日本人がI thinkを連発する理由とfeelで広がる英語表現
I think連発とfeel活用の背景
英語で意見を書くとき、気づけば I think ばかり並んでしまう。これは日本人学習者にかなり典型的な現象です。問題は単なる語彙不足ではありません。日本語の「と思う」をそのまま think に対応させる学習習慣と、学校英語で長く続いてきた文法中心の訓練が重なり、結果として表現の幅が狭くなりやすいという構造があります。
実際、学習者コーパス研究でも、日本人の英語作文では I や I think の過剰使用が確認されています。一方で、英語の think、believe、feel、guess は、どれも日本語にすれば「思う」に見えても、確信の強さや根拠、話し手の態度が異なります。この記事では、なぜ I think が増殖しやすいのかを整理したうえで、特に見落とされやすい feel を軸に、意見表現を立体化する考え方を解説します。
I think偏重を生む日本語発想と学校英語の構造
「と思う」と英語のモダリティのずれ
2020年のJACET中部支部紀要の研究は、日本人英語における I think の多用が、日本語の「と思う」のモダリティ機能と強く関係していると整理しています。日本語の「と思う」は、断定を和らげる、推量を示す、相手に配慮するなど、多くの働きを引き受ける便利な表現です。そのため、日本語では自然でも、英語にそのまま一対一で移すと I think が過密になりやすいです。
さらに、2013年のJALT Journal 掲載研究では、日本人EFL学習者の議論型エッセーを約20万語規模のコーパスで分析し、ほぼすべての作文に I が現れ、その量が過剰で、I think も母語話者の書き言葉より多いことが示されました。ここから見えるのは、学習者が「意見を書くなら、まず I think を置く」という型に強く依存していることです。
この背景には、単語の意味を一語一義で覚えやすい日本の学習文化もあります。think = 思う と覚える方法は入り口としては便利ですが、実際の運用では雑すぎます。英語では、何を根拠に、どの程度の確信で、どんな距離感で述べるのかによって動詞が分かれます。日本語の一語を、英語の複数の認識表現へ分岐させる発想が必要です。
学校現場で残る発信活動の不足
文部科学省もこの課題をかなり明確に認識しています。2020年1月30日時点の高等学校学習指導要領Q&Aでは、授業で依然として「話すこと」「書くこと」が十分でなく、「やり取り」や「即興性」を意識した言語活動も不足していると記しています。つまり、表現を使い分ける訓練の不足は、現場レベルの課題として公式に把握されています。
2025年6月23日公表の令和6年度「英語教育実施状況調査」でも、英語力は改善傾向にあります。中学生でCEFR A1相当以上は52.4%、高校生でCEFR A2相当以上は51.6%まで上がりました。しかし、高校生でCEFR B1相当以上は21.2%にとどまります。加えて同調査は、高校生の英語力に対して、生徒の英語による言語活動、教師の英語使用、教師の英語力、ALTとの授業外活動などが影響すると整理しています。学習者の基礎力は上がっても、意見の出し方を細かく選ぶ運用力まで十分育っているとは言い切れません。
意見を言い分けるための語彙設計
意見の基本線としてのthink
Cambridge Dictionary では think を、何かについて意見や考えを持つことを表す基本語として示しています。したがって think 自体が悪いわけではありません。事実、一般的な判断や軽い意見には最も使いやすい動詞です。I think this policy needs revision. のような文は自然です。
ただし、どんな「思う」でも think で済ませると、文章の輪郭がぼやけます。英語では、主張の強さや推測の度合いを動詞選択で見せるのが普通です。think は中心語ですが、万能語ではありません。ここを理解するだけで、表現の密度がかなり変わります。
意外な切り札としてのfeel
今回、特に注目したいのが feel です。日本の学習者は feel = 感じる と覚えがちですが、Cambridge Dictionary では feel に「特定の意見や態度を持つ」という意味も明示されています。ここが重要です。feel は感情語であると同時に、個人的な判断や価値感覚をにじませる意見表現でもあります。
たとえば、制度や計画に対して「理屈だけではなく、こう受け止める」と言いたいとき、I feel は有効です。I feel this plan is too rushed. なら、単なる論理判断ではなく、違和感や体感を伴う見立てになります。対人コミュニケーションでも、I think you are wrong. より I feel we may be looking at this differently. の方が、衝突を和らげながら立場を示しやすいです。
