NewsHub.JP
NewsHub.JP

ゴールドウインが欧州旗艦店で世界攻略へ本格始動

by 藤田 七海
URLをコピーしました

Goldwinの世界展開と500億円構想

スポーツ・アウトドア衣料大手のゴールドウインが、自社ブランド「Goldwin」のグローバル展開を本格化させています。2026年1月31日にはロンドン・ソーホーに欧州旗艦店をオープンし、続けてソウル、ニューヨークへの出店も予定しています。

日本国内では「ザ・ノース・フェイス」のライセンスビジネスで業界屈指の成長を遂げたゴールドウインが、次に挑むのは自社ブランドによる世界市場の攻略です。10年後に売上500億円を目指す「Goldwin 500」構想の全貌を解説します。

ロンドン旗艦店が示す欧州戦略

ソーホーの一等地に出店

「Goldwin London」は、ロンドン中心部のソーホーエリアに位置するブロードウィック・ストリートに開業しました。この通りはブティックやカフェ、ライブスポットが軒を連ねるファッションとカルチャーの交差点として知られ、ブランドの世界観を発信するには最適な立地です。

ゴールドウインは2025年5月に英国現地法人「GOLDWIN LONDON LIMITED」を設立しており、単なる販売拠点ではなく、ブランドの技術力と美意識を欧州に向けて発信する拠点として位置づけています。

販売拠点を超えたブランド発信

ロンドン店は、ゴールドウインが得意とする機能性素材やミニマルなデザインを体感できる空間として設計されています。富山県小矢部市の「Goldwin Tech Lab」で培った素材開発技術や、日本のモノづくりの美意識を直接伝える場となっています。

欧州での認知拡大はもちろん、東アジア市場への波及効果も視野に入れたグローバル戦略の一環です。ロンドンという国際都市での存在感が、ブランド全体の価値を引き上げる狙いがあります。

「Goldwin 500」構想の全貌

10年で売上500億円への挑戦

ゴールドウインは2024年4月に、自社ブランド「Goldwin」のグローバル成長を目指すプロジェクト「Goldwin 500」を発表しました。2024年3月期に売上高32億円だった同ブランドで、5年後に200億円、10年後の2033年3月期には500億円の達成を目指す野心的な計画です。

地域別の売上内訳としては、中国300億円、日本100億円、韓国60億円を想定しています。欧米市場は認知拡大フェーズと位置づけ、まずはブランドの世界観を浸透させることに重点を置いています。

中国市場が成長の柱

中国は最大市場として期待されており、年間4店のペースで一級都市を中心に出店を進めています。北京店は年間売上高2億円を超え、ブランド最大の売上を記録しています。すでに中国国内に8店舗を展開しており、今後も拡大ペースを維持する方針です。

中国での成功は、高機能素材と洗練されたデザインという「日本発のプレミアムアウトドアブランド」というポジショニングが受け入れられた結果といえます。

ソウル・ニューヨークへも展開

ロンドンに続き、2026年2月にはソウル、3月にはニューヨークへの出店が予定されています。世界の主要都市に旗艦店を配置することで、グローバルブランドとしての認知度を一気に高める戦略です。

渡辺貴生社長は「世界のどこのスポーツアパレルよりも美しく機能的な製品を作る会社にしたい」と語っており、品質とデザインの両立でグローバル市場での差別化を図る姿勢を鮮明にしています。

ザ・ノース・フェイスの次を目指す理由

ライセンスビジネスの成功と限界

ゴールドウインの急成長を牽引してきたのは、「ザ・ノース・フェイス」の日本国内ライセンスビジネスです。アウトドアブームの追い風もあり、同ブランドは日本市場で圧倒的な存在感を確立しました。

しかしライセンスビジネスには、ブランドオーナーとの契約条件やロイヤリティの問題がつきまといます。自社ブランドの育成は、収益構造の安定化と企業価値の向上に不可欠な戦略です。

中期経営計画で示す成長シナリオ

ゴールドウインの中期5カ年経営計画では、2029年3月期に連結売上高1,885億円、営業利益360億円を目指しています。ザ・ノース・フェイスではアウトドアアパレルの収益基盤を維持しつつ、ウィメンズ・キッズ・フットウェアなど周辺カテゴリーへの展開を加速させています。

一方で自社ブランド「Goldwin」の成長が、中長期的な企業価値の向上を左右する最重要テーマとなっています。ライセンスブランドと自社ブランドの二本柱で持続的な成長を実現する構想です。

欧米競合リスクと富山発技術の差別化

グローバル展開のリスク要因

欧米市場ではパタゴニア、アークテリクス、サロモンなど強力な競合が存在します。機能性アウトドアウェアの市場は競争が激しく、ブランド認知度が低い状態からのスタートとなるため、マーケティング投資の効率性が問われます。

また、2026年3月時点では中東情勢の緊迫化による世界経済の不透明感が増しており、消費者の購買意欲への影響も注視が必要です。

富山発のモノづくりが武器に

ゴールドウインの強みは、創業地である富山県で培ってきた素材開発と縫製技術にあります。小矢部市の「Goldwin Tech Lab」では先端的な素材研究が行われており、2027年初夏には大規模体験施設「Play Earth Park」の開業も予定されています。

