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フジクラが光ファイバーの次に狙う核融合事業の全貌

by 山本 涼太
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AI光ファイバー急成長と核融合参入

フジクラ(5803)は、生成AIブームを背景としたデータセンター需要の急拡大により、光ファイバー事業で驚異的な成長を遂げています。2024年には日経平均構成銘柄の中で値上がり率トップとなり、2025年も株価が約2.6倍に急騰しました。

そんなフジクラが、光ファイバーに続く次の成長の柱として注力しているのが「核融合向け超電導線材」事業です。本記事では、フジクラの現在の光ファイバー事業の強さと、次世代エネルギー分野への挑戦について詳しく解説します。

光ファイバー事業が急成長した背景

生成AIがもたらしたデータセンター特需

フジクラの急成長を支えているのは、生成AIの普及に伴うデータセンター建設ラッシュです。ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの運用には、膨大なデータを高速で伝送する光ファイバーが不可欠です。

フジクラが強みを持つ「SWR(Spider Web Ribbon)」構造の光ファイバーは、高密度実装と細径化を両立した独自技術です。従来のケーブルと比べて省スペースで大容量通信が可能なため、GAFAM(Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoft)をはじめとする大手テック企業のデータセンターで広く採用されています。

業績は過去最高を連続更新

2025年3月期決算では、営業利益が前期比約95%増の1,355億円に達し、中期経営計画で掲げていた目標の850億円を大幅に上回りました。売上・利益ともに過去最高を記録しており、AI関連の追い風は当面続く見通しです。

電線業界の「御三家」(住友電工、古河電工、フジクラ)の中でも、情報通信事業のセグメント比率が高いフジクラは、AI特需の恩恵を最も大きく受けている企業といえます。

3000億円の大型設備投資で生産能力3倍へ

日米で同時に増産体制を構築

2026年3月13日、フジクラは光ファイバー・光ケーブルの生産能力増強に向け、日本と米国で合計最大3,000億円の設備投資を行うと発表しました。千葉県佐倉事業所で建設中の新工場に加え、米国拠点でも増産を進め、生産能力を現状の最大3倍に引き上げる計画です。

この投資の背景には、日米両政府による「戦略的投資に関する覚書」があります。フジクラは2025年10月に米国商務省と枠組み合意書を締結し、米国のAIインフラ強化における光ファイバーケーブルの主要供給者に選定されています。

米国での事業拡大も加速

米国子会社のアメリカン・フジクラ・リミテッド(AFL)は、サウスカロライナ州スパータンバーグ郡での事業拡大に1億5,500万ドルを投じています。今後2〜5年の間に150人以上の新規雇用を創出する計画で、米国市場でのプレゼンスを着実に高めています。

岡田直樹社長は、2026年度からの新たな3カ年中期経営計画にさらなる設備投資を盛り込む意向を示しており、成長投資の手を緩める気配はありません。

次なる成長の柱「核融合向け超電導線材」

なぜフジクラが核融合に参入するのか

フジクラが光ファイバーの次に狙う事業、それが「核融合向け高温超電導(HTS)線材」です。核融合発電は、太陽と同じ原理でエネルギーを生み出す次世代技術として世界中で研究開発が進んでいます。

核融合炉では、超高温のプラズマを閉じ込めるために強力な磁場が必要です。その磁場を生み出す「高温超伝導マグネット」の基幹材料となるのが、フジクラが製造するレアアース系高温超電導線材です。フジクラはこの分野で長年の研究開発実績を持ち、世界トップクラスの品質と生産技術を確立しています。

世界の核融合ベンチャーと連携

フジクラの超電導線材は、すでに世界の有力な核融合ベンチャーに採用されています。米国のCommonwealth Fusion Systems(CFS)にはレアアース系高温超電導線材の納入を開始しており、日本のHelical Fusionとも高温超伝導テープ線材の追加調達で合意しています。

さらに、京都フュージョニアリング(Kyoto Fusioneering)と共同で、英国原子力公社(UKAEA)のSTEP(Spherical Tokamak for Energy Production)プログラム向けテストコイルの製造でマイルストーンを達成するなど、国際的な実績を積み重ねています。

投資規模と事業目標

フジクラは核融合向け需要に対応するため、超電導線材の製造能力を約3倍に引き上げる計画です。佐倉事業所に約40億円を投じて設備を増設し、2025年度までに年間1,000キロメートル以上の生産体制を構築します。

さらに、超電導事業全体で60億円規模の投資に加え、最大56億円の追加投資枠も確保しています。フジクラは、2030年代前半までに超電導事業を売上高で3桁億円(100億円以上)の規模に成長させることを目指しています。

核融合商用化の時間軸とAI需要の過熱感

核融合の商用化にはまだ時間が必要

核融合発電の商用化は2030年代後半〜2040年代と見られており、本格的な収益貢献にはまだ時間がかかります。フジクラの超電導事業は現時点では研究開発段階に近く、光ファイバー事業のような大きな利益をすぐに生み出すわけではありません。

ただし、核融合炉の建設が本格化する前の段階から材料供給のポジションを確保しておくことは、長期的な競争優位性を築く上で極めて重要です。フジクラの「先行投資」の判断は、長い目で見れば合理的な戦略といえるでしょう。

AI需要の持続性にも注視

光ファイバー事業の成長を支えるAIデータセンター需要については、一部の投資家から「過熱感」を懸念する声もあります。ただし、生成AIの利用拡大は今後も続くと予想されており、フジクラの技術的優位性と生産能力の増強は、中期的な成長を支える強固な基盤となります。

3000億円投資と超電導線材の二刀流戦略

フジクラは、光ファイバー事業で培った技術力と収益基盤を活かし、核融合向け超電導線材という新たな成長分野に挑戦しています。3,000億円規模の光ファイバー増産投資で足元の需要を確実に取り込みつつ、核融合という長期的な成長テーマにも布石を打つ「二刀流」の戦略は、投資家や業界関係者から大きな注目を集めています。

光ファイバーとエネルギーという、一見異なる2つの分野を「線材技術」という共通の強みでつなぐフジクラの戦略は、日本の素材メーカーの新たな成長モデルとして注目に値します。

参考資料:

山本 涼太

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