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鳥飼茜が語る「面倒な自分」を肯定する生き方

by 渡辺 由紀
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はじめに

「面倒くさくて何が悪い」――漫画家・鳥飼茜さんのこの言葉が、多くの女性の心に響いています。愛想笑いをやめ、男性からの評価を手放したとき、心が晴れやかになったという鳥飼さんのメッセージは、日々「空気を読む」ことに疲れた女性たちにとって大きな励ましです。

鳥飼さんは『先生の白い嘘』『地獄のガールフレンド』など、女性が直面するジェンダーの問題を鋭く描いてきた漫画家です。2026年2月には新刊エッセイ『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』を発表し、自身の経験をもとに「男性文化に認められたい」という呪縛からの脱却を語っています。

この記事では、鳥飼茜さんの作品やメッセージを手がかりに、女性が「面倒な自分」を肯定し、自分らしく生きるためのヒントを探ります。

鳥飼茜とは何者か――作品が映し出す女性のリアル

ジェンダーの痛みを描き続ける漫画家

鳥飼茜さんは1981年大阪府生まれの漫画家です。2004年にデビューし、以来一貫して女性の生きづらさやジェンダーの問題をテーマにした作品を発表してきました。

代表作『先生の白い嘘』は、高校教師の女性を主人公に、性暴力と男女間の「性の不平等」を正面から描いた作品です。鳥飼さん自身は「フェミニスト代表のように扱われがちだが、そういう意識はない」と語り、「論理としてのフェミニズムよりも、恐怖にさらされる可能性のある世界を生きていることが単純に嫌で気になる」と述べています。この姿勢こそ、鳥飼作品が多くの読者に届く理由です。

女性同士の連帯を描いた『地獄のガールフレンド』

2014年から連載された『地獄のガールフレンド』は、ルームシェアを始めた3人の女性の物語です。タイトルはアメリカ初の女性国務長官による「女性同士で協力し合おう」というスピーチに着想を得たものです。31歳の離婚シングルマザー、28歳の真面目な会社員、36歳のモテる女性という、異なる立場の3人が「友達がいない」という共通点から始まる関係を描きます。

この作品では、女性同士が比較し合い、嫉妬し、それでも支え合うリアルな関係性が描かれています。「面倒くさい」存在であっても、そのまま受け入れ合える関係こそが本当の連帯だというメッセージが込められています。

「男性文化に認められたい」からの脱却

エッセイ『今世紀最大の理不尽』が描く葛藤

2026年2月に文藝春秋から刊行されたエッセイ『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』は、鳥飼さん自身の2度の結婚と離婚、そして3度目の結婚を前にした体験をもとに書かれています。改姓のたびに発生する煩雑な手続きや、選択的夫婦別姓が実現しない日本の制度の理不尽さを、実感を込めて綴っています。

このエッセイで鳥飼さんは「男性文化に認められたい」という自身の内面にあった欲望と向き合い、それを手放す過程を描きました。「この本を書いて自分に面目が立った」という言葉からは、書くことを通じて自己解放を果たした清々しさが伝わってきます。

「同世代の男女は同じ世界を見ている」という幻想

鳥飼さんは同世代の男女が同じ屋根の下で暮らすとき、そこに無意識の権力構造が生まれることを指摘しています。多くの男性は女性の権利に関する話題を明確に嫌い、「謝れって言いたいの?」と防御的な反応を示すといいます。

この指摘は、男女が「対等である」という前提そのものを疑う視点です。同じ時代に生き、同じニュースを見ていても、男女が見ている世界は根本的に異なるという認識が、鳥飼作品の一貫した基盤となっています。

愛想笑いをやめることの意味

「空気を読む」ことに疲れた女性たち

日本社会では、特に女性に対して「場の調和を保つこと」が強く求められます。心理学的にも、女性は子どもの頃から「個性」よりも「同調」を期待される傾向があり、その結果として愛想笑いが習慣化しやすいとされています。

愛想笑いは人間関係の潤滑油として機能する一方、続けるうちに「本当の自分の感情」が見えなくなるリスクがあります。相手の機嫌を取るために自分の感情を押し殺す行為は、長期的には自己肯定感の低下につながります。

「評価されること」を手放す勇気

鳥飼さんが語る「男性から評価されることを手放したとき、信じられないほど心が晴れやかになった」という実感は、多くの女性が共感できるものです。他者からの評価を行動の基準にしている限り、自分の本当の望みや感情にたどり着くことはできません。

心理学では、他者評価への依存から脱却するには「他人の思考や行動は変えることができない」という認識を持つことが重要とされています。変えられるのは自分自身の在り方だけです。「面倒くさい自分」を否定するのではなく、それこそが自分の本質だと受け入れることが、自己受容の第一歩です。

注意点・展望

「面倒くさい」を武器にする際の注意

「面倒くさくて何が悪い」という言葉は力強いメッセージですが、これは「他者への配慮を一切やめよう」という意味ではありません。鳥飼さんが伝えているのは、他者の評価のためだけに自分を曲げることをやめよう、という提案です。自分の感情や考えを大切にしつつ、相手も尊重するバランスが重要です。

社会的な変化の兆し

選択的夫婦別姓の議論が活発化し、職場でのジェンダー平等への意識も高まる中、「自分らしさ」を追求する女性の声はますます大きくなっています。鳥飼さんのような表現者が自身の体験を言語化し、作品として世に問うことで、社会全体の意識変革が少しずつ進んでいます。

漫画やエッセイという表現を通じた問題提起は、難しい議論を身近なものにする力があります。鳥飼さんが作品で描いてきた「日常の中の小さな喪失」への気づきは、今後も多くの読者に影響を与え続けるでしょう。

まとめ

鳥飼茜さんの「面倒くさくて何が悪い」というメッセージは、愛想笑いや他者評価に縛られた生き方からの解放を示しています。彼女の作品やエッセイは、女性がジェンダーの構造的な問題に気づき、自分自身の声を取り戻すための道しるべです。

大切なのは、「面倒な自分」を否定せず、そのままの自分に価値があると信じることです。鳥飼さんの著書『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』は、その実践の記録として、自分らしい生き方を模索するすべての人に読んでほしい一冊です。

参考資料:

渡辺 由紀

雇用・人材戦略・キャリア

雇用・人材戦略・キャリアを専門に取材。高専人材の争奪戦から中途採用市場の変化まで、「働く」を取り巻く構造変化を解き明かす。

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