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第二新卒採用が大企業で広がる理由と若手定着の新課題を読み解く

by 田中 健司
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はじめに

第二新卒が再び注目されているのは、一時的な流行ではありません。新卒採用だけでは母集団を確保しにくくなり、中途採用でも即戦力人材の奪い合いが激しくなるなかで、企業が採用の入口を広げ始めた結果です。とくに大企業では、従来の新卒一括採用だけで年間の採用計画を埋める発想が通用しにくくなっています。

マイナビが2025年1月に公表した「企業人材ニーズ調査(2024年版)」では、第二新卒を今後採用する予定とした企業は80.9%でした。従業員1000人以上では87.9%に達しています。第二新卒は、もはや新卒採用の補欠ではなく、若手採用の本流に近づきつつあると言えます。この記事では、なぜ大企業が第二新卒へ視線を強めるのか、背景にある採用難と若手流動化の構造、そして採って終わりにしないための定着課題を整理します。

採用対象が広がる構造

新卒採用難と母集団不足

企業側の採用環境は、足元でも厳しい状態が続いています。マンパワーグループが2025年1月に公表した人材不足調査では、日本で人材確保が困難だと答えた雇用主は77%でした。帝国データバンクの2026年1月調査でも、正社員不足を感じる企業は52.3%と半数を超えています。採用難は一部業種だけの問題ではなく、広い業界で常態化していると見るべきです。

新卒採用も楽ではありません。マイナビの2026年卒企業新卒採用予定調査では、78.1%の企業が採用は「厳しくなる」と答えました。さらに2026年2月公表の2027年卒調査では、初任給引き上げ予定企業が55.4%まで増えています。賃上げで競争力を補う動きは広がっていますが、それでも採用が楽になるわけではないというのが公開調査の一貫した傾向です。

ここで大企業が有利なのは、賃金や知名度だけではありません。通年で採用枠を持ちやすく、職種別採用や配属調整の余地も大きいからです。公開調査を重ねると、大企業は新卒と中途を分けて考えるより、若手人材を複線的に確保する方向へ移っていると推測できます。第二新卒は、その中間にある柔軟な採用枠として相性が良いのです。

第二新卒の即戦力未満・育成可能という位置づけ

一般に第二新卒は、新卒入社後おおむね1〜3年程度で転職する若手を指します。企業から見た魅力は、完全な未経験者ではない一方で、即戦力中途ほど高い専門実績を前提にしなくてよい点です。基本的なビジネスマナーや組織で働く感覚を持ちながら、企業文化への再適応も比較的進めやすい。ここに新卒でも中途でもない独特の価値があります。

マイナビの同調査では、第二新卒採用の実施率は52.6%でした。実施理由としては、新卒人材や中途の即戦力人材を十分に確保できないことが上位に挙がっています。また、第二新卒に「よいイメージ」を持つ企業は74.7%で、「やる気がある」「適応しやすい」「将来を見据えた人材確保ができる」といった評価が示されました。大企業が第二新卒を欲しがるのは、若手ポテンシャルを確保しつつ、育成コストの初期部分を少し外部化できるからです。

ただし、これは万能カードではありません。第二新卒は育てやすい人材ではあっても、自動的に定着しやすい人材ではないからです。採用の入口を広げるだけで、配属や評価の仕組みが旧来のままであれば、早期離職の再生産になりかねません。

若手流動化が生む機会とリスク

早期離職の増加と転職理由の変化

第二新卒市場が厚みを増している背景には、若手の早期離職があります。厚生労働省が2024年10月に公表した令和3年3月卒業者の離職状況では、就職後3年以内の離職率は大卒で34.9%、高卒で38.4%でした。3人に1人前後が3年以内に最初の職場を離れる現実は、企業にとっては損失である一方、採用市場には第二新卒の母集団を継続的に供給しています。

