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ミズノJPX ONEの製造法とは 新素材フェースの核心を解く

by 田中 健司
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JPX ONE二層フェース製法の核心

ミズノの新ゴルフクラブ「JPX ONE」シリーズを巡るクイズの答えは、単なる新素材採用ではありません。要点は、鍛造チタンフェースの上に厚さ0.4ミリのNANOALLOYフェースを重ねる二層構造を量産品として成立させた点にあります。軟式野球バットで培った「ボールではなく打撃面をたわませてエネルギーロスを抑える」という発想を、ドライバーに移植した製造法です。

このテーマが重要なのは、ゴルフクラブ市場で素材競争が頭打ちになりつつあるからです。近年はチタンやカーボンの組み合わせが主流でしたが、各社の差は小さくなっていました。そのなかでミズノは、野球やテニスで実績を持つ樹脂技術をゴルフに持ち込み、フェースそのものの変形のさせ方を見直しました。本記事では、クイズの答えを起点に、なぜこの構造が生まれたのか、何が新しいのか、量産面でどこに難しさがあるのかを整理します。

クイズの答えと技術の中身

二層フェース構造という答え

結論から言えば、JPX ONEの特徴的な製造法は、鍛造チタンフェースの上にNANOALLOY適用素材を積層した二層フェース構造です。ミズノの2026年1月29日付ニュースリリースによると、ドライバーには世界で初めてゴルフクラブヘッド用のNANOALLOYフェースを搭載し、その厚みは0.4ミリです。通常のチタンフェースが局所的に変形するのに対し、この構造ではフェース全体が大きくたわむように設計されています。

ここで重要なのは、NANOALLOYだけでフェースを作ったわけではないことです。土台には鍛造チタンを残し、その上に樹脂系素材を重ねています。つまり、金属フェースの強度と、樹脂のしなやかな変形を両立させる設計です。クイズとして問うなら「樹脂を使った」では不十分で、「チタンの上にナノアロイ素材を重ねる積層製法」が核心です。

海外メディアのGOLF.comやGOLFTECも、この点を技術の本丸として紹介しています。従来のチタン単体やカーボン単体とは異なり、衝撃時に弾くというより、フェース全体の変形を使ってエネルギー損失を減らす設計思想にあるという整理です。一般にドライバー開発では、反発性能を上げようとするとルール適合や耐久性とのせめぎ合いが生じます。JPX ONEは、その制約のなかで「変形のさせ方」を変えた製品だと言えます。

軟式野球バットの知見が生きた理由

なぜミズノがこの発想にたどり着いたのか。ここで軟式野球バットの知見が効いてきます。ミズノのBEYONDMAXシリーズは、軟式ボールが大きく変形しやすいことに着目し、打球部に柔らかい高反発素材を用いることで、ボール側の変形を抑え、飛距離を伸ばしてきました。ミズノ公式の歴史ページでも、2002年の初代モデルを「ボールではなくバットを変形させればどうか」という発想転換で説明しています。

この理屈はゴルフにも応用できます。インパクトでゴルフボールが過度に潰れると、その復元にエネルギーが取られます。そこでフェース側を大きくたわませれば、ボール側の変形を抑えられ、初速につながるという考え方です。ミズノはプレスリリースで、軟式野球用バット研究から得た知見を東レのNANOALLOY技術と掛け合わせたと説明しています。新クラブの製造法は、単に異業種素材を流用したのではなく、競技横断で衝撃吸収と反発の原理を再解釈した成果です。

なぜ量産の意味が大きいのか

素材開発より難しい接合と薄肉化

新素材クラブの価値は、素材名の新しさだけでは決まりません。量産できるか、耐久性を保てるか、ルール適合を満たせるかが重要です。JPX ONEでは、鍛造チタンフェースを従来モデルより薄くしながら、その上に0.4ミリのNANOALLOY素材を組み合わせています。ミズノ公式サイトでは、ピーク厚み領域で前作より薄肉化し、CORAREAを広げたと説明しています。GOLFTECは、その薄肉化幅を最大11%と紹介しています。

