NewsHub.JP
NewsHub.JP

大塚商会が特需後も増収増益を掲げる理由とは

by 鈴木 麻衣子
URLをコピーしました

Windows 10特需後も増収増益を狙う大塚商会

大塚商会の2025年12月期決算が発表され、売上高・利益ともに3期連続で過去最高を記録しました。Windows 10のサポート終了に伴うPC更新特需が大きな追い風となり、連結売上高は前年同期比19.4%増の1兆3,227億円に達しています。

しかし、この特需は2025年10月のWindows 10サポート終了とともに一巡することが確実です。多くの市場関係者が「反動減」を見込む中、大塚裕司社長は「落ちて当たり前」とは考えず、引き続き増収増益を目指す姿勢を示しています。本記事では、大塚商会の好調な業績の背景と、特需後の成長戦略について解説します。

3期連続過去最高を記録した2025年12月期決算

売上高1兆3,000億円超えの躍進

大塚商会の2025年12月期決算は、すべての利益指標で過去最高を更新する好決算となりました。連結売上高は1兆3,227億91百万円で前年同期比19.4%増、営業利益は899億43百万円で同21.0%増、経常利益は915億25百万円で同20.5%増、当期純利益は643億3百万円で同20.2%増を達成しています。

特に成長を牽引したのがシステムインテグレーション事業です。同事業の売上高は9,029億15百万円と前年同期比24.1%増を記録しました。パソコンの更新需要を的確に捉えたことに加え、パッケージソフトの販売も高い伸びを示しています。

Windows 10サポート終了がもたらした特需

この好業績の最大の要因は、2025年10月のWindows 10サポート終了に伴うPC更新需要です。Microsoftは2025年10月14日をもってWindows 10の延長サポートを終了すると発表しており、セキュリティ更新プログラムの提供が打ち切られました。

企業にとっては、サポート切れのOSを使い続けることはセキュリティリスクを高めるため、Windows 11搭載PCへの買い替えが急務となりました。大塚商会は全国に展開する営業ネットワークを活かし、中小企業を中心にこの更新需要を幅広く取り込むことに成功しています。

さらに、GIGAスクール構想に基づく教育機関向けのクライアント端末販売も追い風となりました。文部科学省が推進する1人1台端末の整備が進む中、端末の更新時期を迎えた学校が多く、教育分野でも大きな売上を獲得しました。

特需後を見据えた成長戦略

「落ちて当たり前」としない経営姿勢

PC更新特需は一過性のものであり、2026年度には反動減が避けられないとの見方が市場では一般的です。しかし大塚裕司社長は、特需後の減収を「当然」とは捉えず、引き続き増収増益を目指す方針を掲げています。

大塚社長は「上を見るのが社長の仕事」という信念のもと、特需に依存しない持続的な成長基盤の構築に取り組んでいます。年平均10%程度の成長を維持しながら、顧客に真に役立つサービスを開発し続ける方針です。

AIとセキュリティを軸にした新たな成長

2026年のスローガンとして「お客様に寄り添い、AIとセキュリティでお客様と共に成長する」を掲げています。大塚商会はAIを特別な技術としてではなく、かつての日本語入力ソフトのように「当たり前のツール」として普及させていく戦略を描いています。

具体的には、オンプレミスや国内データセンターといったクローズドな環境でのAI運用を整備し、セキュリティと安全性を担保した形での導入提案を進めています。2025年の実績では、AIによる受注金額が25億9,000万円に達し、利用部門での受注金額シェアは5.2%に上昇しました。AI関連の受注件数は全体の38.0%にまで拡大しており、着実に浸透が進んでいます。

DX支援の深化と「まるごと提案」

大塚商会は単なるハードウェア販売にとどまらず、DX支援を通じた顧客の業務変革を成長の柱に据えています。「実践ソリューションフェア2026」では「AIで拡がる!まるごとDX」をテーマに掲げ、AIエージェントがプロセスを自律的に支援する未来像を提示しました。

顧客の困りごとに対して、ハードウェアからソフトウェア、クラウドサービスまでを一括で提案できる「まるごと提案」の強みを前面に打ち出す戦略です。これにより、PC販売だけに依存しない収益構造への転換を加速させています。

2026年度PC反動減とAI需要取り込みの焦点

大塚商会の成長戦略には注目すべき点がある一方で、いくつかの課題も存在します。まず、2026年度のPC販売が前年からどの程度落ち込むかは不透明です。特需の規模が大きかっただけに、反動も相応になる可能性があります。

ただし、企業のIT投資全体は底堅い状況が続いています。サイバーセキュリティへの関心の高まりやAI活用ニーズの拡大など、PC更新以外の需要も増加傾向にあります。大塚商会がこうした新たなニーズをどれだけ取り込めるかが、特需後の業績を左右するでしょう。

