原油の中東依存度が高い国はどこか?各国比較で見る実態
はじめに
2026年3月、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、各国の原油輸入における中東依存度が改めて注目されています。世界の原油や液化天然ガス(LNG)輸送の約2割が通過するこの海峡が閉ざされたことで、エネルギー安全保障の脆弱性が浮き彫りになりました。
原油の中東依存度は国によって大きく異なります。日本は約95%と主要国の中でも突出して高い水準にある一方、ロシア産原油の調達を増やしたインドや、調達先の多角化を進めた中国は相対的に低い依存度を維持しています。本記事では、主要国の中東依存度を比較し、それぞれのリスクと対策を解説します。
日本の中東依存度は約95%で世界最高水準
石油危機前を超える依存レベル
日本の原油輸入における中東依存度は、2022年度に過去最高の95.2%を記録しました。2023年度はやや低下して94.7%となりましたが、依然として極めて高い水準にあります。この数値は1973年の第一次石油危機当時の77.5%を大きく上回っています。
日本の原油輸入先の内訳を見ると、2023年度時点でアラブ首長国連邦(UAE)が40.9%、サウジアラビアが39.4%と、この2カ国だけで約8割を占めています。2024年、2025年と連続してUAEが最大の原油調達先となっています。
依存度上昇の背景
中東依存度は1987年度に67.9%まで低下した時期がありました。しかし、中国や東南アジア諸国での原油需要の増加に伴い、これらの地域からの調達が困難になり、中東依存度は再び上昇しました。2009年度には89.5%に達し、その後もロシアからの輸入減少を背景に上昇傾向が続いています。
日本はエネルギー自給率が約12%と主要先進国の中で最低水準にあり、一次エネルギー供給の約35%を石油に依存しています。この構造的な脆弱性が、中東依存度の高さをさらに深刻な問題にしています。
各国の中東依存度を比較する
韓国:約68%で日本に次ぐ高依存度
韓国の原油輸入における中東依存度は約68%です。日本ほどではないものの、依然として高い水準にあります。韓国は石油備蓄を208日分保有しており、短期的な供給途絶には一定の対応力を持っています。しかし、製造業が経済の柱である韓国にとって、原油価格の高騰は産業競争力に直結する深刻な問題です。
インド:約53%、ロシア産原油で依存度低下
インドの中東依存度は約53%と、日本や韓国と比べて大幅に低い水準です。これは、2022年以降にロシア産原油の調達を大幅に増やしたことが主因です。2024年にはインドの原油輸入に占めるロシア産のシェアが37%に達しました。
ただし、インドの石油備蓄は74日分と他の主要国に比べて少なく、長期的な供給途絶への耐性には課題があります。また、LNG輸入の半分以上がペルシャ湾岸諸国に依存しており、ホルムズ海峡封鎖の影響は原油以外にも及びます。
中国:約15%、調達先の多角化が進展
中国のホルムズ海峡経由の原油依存度は約15%と、主要国の中で最も低い水準です。これは、ロシア、アフリカ、中南米など多様な地域から原油を調達していることに加え、国内生産も一定の規模を維持しているためです。中国は石油備蓄を約200日分保有しており、供給途絶リスクへの備えも整っています。
ホルムズ海峡封鎖が突きつける現実
封鎖の影響と各国の対応
2026年3月にイラン革命防衛隊がホルムズ海峡の実質的な封鎖を表明したことで、ブレント原油は1バレル100ドルを突破しました。日本では邦船3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)が通航を停止し、ペルシャ湾内には日本関係船舶44隻が残されたままとなっています。
国際エネルギー機関(IEA)は過去最大となる4億バレルの石油備蓄の協調放出で合意しましたが、この量は世界消費のわずか4日分に過ぎません。日本は国内備蓄254日分のうち2割の放出を決定しましたが、封鎖が長期化すれば追加的な対応が不可避です。
迂回ルートの模索
