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経営計画書が機能しない原因と運用3つのコツを解説

by 鈴木 麻衣子
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経営計画書が機能しない中小企業の課題

経営計画書は企業経営の羅針盤とも言える重要な文書です。しかし、実際には「作ったけれど棚にしまったまま」「毎年作成するが数字が改善しない」という中小企業が少なくありません。中小企業庁の調査でも、経営計画を策定している中小企業の割合は増加傾向にあるものの、計画を実際の経営改善に結びつけられている企業は限定的であることが示されています。

こうした中、毎年1,000社を超える企業の経営計画作成を支援してきた税理士法人古田土会計の古田圡満代表は、経営計画書が機能しない根本原因と、その解決策としての「3つの運用のコツ」を提唱しています。本記事では、経営計画書を「作って終わり」にしないための実践的な運用方法を解説します。

経営計画書が「役に立たない」と感じる3つの原因

作成して満足してしまう

経営計画書を作成するプロセス自体は、自社の現状分析や将来の方向性を考える貴重な機会です。しかし、多くの経営者が陥るのが「作成して満足してしまう」という罠です。計画書の完成がゴールになってしまい、日常業務に戻ると目の前の仕事に忙殺されて、計画の内容を忘れてしまいます。

特に中小企業では、経営者自身がプレイヤーとして現場に出ていることが多く、計画の進捗を管理する時間を確保しにくいという構造的な問題があります。結果として、経営計画書は年に一度作成される「儀式的な文書」になってしまうのです。

目標が曖昧で行動に落とし込めない

「顧客満足度の向上」「売上の拡大」といった抽象的な目標を掲げるだけでは、社員は具体的に何をすればよいのか分かりません。経営計画書に記載された方針が、日々の業務における具体的な行動として結びついていないケースが非常に多いです。

行動に落とし込める計画とは「その計画を見て行動がイメージできる」ものです。イメージできないものは実行されません。数値目標だけでなく、それを達成するための具体的なアクションプランが必要です。

振り返りの仕組みがない

PDCAサイクルの中で最も軽視されがちなのが「Check(振り返り)」のプロセスです。計画を立て(Plan)、実行する(Do)までは多くの企業が行いますが、その結果を定期的に振り返り(Check)、改善策を講じる(Action)ところまで到達できていません。

振り返りの仕組みが整っていないことが、経営計画書が使われなくなる最大の原因です。逆に言えば、進捗管理の仕組みさえ構築できれば、経営計画書は有効に機能し始めます。

古田土会計が提唱する「3つの運用のコツ」

コツ1:経営計画書を全社員と共有する

古田土会計グループでは、毎年創業記念日に経営計画発表会を開催しています。パート社員を含む全員が参加し、代表が前期の振り返りと今期の方針を発表します。この発表会には毎年1,000名以上が視聴するほどの規模です。

経営計画書を全社員に配布・共有することで、会社の存在意義や方向性が組織全体に浸透します。古田土会計では、社員から案を募り、幹部で吟味したうえで経営計画書に盛り込むというプロセスを取っています。トップダウンだけでなく、ボトムアップの要素を組み合わせることで、社員一人ひとりが「自分の計画」として当事者意識を持てるようになるのです。

この共有プロセスは一度きりではなく、繰り返し行うことが重要です。朝礼や会議の場で経営計画書の内容に立ち返り、日常業務との接点を保ち続けます。

コツ2:日常業務の判断基準として活用する

経営計画書は作成後も頻繁に開かれ、参照されるべき文書です。古田土会計の指導では、以下のような場面で経営計画書を活用することを推奨しています。

まず、部下指導の場面です。上司が部下を指導する際に「経営計画書にはこう書いてある」と参照させることで、指導内容に一貫性が生まれます。個人の感覚ではなく、会社としての方針に基づいた指導が可能になります。

次に、顧客対応の場面です。お客様への説明や提案の際に、経営計画書に記載された方針と照らし合わせることで、会社として統一されたメッセージを発信できます。

さらに、採用活動の場面でも有効です。求職者に経営計画書を用いて会社のビジョンを説明することで、入社前のミスマッチを防ぎ、企業文化への共感度が高い人材を採用できます。

コツ3:定期的な振り返りサイクルを回す

経営計画書の運用で最も重要なのが、定期的な振り返りです。月次決算と連動させて、計画と実績の差異を分析し、必要な対策を講じる会合を定期的に開催します。

古田土会計では、月次決算書と経営計画書を一体として活用することを重視しています。数値の「方針編」と「諸表編」を両輪として機能させることで、計画が机上の空論に終わることを防ぎます。

振り返りの頻度は月1回が理想的です。四半期に1回では間隔が空きすぎて軌道修正が遅れ、週1回では現場の負担が大きくなりすぎます。月次の振り返りで計画との乖離を確認し、翌月の行動計画を修正するサイクルを回し続けることが成功の鍵です。

実践するうえでの注意点と展望

よくある間違い

経営計画書の運用で陥りがちな間違いの一つが、売上高から目標を立ててしまうことです。古田土会計では、いくら売上を上げても利益が出なければ会社にお金は残らないとして、利益を最初に決める「逆算式」の計画策定を推奨しています。

また、計画が壮大すぎて実現可能性が低い場合も問題です。達成できそうにない目標は社員のモチベーションを下げ、計画書そのものへの信頼を損ないます。

今後の見通し

デジタルツールの普及により、経営計画の進捗管理はかつてないほど容易になっています。クラウド型の経営管理ツールを活用すれば、リアルタイムでの数値把握や部門間の情報共有がスムーズに行えます。

一方で、ツールに頼りすぎるのも危険です。経営計画書の本質は、経営者の想いと社員の行動をつなぐコミュニケーションツールです。デジタル化が進んでも、経営者自身が方針を語り、社員と対話する場を設けることの重要性は変わりません。

経営改善につなげる3つの運用実践

経営計画書を経営改善に結びつけるためには、「全社員との共有」「日常業務での活用」「定期的な振り返り」という3つの運用のコツを繰り返し実践することが重要です。古田土会計が40年以上にわたり1,000社を超える企業を支援してきた経験が示すのは、計画書の「内容」以上に「使い方」が成果を左右するという事実です。

経営計画書は作成した瞬間がスタートラインです。まずは今月の会議で経営計画書を開き、社員と一緒に目標と現状のギャップを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩の繰り返しが、やがて大きな経営改善につながります。

参考資料:

鈴木 麻衣子

企業経営・コーポレートガバナンス

企業経営・コーポレートガバナンスを専門に取材。経営戦略の成功事例から不正会計の構造的問題まで、企業の「あり方」を鋭く問う。

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