「日本の美意識」と「テクノロジー」を融合させたブランドストーリーは、グローバル市場での差別化要因になり得ます。ロンドン店の成果が今後の展開を左右する試金石となるでしょう。

ザ・ノース・フェイス後の500億円挑戦

ゴールドウインは、ザ・ノース・フェイスで築いた国内基盤を足がかりに、自社ブランドで世界市場への挑戦を本格化させています。ロンドン旗艦店を皮切りに、ソウル、ニューヨークと主要都市に拠点を広げる戦略は、10年で500億円という目標に向けた第一歩です。

北陸で培ったモノづくりの技術と日本の美意識を武器に、グローバルアウトドアブランドとしての地位を確立できるか。富山発の挑戦から目が離せません。

参考資料:

藤田 七海

ブランド・消費文化・ライフスタイル

ブランド戦略・消費文化・ライフスタイルを幅広く取材。歴史や科学にも造詣が深く、多角的な視点で社会の「今」を切り取る。

関連記事

衣料品輸入の中国五割割れで進む東南アジア生産シフトの最新実像

日本の衣料品輸入で中国比率が5割を下回り、ユニクロなどの委託生産はベトナム、バングラデシュ、インドネシアへ広がる。中国一極の低価格モデルが転機を迎えた背景を、労務費、関税、人権監査、在庫短縮、消費者価格への影響から読み解く。各国の輸出力とブランド戦略の変化、日本企業が今後備えるべき論点まで整理する。

しまむら低販管費の強さ、仕入型経営と標準化が生む持続成長の力

しまむらは2026年2月期に売上高7000億円、販管費率26.2%を維持しました。約600社のサプライヤー、完全買取、物流、マニュアル運営、EC統合、AIレコメンドを組み合わせた低コスト経営の仕組みを、ファストリの37.6%との違い、人件費上昇やサプライチェーン管理の課題、今後の成長条件から読み解く。

しまむら最高益を生んだ宝探し消費と低価格経営の復活戦略の全貌

しまむらが2026年2月期に売上高7000億円、営業利益614億円を達成した背景を、過去の品ぞろえ縮小による客離れ、PB・JBの再設計、物流と店舗運営の効率化、インフレ下の節約志向から読み解く。小売各社が値上げ対応に揺れる中、生活防衛消費の変化、ユニクロ型との違い、ECと出店の課題、今後の利益成長の条件を解説。

HUMAN MADEが示す訪日客時代の高収益ブランド戦略の強み

HUMAN MADEは2026年1月期に売上高142億円、営業利益率31.7%へ伸長。訪日客を含む海外向け売上比率65%、DTC比率83%の構造から、NIGO発ブランドが高収益を維持できる理由を分析。ユニクロとの海外比率比較、インバウンド消費、原宿旗艦店や中国・米国展開の課題まで含めて成長性を読み解く。

最新ニュース

ふるさと納税、10月から地場産品ルール厳格化でお得度さらに低下

2026年10月からふるさと納税の地場産品基準が厳格化され、加工品や工芸品で掲載終了・寄附額変更が広がる可能性があります。ポイント付与禁止、募集経費の透明化、寄附金活用可能額の段階引き上げが重なるなか、「お得度」低下の背景と寄付者が確認すべき視点を自治体財政から読み解く。

世界の油ガス田発見急減、資源安保は探鉱依存から多元化へ向かう

世界の油ガス田発見は2025年に18件まで減り、発見量も低水準に沈んだ。メジャーの投資規律、深海偏重、中東リスク、EVと太陽光の拡大が同時進行するなか、供給不安を探鉱再開だけで解けない理由と、輸入国日本が備えるべき調達多角化、備蓄、需要抑制の具体的な今後の優先順位を地政学と産業政策の視点から読み解く。

老人ホーム1000万円時代、終のすみか選びと老後資金の守り方

有料老人ホームの費用が上がるなか、東京の入居時費用相場は920万円、月額31.7万円に達する。サ高住、特養、自宅介護の違い、前払金の確認点、親子で決める資金計画を整理し、建設費や人手不足が価格を押し上げる背景、平均と中央値の読み方、見学時の質問、住み替え判断の実務まで、終のすみか選びの現実解を読み解く。

ソフトバンクG外債1.7兆円、OpenAI集中投資の勝算とリスク

ソフトバンクグループがドル・ユーロ建てで1.7兆円規模の外債発行に動く。OpenAI追加出資の第三弾を支える資金調達だが、BB+格付け、ブリッジローン返済、AIインフラ投資の膨張が財務規律を試す。外債市場の評価と、Armなど保有資産を前提にしたレバレッジ戦略、社債投資家や株主が確認すべき焦点を解説。

日本株時価総額の首位争い、AI半導体と金利が主役交代を加速させる

トヨタ、三菱UFJ、ソフトバンクG、キオクシアが時価総額首位を争う日本株。AI半導体ブーム、日銀利上げ、東証の資本効率改革が評価軸を変えています。自動車、銀行、投資会社、メモリー大手の強みと弱点を比較し、輸出製造業中心だった大型株地図をどう塗り替えているのかを解説。投資家が見るべき利益の質と循環性も読み解く。