎖と原油価格の急騰を主因として、日経平均が月間で約7786円(約13%)下落するという歴史的な下げを記録しました。円安の進行やスタグフレーションリスクの高まりも重なり、市場全体が広範な売り圧力にさらされています。

4月以降は、中東の停戦交渉の進展が市場回復の鍵を握ります。4月1日には停戦観測を背景にした急反発が見られましたが、ホルムズ海峡の正常化と原油価格の安定が確認されるまでは、ボラティリティの高い相場が続く可能性が高いといえます。エネルギー調達の多角化や、内需型銘柄へのシフトなど、中長期的な視点での投資戦略の見直しが求められる局面です。

参考資料:

鈴木 麻衣子

企業経営・コーポレートガバナンス

企業経営・コーポレートガバナンスを専門に取材。経営戦略の成功事例から不正会計の構造的問題まで、企業の「あり方」を鋭く問う。

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