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日産エスピノーサ社長が挑む経営刷新と構造改革の全容

by 鈴木 麻衣子
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エスピノーサ改革とRe:Nissanの衝撃

経営不振に陥った日産自動車で、2025年4月に新社長に就任したイヴァン・エスピノーサ氏が大胆な経営改革に乗り出しています。就任直後に打ち出した構造改革「Re:Nissan」は、7工場の閉鎖、2万人の人員削減、そして役員数の55人から12人への大幅削減など、痛みを伴う施策を中核に据えたものです。

日産はここ数年、販売不振と収益悪化が続き、ホンダとの経営統合交渉も破談に終わりました。「決められない経営」と揶揄された意思決定の遅さを根本から変えようとするエスピノーサ氏の改革は、巨艦・日産を再び浮上させることができるのでしょうか。

「Re:Nissan」が目指す経営再建

5,000億円のコスト削減

エスピノーサ社長が策定した「Re:Nissan」は、2024年度実績比で固定費と変動費を合計5,000億円削減することを柱としています。2026年度までに自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローの黒字化を目標に掲げました。

損益分岐点台数は310万台から250万台へと引き下げる計画です。世界17ある車両生産工場を10に統廃合し、デザインスタジオも2拠点を閉鎖します。全従業員の約15%にあたる2万人の削減も打ち出しており、エスピノーサ社長は「わが社を救う唯一の方法だ」と述べています。

2026年度は4,200億円の最終赤字を見込む

大規模なリストラクチャリング費用により、2026年3月期(2025年度)の最終損益は約4,200億円の赤字を見込んでいます。短期的な痛みを受け入れ、中長期的な収益体質の構築を優先する姿勢を鮮明にしました。固定費の削減は2025年末時点で約1,000億円の進捗が報告されており、目標の1,600億円に向けて順調に推移しているとされています。

役員55人から12人へ——意思決定の抜本改革

執行役員制度の廃止

今回の改革で特に注目されるのが、経営体制の大幅なスリム化です。日産は従来の執行役員制度を廃止し、社外取締役を除く役員数を55人から12人に削減しました。実に8割もの削減です。

この背景には、日産の意思決定スピードの遅さに対する根深い問題意識があります。売上高12兆円規模の日産が63人もの役員を抱えていたのに対し、売上高45兆円のトヨタは29人、20兆円のホンダは26人という比較が話題になりました。ホンダとの経営統合交渉が破談した原因の一つも、日産の改革の動きの鈍さにホンダが見切りをつけたためとされています。

エグゼクティブ・コミッティ中心の新体制

新たな経営体制では、エスピノーサ社長を筆頭とするエグゼクティブ・コミッティ(EC)が意思決定の中核を担います。開発担当の赤石永一氏、生産担当の平田禎治氏らが名を連ね、少人数による迅速な経営判断を実現する体制が構築されました。

2025年6月の株主総会では12人の取締役選任案が可決され、新体制での再建が本格的にスタートしています。エスピノーサ社長自身も「最も重要なのは共感力」と述べつつ、経営判断のスピード感を最優先課題に掲げています。

エスピノーサ社長の経歴と手腕

メキシコ出身の「カーガイ」

イヴァン・エスピノーサ氏はメキシコ出身の46歳で、日産では8年間で4人目のCEOとなります。日産での長いキャリアの中で、商品企画を中心に実績を積み上げてきた人物で、「リアル・カーガイ(本物の車好き)」として社内外から評価されています。

就任前のインタビューで経営不振の最大の原因を「スピード感のなさ」と明確に指摘しており、その認識通りの改革を矢継ぎ早に実行しています。

台数頼みからの転換

エスピノーサ社長は、これまでの日産が陥っていた「台数頼みの経営」からの脱却を明言しています。販売台数を追うあまり、値引き販売に依存し、ブランド価値と収益性を損なう悪循環が続いていました。今後は利益率の高い車種に経営資源を集中させ、1台あたりの収益性を重視する方針です。

提携戦略とEV見直しが握る再建の成否

パートナー戦略の行方

ホンダとの統合破談後、日産の提携戦略は流動的な状況です。エスピノーサ社長は「資金調達のためのパートナーは必要ない」とする一方で、「売却の可能性に対しても扉を閉ざさない」と発言しており、18カ月の再建期間を経た後に次のパートナーを探す姿勢を示しています。

EV戦略の見直し

EV市場の成長鈍化を受け、日産はフル電動車に加えてプラグインハイブリッド車(PHEV)やレンジエクステンダー付きEV(EREV)にも注力する方針を打ち出しています。「リーフ」で培った電動化技術の資産をどう活かすかが、今後の競争力を左右する重要なポイントです。

再建の成否を占うカギ

日産の再建が成功するかどうかは、コスト削減と並行して魅力ある新車を市場に投入できるかにかかっています。リストラだけでは企業の成長は望めず、製品力の回復が不可欠です。エスピノーサ社長の「カーガイ」としての感性が商品企画に反映されるかどうか、今後の動向が注目されます。

18カ月で問われる日産再建の成果

日産のエスピノーサ新社長は、役員数を55人から12人に削減する経営体制の刷新を皮切りに、7工場閉鎖・2万人削減という大胆な構造改革「Re:Nissan」を推進しています。意思決定のスピードを劇的に高め、台数頼みの経営から収益性重視への転換を図る方針です。

2026年度は約4,200億円の最終赤字が見込まれますが、固定費削減は計画通り進捗しています。18カ月の再建期間で成果を示せるかどうかが、巨艦・日産の命運を握っています。

参考資料:

鈴木 麻衣子

企業経営・コーポレートガバナンス

企業経営・コーポレートガバナンスを専門に取材。経営戦略の成功事例から不正会計の構造的問題まで、企業の「あり方」を鋭く問う。

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