NewsHub.JP
NewsHub.JP

ジャングリア沖縄開業、森岡毅氏14年越しの挑戦

by 藤田 七海
URLをコピーしました

森岡毅氏14年越しのジャングリア開業

2025年7月25日、沖縄県北部に新たなテーマパーク「ジャングリア沖縄(JUNGLIA OKINAWA)」が開業しました。プロジェクトを主導したのは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復に導いたマーケターとして知られる森岡毅氏と、彼が率いる株式会社刀です。

この開業は森岡氏にとって14年越しの悲願でした。USJ時代に描いた沖縄テーマパーク構想は一度白紙になり、その失敗から多くの教訓を得て、まったく新しいアプローチで実現にこぎつけたのです。本記事では、ジャングリアの全容と、当初計画が頓挫した経緯から得られた教訓について解説します。

ジャングリア沖縄の全容

コンセプト「Power Vacance!!」

ジャングリア沖縄のコンセプトは「Power Vacance!!(パワーバカンス)」です。沖縄北部のやんばるエリアの大自然を活かし、「本物の興奮と本物の贅沢」を融合させた体験型テーマパークとして設計されています。

敷地面積は東京ドーム約13個分に相当する60ヘクタールで、アトラクション施設22か所、飲食施設15か所、物販店10か所を備えています。事業費は約700億円に上り、沖縄県における過去最大級の民間投資プロジェクトです。

目玉アトラクション

ジャングリアの最大の特徴は、大自然を活用したアトラクション群です。恐竜が生息する森の中をオフロード車で駆け抜ける「ダイナソー サファリ」は、最凶の肉食恐竜T-REXから逃走するスリルが味わえる看板アトラクションです。

360度の大自然パノラマを楽しめる「ホライゾン バルーン」は気球型のアトラクションで、やんばるの絶景を上空から一望できます。ジャングルの上空を飛ぶ鳥のように滑空する「スカイ フェニックス」も高い人気を集めています。

さらに、パーク内にはスパ施設も併設されており、アクティブなアトラクション体験と贅沢なリラクゼーションを1日で楽しめる点が、既存のテーマパークとの差別化ポイントです。

チケット価格と戦略

1Dayチケットは国内在住者向けが大人6930円、子ども4950円に設定されています。一般料金は大人8800円、子ども5940円で、国内在住者向けの優遇価格を設けることで地元やリピーターの獲得を狙っています。

スパのみのチケットや、パーク&スパの1Dayチケット(大人9570円)など、複数のチケット形態を用意しており、多様な楽しみ方を提案しています。

当初計画の頓挫と教訓

USJ時代の沖縄構想

森岡氏が沖縄にテーマパークを構想したのは2011年、USJの執行役員時代にさかのぼります。当時、USJの再建を軌道に乗せた森岡氏は、次なる成長戦略として沖縄北部への新パーク建設を提案しました。

しかし2015年、USJの親会社が米コムキャストに買収されたことで事態は一変します。森岡氏は半年以上にわたって新経営陣を説得し続けましたが、沖縄プロジェクトは白紙に戻されました。その後、森岡氏は2017年にUSJを退社し、株式会社刀を設立しています。

「上から目線」だった反省

当初計画が頓挫した要因は親会社の交代だけではありませんでした。森岡氏自身が後に振り返ったように、USJ在籍時の計画は「結果的に地元の人にとって上から目線に見られていた」という問題を抱えていました。

県外の大企業が一方的に事業を持ち込むという構図は、地元住民や自治体からの共感を得にくい状態でした。この計画について森岡氏は「潰れるべくして潰れた」と厳しい自己評価を下しています。

地域との共生モデルへの転換

ジャングリアでは、この教訓を踏まえて地域との関係づくりを根本から見直しました。刀は沖縄県のブランドアドバイザーに就任し、県の複数の部門とマーケティング連携協定を締結しています。言葉だけでなく行動で地域連携の姿勢を示すことで、「上から目線」という過去の問題を払拭する取り組みを重ねました。

また、パーク建設にあたっては地元の雇用創出を重視し、やんばる地域の経済活性化に直接寄与する形を目指しています。テーマパーク単体の成功ではなく、地域全体の「ザル経済」(観光収入が地域外に流出する構造)を変える仕組みづくりに注力しています。

那覇空港2時間と700億円回収の課題

ジャングリアの開業は大きな注目を集めていますが、課題もあります。沖縄北部は那覇空港から車で約2時間の距離にあり、アクセスの改善が中長期的な集客の鍵を握ります。

また、刀がこれまで手がけた西武園ゆうえんちやイマーシブ・フォート東京の実績は賛否が分かれており、700億円の投資を回収できるかどうかは今後の集客状況にかかっています。

