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過去最大122兆円予算成立と高市政権の積極財政持続性を読み解く

by 田中 健司
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はじめに

2026年度予算が4月7日に成立し、一般会計は122兆3092億円と過去最大になりました。予算成立が4月にずれ込んだ点も異例ですが、より重要なのは、歳出の膨張と金利上昇局面が同時進行していることです。とりわけ国債費は初めて30兆円を超え、財政の重心が政策経費だけでなく借金の元利払いにも大きく引っ張られる局面に入りました。

高市政権はこれを「責任ある積極財政」と位置づけています。成長投資や安全保障、家計支援を積み増しながら、内閣府試算では2026年度に一般会計ベースで28年ぶりのPB黒字化を見込んでいます。ただ、OECDは2026年の財政スタンスを一時的な拡張とみなし、中期の財政再建路線が必要だと警告しています。本記事では、成立した予算の中身と、積極財政が本当に持続可能なのかを整理します。

過去最大予算の構図

成立の経緯と過去最大の意味

ロイターによると、2026年度予算は4月7日の参院本会議で可決・成立しました。一般会計総額は122兆3092億円で、2025年度当初予算をおよそ7兆円上回ります。衆院通過は3月13日でしたが、参院では少数与党の事情や集中審議を巡る調整が響き、年度内成立は見送られました。

この数字の重さは、単に「過去最大」という見出しだけでは測れません。2020年代の日本財政は、社会保障、防衛、物価高対策、産業支援を同時に抱える構造になっています。景気を下支えするための歳出と、中長期の供給力を高める投資的歳出が混在しているため、短期景気対策なのか、成長戦略なのかが見えにくくなりやすい点が特徴です。

一方で、予算成立が遅れても憲法上は衆院の優越があるため、4月11日には自然成立する見通しでした。つまり今回は、制度上の危機というより、政治日程と少数与党運営の難しさが表面化した案件とみるのが実態に近いです。高市政権にとっては、政策内容そのものと同じくらい、今後の予算執行と補正編成で安定多数をどう確保するかが問われます。

国債費30兆円超が示す金利局面の転換

今回の予算で市場が最も注目したのは国債費です。各種報道では31兆円規模とされ、初めて30兆円台に乗りました。背景には、日銀が金融政策正常化を進め、2026年3月時点で無担保コール翌日物を0.75%程度で推移するよう促していることがあります。ゼロ金利前提で組み立てられてきた財政運営は、ここで明確に転換点を迎えました。

国債費の増加は、新しい政策を打たなくても財政の自由度を削ります。社会保障や防衛のように政治的に削りにくい項目が増える中で、金利上昇が続けば、追加の成長投資を行う余地は細っていきます。財政が将来世代への投資よりも既発債務の処理に資源を取られる構図が強まれば、「積極財政」の中身も守りから攻めへ変えにくくなります。

ここで重要なのは、国債費の増加が景気悪化時だけの一時要因ではない点です。内閣府の中長期試算でも、成長移行ケースですら金利上昇は公債等残高対GDP比の押し上げ要因とされています。成長率が金利を上回る前提が崩れれば、財政の景色は一気に厳しくなります。

「責任ある積極財政」の実像

政府試算が描く強気シナリオ

内閣府の2026年1月試算では、成長移行ケースで実質成長率が1%を安定的に上回り、名目成長率は中長期的に3%程度と想定されています。その前提の下で、2026年度は一般会計ベースで28年ぶりのPB黒字化を達成し、国・地方のPBも2001年度以降で最も改善した形になると整理されています。これが高市政権の言う「責任ある積極財政」の土台です。

要するに政府のロジックは、単なる歳出拡大ではなく、成長率を引き上げながら債務比率を安定させるというものです。成長投資、賃上げ、供給力強化が回り始めれば、税収増によって財政規律も守れるという考え方です。この説明自体には整合性があります。問題は、そのシナリオがかなり条件付きだということです。

試算の注記では、2027年度以降の教育無償化や税率措置について安定財源の確保を想定しているほか、具体化していない追加歳出は織り込んでいません。言い換えれば、今後の政治判断で歳出が積み上がれば、足元の「改善」は簡単に薄れます。PB黒字化の見通しは、財政の自動安定化を意味するものではありません。

OECDとIMFが示す慎重な視線

外部機関の見方は、政府より慎重です。OECDは2025年12月公表の見通しで、日本の実質成長率は2026年から2027年にかけて年0.9%に鈍化すると予測しました。あわせて、2026年の財政スタンスは新たな景気刺激策や補正予算を反映した一時的な緩和であり、大規模ショック時に限定すべきだとしています。さらに、中期の財政健全化ルートを具体的な歳入・歳出措置とともに設計する必要があると明示しました。

IMFの日本ページでも、直近の対日4条協議は2026年3月27日に行われています。個別の数値評価は別途報告書を確認する必要がありますが、少なくとも日本財政が引き続き国際機関の重点監視対象であることは変わっていません。政府が成長で解決できるとみる局面ほど、外部機関は制度的な再建策の有無を見ます。

この温度差は重要です。政府は「成長すれば大丈夫」と説明しやすい一方、市場や国際機関は「成長が想定ほど出なかった場合の備え」を重視します。いま必要なのは、積極財政か緊縮かという二者択一ではなく、景気下支えと将来の財政ルールを同時に示す設計です。

注意点・展望

今回の予算を読む際の注意点は三つあります。第一に、PB黒字化見通しをそのまま財政健全化の達成と受け取らないことです。内閣府試算は成長率や財源確保に一定の前提を置いています。第二に、国債費30兆円超は単年度の異変ではなく、金利のある世界への移行を映す構造変化だという点です。第三に、少数与党下では補正予算や税制改正のたびに政策の純度が下がりやすく、歳出の積み上がりが起きやすいことです。

今後の焦点は、2026年度内の補正編成の有無と、中期財政フレームを本当に示せるかにあります。成長投資を続けるなら、何を将来の税収増につなげるのかを明確にしなければなりません。逆に、それが曖昧なまま給付や補助金だけが増えれば、「責任ある積極財政」は言葉先行と見なされやすくなります。

まとめ

2026年度予算の成立は、高市政権が積極財政路線を本格始動させた節目でした。一般会計122兆円超という規模自体より重いのは、国債費が30兆円を超えたこと、そして成長シナリオが崩れた際の逃げ道が細いことです。政府はPB黒字化を前面に出しますが、外部機関は中期の財政再建策を求めています。

読者が今後注目すべきポイントは三つです。賃上げと投資が実際に成長率を押し上げるのか、補正予算が常態化しないか、そして金利上昇下で国債費がどこまで膨らむかです。今回の予算は「景気を支える予算」であると同時に、「金利のある時代の財政の限界」を映す予算でもあります。

参考資料:

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