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日欧6カ国がホルムズ海峡で共同声明を発表

by 中村 壮志
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日欧6カ国声明とホルムズ危機の焦点

2026年3月19日、日本と英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダの6カ国首脳が、ホルムズ海峡の安全な航行確保に向けた共同声明を発表しました。後にカナダも加わり、計7カ国による声明となっています。

この声明は、2月末に始まった米国・イスラエルによるイラン攻撃とその後のイランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖という、世界のエネルギー供給を揺るがす危機的状況に対する、日本と欧州の主要国による初めての共同対応です。世界の原油輸送量の約2割が通過するこの海峡の封鎖は、国際エネルギー市場に深刻な混乱をもたらしており、日本を含む各国にとって喫緊の課題となっています。

本記事では、共同声明の内容とその背景、日本への影響、そして今後の見通しについて詳しく解説します。

共同声明の内容と狙い

イランへの「最も強い言葉での非難」

共同声明では、ペルシャ湾においてイランが非武装の商業船舶に対して行った攻撃、石油・ガス施設を含む民間インフラへの攻撃、そしてイラン軍によるホルムズ海峡の事実上の閉鎖を「最も強い言葉で非難」しています。

具体的にイランに対して要求した内容は以下の通りです。

  • 脅迫行為の即時停止
  • 機雷の敷設の中止
  • ドローンおよびミサイル攻撃の停止
  • 商業船舶の航行を妨害する一切の行為の中止
  • 国連安全保障理事会決議2817の遵守

この安保理決議2817は、2026年3月11日に採択されたもので、イランによる近隣諸国への「甚だしい攻撃」を非難し、ホルムズ海峡の封鎖が「国際の平和と安全に対する深刻な脅威」であると明記しています。同決議は135カ国の共同提案国を得るなど、圧倒的な国際的支持を集めました。

航行の安全確保への「貢献の用意」

声明の中で特に注目されるのは、6カ国が「ホルムズ海峡の安全な航行を確保するための適切な取り組みに貢献する用意がある」と明記した点です。これは、必要に応じて各国が海上安全保障に向けた実質的な行動を取る可能性を示唆しています。

ただし、声明では具体的な軍事的措置や海軍の派遣には直接言及しておらず、「準備計画に取り組んでいる国々のコミットメントを歓迎する」という表現にとどめています。外交的な圧力と実際の行動のバランスを取る姿勢がうかがえます。

エネルギー市場安定化への取り組み

声明では、国際エネルギー機関(IEA)が戦略石油備蓄の協調放出を承認した決定を歓迎しています。IEAは3月中旬、過去最大規模となる4億バレルの戦略石油備蓄の協調放出を決定しました。米国はこのうち1億7,200万バレルを放出する予定です。

さらに、特定の産油国と協力して原油生産量の増加を図ることを含め、エネルギー市場の安定化に向けたその他の措置も講じていくと表明しています。

ホルムズ海峡危機の背景と日本への影響

危機の発端と経緯

事態の発端は2026年2月28日、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃です。これを受けてイラン革命防衛隊は3月初旬にホルムズ海峡の閉鎖を宣言しました。海峡を通航しようとする船舶への警告が行われ、数百隻のタンカーが海峡の両側で立ち往生する事態となりました。

この結果、世界の原油供給量の約20%、LNG貿易量の約20%に相当する輸送が途絶。北海ブレント原油価格は2月27日の1バレル当たり72ドルから、3月9日には110ドルまで急騰しました。欧州の天然ガス価格も戦争開始以降60%上昇しています。

日本のエネルギー安全保障への打撃

日本にとってホルムズ海峡の封鎖は、他の先進国以上に深刻な問題です。日本の原油輸入の約93〜96%が中東地域に依存しており、その大部分がホルムズ海峡を通過して運ばれています。この依存度は世界の主要国の中で突出して高い水準です。

一方、LNG輸入量のホルムズ海峡依存度は6.3%と比較的低いものの、カタールエナジーがLNG生産を停止したことで、アジアのLNGスポット取引価格(JKM)は2月27日の11.06ドル/mmBtuから3月9日には24.80ドル/mmBtuへと倍以上に跳ね上がりました。

こうした価格上昇はガソリン価格、電気料金、物流コストに波及し、日本経済全体のインフレ加速につながる恐れがあります。

日本の備えと対応

日本政府はかねてより中東依存リスクに対する備えを進めてきました。国内には約254日分の石油備蓄があり、短期的な電力供給への直接的な影響は限定的とされています。

また、日本政府はイラン情勢を踏まえたエネルギー対策本部を設置し、UAE やサウジアラビアの閣僚とも地域情勢や資源の安定供給について協議を重ねています。今回の共同声明への参加は、こうした多層的な対応策の一環として位置づけられます。

4億バレル備蓄放出の限界と外交焦点

共同声明の実効性への疑問

共同声明は政治的なシグナルとしては重要ですが、具体的な行動計画を伴っていない点には留意が必要です。「適切な取り組みに貢献する用意」という表現は幅広い解釈が可能であり、実際にどのような形で航行の安全確保が図られるかは今後の展開次第です。

また、IEAの戦略石油備蓄放出についても、専門家からは限界を指摘する声が上がっています。4億バレルの放出量は、ホルムズ海峡を通過する通常の1日2,000万バレルの約20日分にすぎません。米国の放出分1億7,200万バレルを120日間で放出する計画では、日量約140万バレルと、封鎖による供給喪失量の15%程度しかカバーできないという試算もあります。

今後の注目ポイント

当面の焦点は、イランとの外交的な解決の道筋が見えるかどうかです。国連安保理決議2817が採択されたことで国際的な圧力は強まっていますが、中国とロシアが同決議を棄権しており、国際社会の完全な一致には至っていません。

日本としては、中東原油への依存度を引き下げる長期的な取り組みも重要です。EV(電気自動車)の普及や再生可能エネルギーの拡大、原油輸入先の多角化など、エネルギー安全保障の強化が改めて問われています。

ホルムズ危機が示す日本の中東依存リスク

日本と欧州5カ国による今回の共同声明は、ホルムズ海峡の封鎖というエネルギー安全保障上の重大危機に対し、先進国が結束して対応する意思を示したものです。声明はイランへの非難、航行の安全確保への貢献の用意、そしてエネルギー市場安定化の三つの柱で構成されています。

日本にとっては、原油の中東依存度が突出して高いだけに、この問題は他国以上に切迫した課題です。短期的には石油備蓄や国際協調による供給確保が求められますが、中長期的にはエネルギー調達先の多角化やクリーンエネルギーへの転換を加速させる必要があります。今回の危機は、日本のエネルギー政策の構造的な脆弱性を改めて浮き彫りにしたといえるでしょう。

参考資料:

中村 壮志

国際情勢・地政学・安全保障

中東・米中関係を中心に国際情勢を取材。地政学リスクが日本経済に与える影響を、現地の視点から分析する。

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