未婚女性64%が子供望まず|キャリア不安が浮き彫りに
未婚女性64.7%とキャリア断絶不安
ロート製薬が2026年3月に公開した「妊活白書2025」の調査結果が注目を集めています。18〜29歳の未婚女性のうち「将来子供が欲しくない」と回答した割合が64.7%に達し、2018年の調査開始以来、初めて男性の割合(60.7%)を上回りました。この数値は前年から11.6ポイントも急上昇しており、単なるトレンドの延長ではなく、若い世代の価値観に構造的な変化が起きていることを示唆しています。
本記事では、この調査結果の詳細を読み解きながら、キャリア断絶への不安がどのように子供を持つ意思に影響しているのか、そして日本社会が直面する少子化の現実について解説します。
妊活白書2025が明らかにした若者の意識変化
子供を望まない割合の急激な上昇
ロート製薬が18〜29歳の未婚男女400人を対象に実施した「妊活白書2025」によると、「現在、そして将来も子供を欲しいと思わない」と回答した割合は全体で62.6%に上りました。注目すべきは男女間の逆転現象です。調査開始の2018年以来、子供を望まない割合は男性の方が一貫して高い傾向にありましたが、2025年の調査で初めて女性(64.7%)が男性(60.7%)を上回りました。
この変化は「将来子供が欲しい」と回答した割合にも表れています。全体では37.4%にとどまり、特に女性では3人に1人程度しか子供を望んでいないことになります。8年間の調査を通じて、若年層の「子供を持たない選択」がここまで多数派になった事実は、日本社会に大きな問題提起をしています。
経済的負担とキャリアへの支障が二大不安要因
子供を望まない理由として最も多く挙げられたのが「経済的な負担が怖い・不安」で、未婚女性の71.7%が回答しています。次いで「キャリアに支障が出ると感じる」が61.4%となり、この2つが突出した不安要因であることがわかりました。
特に注目すべきは、これらの不安感における男女差です。「キャリアに支障が出る」と感じる割合は男性が51.2%であるのに対し、女性は61.4%と約10ポイント高い数値を示しています。経済的負担への不安も同様に女性の方が高く、妊娠・出産・育児による負担がより直接的に女性のキャリアや経済状況に影響するという現実認識が反映されています。
キャリアと妊活の板挟み 30代女性の深刻な葛藤
希望時期より遅れる妊活開始
妊活白書2025では、妊活経験者を対象にした調査も実施されています。女性の約3人に1人(34.0%)が「自分が希望していた時期よりも妊活の開始が遅くなった」と回答しており、男性の19.3%と比べて約1.8倍の開きがあります。特に30代女性では4割以上が希望時期よりも遅れたと答えており、キャリア形成と出産適齢期の重なりが深刻な問題になっています。
30代前半の女性が妊活を遅らせた理由としては、「妊活に関する情報不足や不安があった」(37.9%)が最多で、「仕事の都合やキャリアアップの機会を優先」(24.1%)が続きました。仕事において責任ある立場を任される時期と、生物学的に妊娠・出産が推奨される時期が重なることが、女性にとって大きなジレンマとなっている実態が浮かび上がっています。
マミートラックへの根強い懸念
女性がキャリアへの支障を強く懸念する背景には「マミートラック」と呼ばれる問題があります。マミートラックとは、産休・育休から復帰した女性が責任の軽い業務に配置されたり、昇進コースから外れたりする現象を指します。
女性の育児休業取得率は84.1%、復職率は93.1%と数字上は高い水準にあります。しかし、復職後に元のポジションや同等の責任ある業務に戻れるかどうかは別の問題です。既婚者を対象にした調査でも、子供を持つことを希望する男女のうち、男性の52.0%、女性の64.1%が「キャリアへの影響に対する不安がある」と回答しており、結婚後もこの懸念が解消されていないことがわかります。
加速する少子化と政府の対応
出生数10年連続で過去最少を更新
妊活白書の結果は、日本全体の少子化の加速と軌を一にしています。2025年の出生数は70万5,809人で、10年連続で過去最少を更新しました。日本人のみの出生数に限ると約66万8,000人とされ、国立社会保障・人口問題研究所が2023年に公表した将来推計(2025年に74万9,000人)を8万人以上下回っています。少子化は想定より約16年も前倒しで進行している計算です。
一方、2025年の婚姻数は50万5,656組で2年連続の増加を記録しましたが、戦後3番目に少ない水準です。結婚した夫婦の間でも子供を持つことへのハードルが高まっていることが、出生数の減少に拍車をかけています。
こども未来戦略「加速化プラン」の課題
政府は2023年12月に「こども未来戦略」を閣議決定し、年間約3兆6,000億円規模の少子化対策「加速化プラン」を推進しています。児童手当の高校生年代までの延長、第3子以降への給付拡充、出産・子育て応援交付金の制度化などが主な施策です。
2025年には育児・介護休業法も改正され、3歳から小学校就学前の子供を養育する労働者に柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されました。2026年度からは「こども誰でも通園制度」が全国展開される予定です。
しかし、これらの施策は主に「すでに子供を持つ家庭」や「子供を持つ意思のある層」への支援が中心です。妊活白書が明らかにした「そもそも子供を望まない」若者の増加という根本的な意識変化に対して、経済的支援だけでは十分な効果を発揮できない可能性があります。
400人調査の限界と職場環境整備
今回の調査結果を読み解く際にいくつかの留意点があります。まず、調査対象が18〜29歳の未婚男女400人であり、年齢が上がるにつれて意識が変化する可能性があることです。「現時点で望まない」という回答が、将来にわたって固定されるとは限りません。
ただし、前年から11.6ポイントという急激な上昇幅は、一時的な変動では説明しづらい構造的な変化を示唆しています。キャリア断絶への不安は、個人の意識だけでなく、長時間労働や性別役割分業が根強い日本の職場文化に起因する問題です。
今後の焦点は、経済的支援の拡充に加え、キャリアと育児を真に両立できる職場環境の整備にあります。テレワークの推進、男性の育児参加促進、復職後のキャリア継続保障など、「子供を持ってもキャリアが断絶しない」という実感を持てる社会の実現が求められています。
64.7%が迫るキャリア継続社会の構築
ロート製薬の「妊活白書2025」は、若年未婚女性の64.7%が子供を望まず、その割合が初めて男性を上回ったという衝撃的な結果を報告しました。背景にあるのは経済的負担への不安とキャリア断絶への懸念であり、特に後者は女性の方が約10ポイント高い水準にあります。
少子化が想定を大幅に上回るペースで進む中、政府の経済的支援策だけでは不十分であることが明らかになりつつあります。子供を持つ選択をしてもキャリアが途切れない社会構造の構築こそが、少子化対策の本丸であるといえるでしょう。
参考資料:
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