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みんなで大家さん許可取消し、賃料未収が映す大型開発投資の盲点

by 田中 健司
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許可取消しが突き付けた商品説明の限界

大阪府と東京都は2026年9月1日、不動産投資商品「みんなで大家さん」に関わる2社に対し、不動産特定共同事業の許可取消しと指示処分を行いました。大阪府の対象は営業者の都市綜研インベストファンド、東京都の対象は販売代理人のみんなで大家さん販売です。

焦点は、単なる分配金や償還の遅れではありません。対象不動産の賃料が支払われていない状況を把握または確認しないまま、契約成立前交付書面で誤認を招く説明が行われたと行政庁が認定した点です。大型開発と小口投資を結び付ける商品では、工事進捗、賃料、資金調達、出口戦略のどれか一つが崩れるだけで、投資家保護の前提が大きく揺らぎます。

賃料未収をめぐる二重の情報断絶

書面に残らなかったテナント不払い

大阪府の処分理由で重い意味を持つのは、賃料未収が投資判断に直結する情報として扱われた点です。不動産特定共同事業法施行規則は、契約成立前交付書面に対象不動産の賃料支払状況を記載することを求めています。賃料は、商品が「不動産から収益を得る」という説明を成立させる基礎だからです。

大阪府の別紙資料によると、都市綜研インベストファンドの代表取締役と役員1人は、複数商品の対象不動産でテナントから賃料が支払われていないことを認識していたとされます。それにもかかわらず、契約成立前交付書面の賃料支払状況欄に「該当なし」と記載し、販売に伴って交付・説明したと認定されました。

対象となった商品には、みんなで大家さん40号、ファーム7号、伊勢7、成田5号、成田13号から18号までが含まれます。大阪府資料の別表では、記載不備があった商品について事業参加者は計280名、出資額は計6億4300万円です。中でも成田13号は262名、6億500万円と大きな比重を占めています。

この問題は、賃料の未収そのものよりも、その情報が投資家に届く経路で遮断されたことにあります。代表者側が「一時的な事象」と見ていたとしても、商品購入者にとっては、対象不動産の収益力と返還可能性を判断する材料です。未収が短期で解消する見込みだったかどうかは、販売側が一方的に飲み込む情報ではなく、説明すべきリスク情報でした。

販売代理人に求められた確認義務

東京都の処分は、販売代理人であるみんなで大家さん販売の確認体制に向けられました。東京都は、同社が営業者に対して賃料の支払い状況を調査せず、調査していないことを認識しながら「該当なし」と記載された契約成立前交付書面を交付・説明したとしています。東京都資料では、これにより199名との契約で計4億3100万円を支払わせたと認定されています。

販売代理人は、営業者から渡された商品情報を機械的に配るだけの存在ではありません。とくに不動産小口化商品は、投資家が現地の工事進捗や賃貸状況を自分で継続監視しにくい商品です。だからこそ、販売時の書面と説明が投資判断の中心になります。

2024年6月にも、東京都と大阪府は関連2社に対し、成田16号や成田プロジェクトの説明をめぐって業務の一部停止と指示処分を行っていました。東京都の当時の資料では、開発許可の対象ではない土地を対象不動産に含めた問題や、計画見直し後の資産価値、将来収益、実現可能性への影響説明が不十分だった点が指摘されています。

今回の取消しでは、過去の処分後に示された再発防止策が十分に運用されていなかったことも問題視されました。東京都は、契約成立前交付書面などについて外部弁護士のチェック等を行うとされた改善措置が、対象商品の販売に当たって実施されていなかったとしています。営業者と販売代理人の間で情報が断たれ、販売現場でも検証されなければ、投資家は最も重要な前提を知らないまま契約することになります。

成田開発と財務悪化が生んだ返還難

債務超過と現金残高の開き

大阪府が許可取消しに踏み切ったもう一つの柱は、財務基準への不適合です。大阪府資料によると、都市綜研インベストファンドが2026年7月28日付で提出した2025年度の事業報告書では、貸借対照表上の純資産に相当する額がマイナス2881億3176万9000円でした。資本金は29億2330万9000円であり、法が求める純資産基準を満たさないと判断されています。

不動産特定共同事業は、投資家から長期に資金を預かり、不動産取引から生じる収益や利益を分配する仕組みです。国土交通省も許可要件の説明で、資本金要件や純資産要件を「投資家の財産を長期間預かる業」に必要な財産的基礎として位置付けています。したがって、純資産の大幅な毀損は、単なる会計上の数字ではなく、出資金返還能力の警報です。