森岡氏自身も開業時に「我々はまだ何も達成していない」と述べており、テーマパークの真価はオープン後の継続的な運営で問われることを強く意識しています。沖縄の観光産業に新たなモデルを提示できるか、今後の展開が注目されます。

地域共生とPower Vacanceの成否

ジャングリア沖縄は、森岡毅氏の14年越しの構想がようやく形になったプロジェクトです。USJ時代の「上から目線」の失敗を教訓に、地域との共生を軸とした新たなテーマパーク運営モデルを打ち出しました。

大自然を活かした独自のアトラクション群とスパを組み合わせた「Power Vacance!!」というコンセプトは、既存のテーマパークにはない価値を提案しています。700億円の投資に見合う成果を出せるかどうか、マーケティングの天才と呼ばれる森岡氏の真価が問われる段階に入りました。

参考資料:

藤田 七海

ブランド・消費文化・ライフスタイル

ブランド戦略・消費文化・ライフスタイルを幅広く取材。歴史や科学にも造詣が深く、多角的な視点で社会の「今」を切り取る。

関連記事

ChatGPT広告上陸前夜で変わる日本の販促戦略と内製化の現実

米国で始まったChatGPT広告の試験導入は、日本の販促現場にも検索広告以来の転換を迫る。OpenAI、Google、Metaの動きと広告内製化、SaaS課金の変化、ブランド毀損リスクを整理し、代理店との役割分担や消費者の信頼を守るデータ基盤、効果検証、人材育成まで含めた運用体制の具体策を読み解く。

新型CX-5が握るマツダ国内販売再建と若年顧客開拓の勝算検証

9年ぶり刷新のCX-5は、国内で存在感低下に悩むマツダの顧客接点を広げる試金石です。大型化やGoogle搭載、ハイブリッド投入予定の強みと、低価格小型車縮小やRAV4電動化競争が迫る販売再建の条件を、北米販売データと軽自動車優位の国内事情から、新規顧客開拓の壁とブランド再生の道筋を多角的に読み解く。

景気後退でも広告削減は逆効果 逆行型マーケティング成功の見極め

不況期に広告費や研究開発費を一律削減すると、回復局面で競争力を失いやすい。154人調査、1万超企業年データ、4,700社分析、106カテゴリー研究に、IMFの成長鈍化見通しと現在の予算圧力も重ね、逆行型マーケティングが効く条件、効かない局面、取締役会が見るべき財務余力と市場シェアの勘所を丁寧に解説。

最新ニュース

EV失速論を覆す低価格車競争、世界再編で問われる日本勢の勝機

IEAは2025年の世界EV販売が2000万台を超え、4台に1台が電動車だったと報告しました。米国の税額控除終了だけで「失速」と見るのは危うい状況です。中国、欧州、東南アジアで進む低価格EV競争と、電池コストや現地生産の差、ハイブリッドで稼ぐ日本勢が急ぐべき開発・調達戦略と収益力への影響を読み解く。

秋田巨大AIデータセンター構想、再エネとUAE資金の地方現実解

秋田市のAIデータセンター構想は、300〜500MW級の電力需要と50ヘクタール用地を前提に、UAE系資金や国内投融資を呼び込む地域産業戦略です。再エネ工業団地、GPU液冷化、国の地方分散政策を重ね、建設費2兆円規模とされる大型計画が秋田の風力資源を競争力へ変え、地域雇用と新産業を生む条件を読み解く。

消費税減税「実質ゼロ」案の財源と家計・外食・地方財政影響を総点検

飲食料品の消費税を1%に下げ、1%分を所得連動給付で補う「実質ゼロ」案が動き出した。年5兆円級の財源、地方税収1.6兆円減、家計への年8.8万円軽減、外食・テイクアウトの税率差、レジ改修、給付付き税額控除の実務まで、物価高対策としての限界と自治体予算や中小店に残す負担を含め、制度設計の成否を読み解く。

CSRD域外基準案、日本企業に迫る開示統治とサプライチェーン改革

EUのCSRD域外基準案ESRS-40aは、日本企業を含む約1200社に2029年からサステナビリティ報告を迫る。適用条件、影響重視の開示、SSBJとの重複、ISSB報告の参照可能性、取締役会が備えるべき統制課題を詳しく整理。保証、子会社免除、法務部門とサプライチェーンデータまで実務リスクを読み解く。

中国製ルーターのバックドア疑惑、世界10万台に広がる供給網リスク

VulnCheckが中国Zbtlink製ルーターの遠隔操作機能を指摘し、同社は対象機種の販売とファームウェア配布を停止した。20機種超、世界10万台規模とされる疑惑は、家庭用機器の問題にとどまらず、米中安保、OEM供給網、企業調達を揺さぶる。日本企業が今すぐ点検すべき検知と防衛の具体策まで読み解く。