薄く作れば反発は出やすくなりますが、耐久性は落ちやすくなります。そこへ樹脂系素材を積層するなら、接合の均一性や温度変化への耐性、長期使用時の剥離リスクも管理しなければなりません。ミズノが発売を当初計画から約1年延期し、約3年をかけて開発したとマイキャディが報じたのは、この量産条件の詰めに時間を要したためとみるのが自然です。新製法の肝は、素材そのものより、異種材料を反発規制の範囲内で再現性高く仕上げる工程管理にあります。

ゴルフ市場での差別化ポイント

ゴルフクラブ市場では、ドライバーの訴求点が「低スピン」「高慣性モーメント」「軽量化」に集中してきました。そのなかでJPX ONEは、「フェース全体が変形する」という打点エリア起点の物語を前面に出しています。GOLF.comは、ミズノがこの素材を使うことでチタンフェースを約10%薄くできたと紹介し、Golf Monthlyも高初速エリアの拡大を評価しています。

ここで見逃せないのは、ミズノがこの技術をドライバーに限定していることです。公式情報では、フェアウエーウッドとユーティリティにはNANOALLOYフェースを使わず、別のCORTECH CHAMBER改良で対応しています。つまり、同社自身が「どの番手にも万能な技術」ではなく、ボール初速を最優先するドライバーで最も意味が大きい製法だと判断しているわけです。これは技術の過大宣伝を避ける姿勢としても評価できます。

また、販売目標を発売から1年間で1万4,000本と置いている点も示唆的です。大量普及モデルというより、ミズノが金属ウッド分野で技術ブランドを立て直す象徴商品として位置付けている可能性が高いと考えられます。JPX ONEの「ONE」は名称変更以上に、ドライバー領域での再出発を意味するブランドメッセージでもあります。

JPX ONE新素材評価と2代目への課題

新素材と飛距離をめぐる誤解

注意したいのは、「樹脂を使えば必ず飛ぶ」という単純な話ではないことです。飛距離はヘッドスピード、入射角、スピン量、打点位置、シャフトとの組み合わせで大きく変わります。Golf Monthlyの試打レビューでも、中心打点では強みが出る一方、打ち手によっては打感の好みが分かれるとされています。新製法は魔法ではなく、性能の出し方を変える技術です。

もう1つの注意点は、量産初期の評価が安定するまで時間がかかることです。新構造クラブは、店頭試打やフィッティングの現場で打感や音、耐久性への見方が固まっていきます。ミズノは日本ではアイアンの評価が極めて高い一方、ドライバー市場では後発色が強い企業です。JPX ONEが一時的な話題で終わるか、次世代フェース設計の起点になるかは、2代目以降でこの製法をどう磨くかにかかっています。

NANOALLOY積層が示すたわみ設計の転換

ミズノの新ゴルフクラブ「JPX ONE」シリーズの製造法の答えは、鍛造チタンフェースの上にNANOALLOY適用素材を重ねる二層フェース構造です。軟式野球バットで培った「ボールではなく打撃面を変形させる」という発想を、ゴルフの反発設計へ持ち込んだ点に新しさがあります。

この製法の価値は、素材名の珍しさより、異種材料を接合しながら薄肉化と耐久性を両立させ、量産品として成立させたことにあります。クラブ市場での差別化が難しくなるなか、ミズノは競技横断の知見を製造法レベルで再編集しました。JPX ONEが示したのは、新素材競争の次の段階が「何で作るか」から「どうたわませるか」へ移りつつあるという変化です。

参考資料:

田中 健司

製造業・建設・インフラ

製造業・建設・インフラ産業を中心に取材。大企業の事業再編から建設現場の人手不足問題まで、日本の産業基盤の変化を追い続ける。

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