2026年6月30日時点で償還期日を迎えながら返還できていなかった商品は9商品で、事業参加者は7511名、償還遅延金額は188億200万円でした。さらに、今後償還期日を迎える予定商品は29商品、事業参加者は6万5269名、償還予定金額は1724億6939万円とされています。

これに対し、同日時点の固有勘定の現金預金残高は9241万7964円でした。大阪府は、償還遅延額と償還予定額に対して0.05%程度と記載しています。もちろん、不動産や関連資産の売却で回収原資を確保する余地はあります。しかし、行政資料が示す数字だけを見ても、手元流動性と返還債務の差は極めて大きい状態です。

空港用地契約終了の重み

今回の問題を産業面から見ると、成田プロジェクトの停滞が資金繰りと投資家説明の双方に影を落としています。みんなで大家さんの成田シリーズは、成田空港周辺の大型開発構想と結び付けられてきました。開発型の不動産投資では、造成工事、許認可、借地契約、建物計画、テナント誘致、売却または運用という工程が連鎖します。一つの工程が遅れると、後段の資金回収時期もずれます。

Business Insider Japanの報道によると、成田国際空港会社は2025年11月末で、成田シリーズ向け開発用地の賃貸借契約を終了し、更新しない方針を公表しました。同記事では、対象地は開発エリア全体の4割に当たり、年間賃料は1800万円だったとされています。成田国際空港会社側は、造成工事の遂行能力を確認できなかったと説明し、資金面も判断要素に含まれるとしています。

大阪府の処分理由でも、成田国際空港会社との借地契約が2025年11月30日に終了し、2026年6月末時点でも再開していないことが重視されています。さらに、海外での保険付き債券発行による大規模資金調達について、説明されたスケジュールが繰り返し遅延したことも列挙されました。債券発行には借地契約の再開が必要とされていたため、用地契約の停滞は単なる工事現場の問題にとどまりません。

同社グループは、処分後の見解で、資産保全、必要な資産売却、償還原資の確保に向けた対応を継続すると説明しています。一方で、行政庁の事実認定や法的評価のすべてを認めているわけではないとも述べています。今後は、主張の当否だけでなく、どの資産を、いつ、どの程度の価格で現金化できるのかが焦点になります。

投資家保護で残る回収と二次被害の課題

許可取消しは、新規の不動産特定共同事業を続ける資格を失わせる強い処分です。ただし、既存契約の業務が即時に消えるわけではありません。不動産特定共同事業法第65条は、許可が取り消された場合でも、締結済み契約に基づく業務を結了する目的の範囲では、なお不動産特定共同事業者とみなす仕組みを置いています。

大阪府と東京都はいずれも、事業参加者への説明、苦情対応、業務の適切な結了、対応状況の報告を指示しています。大阪府は2026年9月30日までの書面報告も求めました。処分の目的は事業者を退場させることだけではなく、残った契約と運用財産をどう整理するかにあります。

一方で、回収局面では二次被害にも注意が必要です。大阪府は2026年8月、不動産特定共同事業契約に関する返金を装う不審な勧誘への注意喚起を出しました。返金のために別の商品購入や手数料支払いを求める連絡、行政機関や支援団体を名乗って個人情報や口座情報を求める連絡は、詐欺的行為の可能性があります。

集団訴訟も進んでいます。共同通信配信記事によると、2026年2月時点で原告数は約2500人、請求総額は約230億円となっています。行政処分、民事訴訟、資産売却、既存契約の結了が並行して進むため、出資者にとっては情報の真偽を見極める負担が大きい局面です。連絡先は公式サイトや行政機関の公表情報で確認し、送金や契約を急がせる相手には応じない姿勢が必要です。

出資前に確認したい不動産ファンドの実務指標

今回の許可取消しは、高利回りをうたう不動産商品全般への警鐘です。確認すべきは、予定利回りの高さではなく、賃料の入金実績、テナント集中度、開発許可と工事工程、借地契約の期限、資金調達の確度、償還原資の説明です。とくに開発型案件では、完成前の土地や構想図だけで収益性を判断するのは危険です。

投資家は、契約成立前交付書面に「該当なし」とある項目ほど、何が該当しないのかを確認する必要があります。行政処分歴、分配金の遅延、譲渡や解約の実績、運営会社の貸借対照表も重要です。不動産クラウドファンディング市場は拡大していますが、商品説明の厚みと運営会社の財務耐久力を見ない投資は、完成しない開発計画のリスクを個人が背負う構図になりかねません。

参考資料:

田中 健司

製造業・建設・インフラ

製造業・建設・インフラ産業を中心に取材。大企業の事業再編から建設現場の人手不足問題まで、日本の産業基盤の変化を追い続ける。

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