また、創業者一族による経営という大塚商会の特徴は、長期的な視点での経営判断を可能にしている面があります。短期的な業績変動に一喜一憂せず、顧客基盤の拡大とサービスの高度化に注力できる体制は、同社の強みといえます。

1兆3,227億円達成後のAI・DX成長戦略

大塚商会は2025年12月期に売上高1兆3,227億円、3期連続の過去最高更新という圧倒的な業績を達成しました。Windows 10サポート終了による特需が大きく貢献したことは間違いありませんが、大塚裕司社長はその先を見据えています。

AIとセキュリティを軸にした新たな価値提供、DX支援の深化、そして「まるごと提案」による顧客との長期的な関係構築が、特需後の持続的成長の鍵となるでしょう。IT投資のトレンドが変化する中で、大塚商会がどのような成長軌道を描くのか、今後の動向に注目です。

参考資料:

鈴
鈴木 麻衣子

企業経営・コーポレートガバナンス

企業経営・コーポレートガバナンスを専門に取材。経営戦略の成功事例から不正会計の構造的問題まで、企業の「あり方」を鋭く問う。

関連記事

中小企業が生成AIで価格戦略を磨き自社の物語を利益に変える実践法

生成AIは価格表を自動で作る道具ではなく、顧客価値、競合、原価、自社の物語を結び直す経営参謀です。帝国データバンク調査で企業活用が34.5%に広がる中、中小企業が価値ベース価格を使い、価格仮説、検証、営業現場への落とし込み、情報漏洩や誤回答を防ぐ統制、データ基盤の整え方までを含む実務手順を具体的に解説。

AI暴走とサイバー攻撃を防ぐ企業の安全設計と監視運用実務対策

生成AIとエージェントAIの普及で、プロンプト注入、データ漏洩、脆弱性悪用の速度が経営リスクに直結しています。NIST、CISA、NCSC、OWASPなどの最新ガイドと2026年の侵害統計を基に、企業が今すぐ整えるAI棚卸し、権限管理、サンドボックス、監視、事故対応、取締役会への報告体制を解説します。

ChatGPT広告日本上陸で変わる企業マーケティング戦略の常識

OpenAIのChatGPT広告が日本で始まり、FreeとGoの会話下に広告が表示される。電通・博報堂・サイバーエージェントの動き、広告費8兆円時代のAI検索、SaaS依存を減らす内製化、測定やプライバシー課題まで、企業が見直すべきマーケティング戦略を実務と技術、組織設計の両面から具体的に読み解く。

最新ニュース

AIネオクラウド「8割再編」予測 債務膨張と民主旋風の二重苦

AIクラウドの8割超が2030年までに独立運営を終えるとの予測。CoreWeaveは約351億ドルの債務を抱え、四半期利払いは6.4億ドルに達した。中間選挙でデータセンター規制を掲げた民主党候補が躍進した。GPU世代交代、顧客集中、建設遅延が資金繰りを圧迫する構図と、勝ち残る事業者の条件を財務・技術の両面から読み解く。

国債金利上昇が問う積極財政、成長投資と地方財政を測る市場の審判

10年国債の入札平均利回りが2.768%、日銀の政策金利が1.25%となる中、積極財政の成否は歳出額ではなく、民間投資の誘発、生産性、税収、地方の維持費で決まる。金利上昇を財政不信と即断せず、市場の信号と政策効果の検証を組み合わせ、成長投資を持続可能にする条件を自治体財政の視点から実務的に読み解く。

JT株ストップ安、ロシア資産一時管理で問われる経営リスクの備え

JTのロシア製造4社が大統領令で一時管理下に入り、株価は11月6日に6269円まで19.31%急落した。追加措置で対象は7法人へ拡大。売上収益の1割超を担うJTIロシアの経営権喪失が、業績・配当・減損会計・政府保有株に及ぼす影響と、投資家が確認すべき開示項目を企業統治と地政学リスクの視点から詳しく解説する。

三井化学のJSR買収案、1.3兆円投資で半導体材料市場の主役へ

三井化学が半導体材料大手JSRの取得を検討している。報道された買収額は1.3兆円超で、実現すれば国内化学業界最大級のM&Aとなる。フォトレジストやEUV材料を取り込む戦略効果、JICが非公開化から売却へ動く背景、巨額の資金調達と財務規律、市場が警戒した株主価値への影響、統合後の競争力を左右する論点を解説。

米中間選挙ショックで崩れたAI相場、データセンター規制と投資戦略

米中間選挙で民主党が上下両院を奪還し、ナスダック総合は5.5%安、日経平均は一時4300円超下落した。焦点はAI需要の消滅ではなく、データセンターの電力・水・許認可コストである。連邦政治のねじれ、州規制、高金利、企業の資金力を分解し、日本株と米ハイテク株で投資家が見極めるべき重要な選別軸を読み解く。