INPEXとJAPEXが国内ガス田試掘へ 自給率2%の現実と挑戦
自給率2%と国内ガス田再評価
日本の天然ガス自給率はわずか約2%。残りの約98%を海外からの輸入に頼っています。2026年2月にはイランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖が発生し、エネルギー供給の脆弱性が改めて浮き彫りになりました。
こうした中、国内石油開発の二大企業であるINPEX(国際石油開発帝石)とJAPEX(石油資源開発)が、国内ガス田の新規開発・試掘に相次いで乗り出しています。自給率2%という数字は極めて小さく見えますが、有事の際の「最後の生命線」として、国内資源の戦略的な価値が再評価されています。この記事では、両社の取り組みと日本のエネルギー安全保障の現状を解説します。
INPEXとJAPEXの国内ガス田開発計画
JAPEXの北海道日高沖試掘プロジェクト
JAPEXは2026年3月から5月にかけて、北海道日高地域の沖合約50kmの海域で試掘調査を実施します。水深約1,070mの地点で、2019年に実施した基礎試錐「日高トラフ」で発見されたガス層の賦存状況を詳しく確認するのが目的です。
このプロジェクトは、JAPEXにとって国内主導の海洋ガス田開発としては約18年ぶりの取り組みとなります。2019年の調査では、比較的浅い地層にバイオジェニックガス(微生物起源のガス)の存在が確認されており、今回の試掘では生産テストを行い、将来的な開発可能性を見極めます。
INPEXの新潟・南長岡ガス田近接地での探鉱
一方、INPEXは国内最大級のガス田である新潟県の南長岡ガス田の近接地で新たな探鉱を進めています。南長岡ガス田は1984年から生産を続けており、地下4,000〜5,000mの深部火山岩中に天然ガスが含まれる大型ガス田です。
越路原プラントでは日量420万Nm³のガス処理能力を持ち、24時間365日のノンストップ生産体制を敷いています。INPEXはこの実績を活かし、周辺地域での新たなガス田開発を目指しています。商業化できる埋蔵量が確認されれば、既存のパイプラインネットワークを活用した効率的な供給が可能になる見込みです。
なぜ今、国内資源開発なのか
ホルムズ海峡危機が突きつけた現実
2026年2月28日、米国とイスラエルによるイランへの攻撃を受け、イランがホルムズ海峡を事実上封鎖しました。日本の原油輸入の約93%は中東に依存しており、LNG(液化天然ガス)についてもホルムズ海峡経由の依存度は6.3%に達しています。
カタールはLNG輸出のほぼ全量をホルムズ海峡に依存しているため、航路の遮断はアジアの天然ガス供給に直接的な打撃を与えます。エネルギー価格の急騰は日本のインフレを加速させ、製造業のサプライチェーンにも深刻な影響が及んでいます。
自給率2%でも「生命線」になる理由
日本の天然ガス自給率は約2%にすぎません。しかし、この国内生産分は輸入途絶のリスクとは無縁であり、有事の際にも確実に供給できる「最後の砦」としての価値を持ちます。
INPEXは国内天然ガスの年間供給量を現在の約22億m³から、2040年までに30億m³以上へ引き上げる目標を掲げています。南長岡ガス田から供給される天然ガスは、パイプラインを通じて沿線の都市ガス事業者や工業用需要家に直接届けられており、海上輸送のリスクを受けない安定供給源として機能しています。
エネルギー基本計画と国内資源の位置づけ
第7次エネルギー基本計画の方向性
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、特定の電源や燃料源に過度に依存しない「バランスのとれた電源構成」が目指されています。LNG火力は脱炭素化への移行手段として引き続き重要な役割を担うとされています。
国内資源の開発促進に加え、メタンハイドレートなど次世代海洋資源の研究開発も進められています。日本近海には相当量のメタンハイドレートが存在するとされ、将来的な国産エネルギー源として期待されています。
経済安全保障推進法との連動
天然ガスは経済安全保障推進法に基づき「特定重要物資」に指定されています。これにより、戦略的な余剰LNGの確保・運用が進められるとともに、有事の際にはLNG事業者間での融通の枠組みが整備されています。国内ガス田の開発は、こうした法的枠組みとも連動した安全保障上の取り組みです。
深海試掘コストと保険としての国内資源
国内資源開発には楽観できない課題もあります。日本の地質条件は複雑で、採掘コストが海外と比べて高くなりがちです。JAPEXの日高沖プロジェクトも水深1,000m超の深海域での作業となり、技術的なハードルは低くありません。
また、国内生産だけで輸入依存を大幅に減らすことは現実的ではありません。日本の天然ガス消費量に対して国内生産が占める割合は、開発が成功しても数パーセントにとどまる見通しです。重要なのは、調達先の多角化や備蓄の充実と併せて、国内資源を「保険」として維持・拡大していく戦略的な視点です。
今後は、INPEXとJAPEXによる試掘結果が注目されます。商業的に有望な埋蔵量が確認されれば、国内天然ガス産業にとって大きな転機となるでしょう。特にJAPEXの北海道日高沖プロジェクトは、18年ぶりの国内海洋ガス田開発として、日本のエネルギー自給に向けた象徴的な一歩となります。
ホルムズ危機後の資源小国日本の一歩
INPEXとJAPEXが国内ガス田の新規開発・試掘に乗り出した背景には、ホルムズ海峡危機に象徴される国際情勢の不安定化があります。天然ガス自給率2%という数字は小さく見えますが、輸入途絶リスクのない国内資源は有事の「生命線」です。
日本のエネルギー安全保障を強化するには、調達先の多角化、備蓄の拡充、そして国内資源の開発という複合的なアプローチが求められます。エネルギーの安定供給は産業の根幹であり、今回の両社の取り組みは、資源小国・日本にとって重要な一歩といえるでしょう。
参考資料:
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