では、若手はなぜ動くのか。dodaが2026年2月に更新した転職理由ランキングでは、2024年7月から2025年6月に転職した人の全体1位は「給与が低い・昇給が見込めない」で36.6%、2位は「労働時間に不満」で26.3%、3位は「個人の成果で評価されない」で22.8%でした。さらに20代では「労働時間に不満」が1位です。若手の離職は、単純に給料だけの問題ではなく、時間の使い方や評価の納得感まで含んだ職場設計の問題だと分かります。

この点は、第二新卒採用の広がりを考えるうえで重要です。企業は外から若手を採れるようになりますが、若手が外へ出る理由そのものは消えていません。採る側の企業が、前職で不満だった点を見抜けなければ、入社後に同じ摩擦を繰り返す可能性があります。第二新卒市場が広がるほど、採用は量の勝負ではなく、離職理由と職場設計をどこまで接続できるかの勝負になります。

採用後の定着を左右する設計

定着の観点から見ると、賃上げは必要条件でも十分条件ではありません。マイナビの2027年卒調査で初任給引き上げ予定が55.4%まで拡大したことや、帝国データバンクが2025年1月調査で「初任給30万円時代」に言及したことは、企業が処遇改善を急いでいる証拠です。ただ、dodaの転職理由を見ると、若手は労働時間や評価の不透明さにも強く反応しています。入り口の提示条件だけを改善しても、職場経験が伴わなければ定着は難しいはずです。

では何が必要か。第一に、第二新卒を「すぐ辞めた人」と見るのではなく、「一度職場を経験したうえで再選択している人」と捉えることです。前職で何が合わなかったのかを丁寧に聞き、配属先や期待役割とつなげる設計が欠かせません。第二に、入社直後のオンボーディングを新卒向けと中途向けの中間仕様にすることです。制度説明だけでなく、意思決定の進め方や評価の基準まで早めに明文化したほうが、ミスマッチを減らせます。

第三に、管理職任せにしすぎないことです。マイナビの2026年版企業人材ニーズ調査では、新卒採用で40.6%、中途採用で44.6%が採用未充足でした。つまり現場は採るだけでも忙しい状況です。その現場に定着支援まで丸投げすると、配属後のフォローは遅れやすくなります。人事が面談頻度、評価の節目、異動の相談ルートまで設計しておく企業ほど、第二新卒採用を拡大しても崩れにくいと考えられます。

注意点・展望

注意したいのは、第二新卒採用を安易な穴埋め策として扱うことです。企業側には「若いので染めやすい」「新卒より実務感覚がある」といった期待がありますが、その期待が曖昧なままでは、本人にとっては都合のよい調整弁に映ります。とくに大企業では、部署ごとの受け入れ温度差が大きいと、採用段階の説明と現場の実態がずれやすくなります。

今後は、第二新卒という区分自体がさらに広く使われる可能性があります。dodaも「統一された定義はない」と整理しており、実務では若手経験者採用とほぼ重なる場面が増えています。採用区分の名前よりも、どの年次・どの経験までをポテンシャル採用として扱うのかを企業が明確にできるかが焦点です。公開調査では、従来型採用に限界を感じる企業がすでに3割を超えています。第二新卒採用の拡大は、その限界への現実的な対応として定着していく公算が大きいでしょう。

まとめ

第二新卒への熱視線は、若手の価値が上がったからだけではありません。新卒採用難、即戦力中途の不足、早期離職による人材流動化が同時進行し、企業が採用の間口を広げざるを得なくなった結果です。とくに大企業は、通年採用や複線的な採用設計と相性がよく、第二新卒を戦略的に取り込みやすい立場にあります。

一方で、競争が激しくなるほど、採用成功の定義は「採れたか」から「定着して戦力化したか」へ移ります。賃上げだけで差がつきにくくなるなか、役割の明確化、評価の納得感、入社初期の支援設計まで整えられるかどうかが、第二新卒採用を成長投資に変える分岐点になります。

参考資料:

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