意外なのは、feel が曖昧な逃げの表現ではない点です。むしろ、自分の経験、感覚、価値判断に根ざした見解を出すときに向いた語です。日本語の「私はそう感じる」「私としてはそう受け止める」に近い場面で使えるため、I think 一辺倒から抜ける最初の一歩として実用性が高いです。
確信度で分けるbelieveとguess
同じくCambridge Dictionary を見ると、believe は「それが真実、正しい、現実だと思う」ときの語です。think より確信や信念がにじみやすく、価値判断や立場表明に向きます。I believe this is the right approach. と書けば、単なる感想ではなく、一定の確信をもった主張になります。
一方で guess は、十分な情報がないまま形成した見立てに使われます。Cambridge は、状況に関する知識なしに形づくられた意見と説明しています。つまり My guess is that demand slowed after the price change. のように、仮説や暫定判断を示す場面に合います。ここを I think で済ませると、推測なのか意見なのかが読者に伝わりにくくなります。
実務でも学習でも大切なのは、単語を増やすことより、認識の種類を分けることです。一般的意見なら think、感覚や受け止め方なら feel、確信を伴う立場なら believe、材料不足の推測なら guess。この整理だけで、日本語の「思う」を英語でより正確に再構成できます。
I think禁止ではない語彙設計
注意したいのは、I think を全部禁止することではありません。頻度が問題なのであって、語そのものが不自然なのではありません。むしろ、場面に合う think は積極的に残すべきです。問題は、日本語の「と思う」が出るたびに無意識で think を当ててしまうことです。
もう一つの注意点は、類義語を丸暗記しないことです。文部科学省の学習指導要領Q&Aも、文法や表現は実際のコミュニケーションの場面で活用する中で身に付けるべきだとしています。したがって、feel、believe、guess を単語帳で横並びに覚えるだけでは不十分です。辞書やコーパスで例文を見比べ、確信度、根拠、対人距離の違いごとに覚える方が、はるかに再現性があります。
今後の学校英語でも、五つの領域を統合した活動や即興的なやり取りが増えれば、この問題は少しずつ改善するはずです。ただ、データを見る限り、上位レベルの運用力にはまだ距離があります。英語力向上の次の段階は、正解の単語を一つ覚えることではなく、似た語の違いを使い分ける語彙設計にあると考えるべきです。
I think偏重を脱するfeelの効用
日本人の英語が I think の連続になりやすいのは、母語の「と思う」をそのまま移す癖と、発信型活動が十分でなかった学習環境の積み重ねによるものです。研究でも、日本人学習者の作文における I think の過剰使用は確認されています。
その打開策として有効なのが、「思う」を一語で処理しないことです。一般的意見の think、感覚や受け止め方の feel、確信を示す believe、暫定的推測の guess へと分けて考えると、英語は急に立体的になります。なかでも feel は、日本語話者が見落としやすいのに実戦で効く一語です。英語表現を広げたいなら、単語数を増やす前に、まず「どの種類の思うなのか」を見極める習慣から始めるべきです。
参考資料:
- I thinkの多用に見る日本語モダリティの日本人英語への影響 | J-STAGE
- Use of I in Essays by Japanese EFL Learners | CiNii Research
- 令和6年度「英語教育実施状況調査」の結果について | 文部科学省
- 令和6年度「英語教育実施状況調査」(概要)修正版 PDF | 文部科学省
- 平成30年改訂の高等学校学習指導要領に関するQ&A(外国語に関すること)PDF | 文部科学省
- THINK | English meaning - Cambridge Dictionary
- FEEL | English meaning - Cambridge Dictionary
- BELIEVE | English meaning - Cambridge Dictionary
- GUESS | English meaning - Cambridge Dictionary
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