ホルムズ海峡の封鎖を受け、原油輸送の現場では紅海経由の迂回ルートの利用が急速に広がっています。紅海発の原油輸送は前年比21倍に増加したとの報告もあります。しかし、迂回による輸送日数の増加と運賃の高騰は、エネルギーコストの上昇を通じて消費者に転嫁されることになります。
注意点・展望
日本の中東依存度が約95%という数字は、単なる統計上の問題ではなく、国民生活に直結するリスクです。ガソリン価格の上昇は物流コストを押し上げ、食料品を含む幅広い商品の値上がりにつながります。
今後の課題として、調達先の多角化が急務です。インドのようにロシア産原油の活用を検討する選択肢もありますが、地政学的なリスクを別の地域に移すだけという指摘もあります。再生可能エネルギーの導入拡大や省エネルギーの推進など、中長期的なエネルギー構造の転換が求められています。
まとめ
原油輸入の中東依存度は、日本が約95%と突出して高く、韓国が約68%、インドが約53%、中国が約15%と続きます。日本の高い依存度は、エネルギー自給率の低さと調達先の偏りという構造的問題に起因しています。
ホルムズ海峡の封鎖という現実に直面する今、エネルギー安全保障の再構築は待ったなしの課題です。短期的には備蓄の戦略的活用と迂回ルートの確保、中長期的には再生可能エネルギーへの転換と調達先の多角化が求められます。
参考資料:
関連記事
ガソリン急騰と備蓄放出 第3次石油危機は回避できるか
ホルムズ海峡の事実上封鎖でガソリン価格が急騰し、政府は備蓄放出と補助金再開に踏み切りました。日本のエネルギー安全保障の脆弱性と、危機回避に向けた対策の全容を解説します。
トランプ氏がイラン発電所攻撃を5日延期した背景と今後
トランプ大統領がイランの発電所攻撃を5日間延期した背景を解説。ホルムズ海峡封鎖の影響、米イラン間の水面下の交渉、原油市場への波及、そして停戦に向けた展望を多角的に分析します。
ホルムズ海峡をイランが実質支配、原油船の行方を追う
米イスラエルのイラン攻撃後、事実上封鎖されたホルムズ海峡で原油タンカーが選別通過している実態を、船舶追跡データから読み解きます。中国・インド向け輸送の全貌と日本への影響を解説します。
上流資源の争奪戦が映すエネルギー安保の新局面
ホルムズ海峡封鎖や中国のレアアース規制強化など、地政学リスクが上流資源の重要性を浮き彫りにしています。日本のエネルギー安全保障の課題と対応策を解説します。
原油200ドルの現実味、IEA史上最大の備蓄放出でも足りない理由
ホルムズ海峡の事実上封鎖を受け、IEAが過去最大の4億バレルの石油備蓄放出で合意。しかし世界消費わずか4日分に過ぎず、原油200ドルの警告も。エネルギー危機の実態を解説します。
最新ニュース
AI活用でビジネスはどう変わる 先行企業7社の実践と共通項を読む
LIFULL、イオン、ミスミ、Michelin、藤田医科大学などの事例から、AI導入が業務効率化で終わらず、顧客体験、現場標準化、新たな収益機会へ広がる条件を整理します。
AIは仕事を奪うのか 日本の解雇規制と労働移動政策の論点を検証
AIが雇用を奪うという見方を、日本の解雇ルール、人手不足、OECDやWEFの調査、企業の人材再配置やリスキリング政策の現状から検証し、必要な制度改革を冷静に整理します。
発達障害グレーゾーンはなぜ使いにくいのか 診断基準と支援策を整理
発達障害の「グレーゾーン」が医学用語として扱いにくい理由を、診断基準の線引き、学校現場での見え方、診断がなくても使える支援策、二次障害を防ぐ視点とあわせて丁寧に整理します。
若手への共感過剰が招く指示待ち部下と管理職疲弊の構造を読み解く
若手育成で求められる共感が、なぜ指示待ちと中間管理職の疲弊を招くのか。心理的安全性、自律性支援、最新調査をもとに、寄り添いと任せることの適切な線引きと実務上の打ち手を解説します。
フロリダ補選で民主逆転、トランプ地盤に走る異変の背景を詳解
フロリダ州下院87区の補選で民主党が共和党議席を奪還した理由を、公式開票結果、前回選挙との比較、郵便投票の動き、トランプ氏支持率の低下から読み解きます。