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日産がホンダ出資受け入れ再検討へ、内田社長退任の全容

by 鈴木 麻衣子
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内田社長退任で転換点の日産再建

日産自動車の経営が大きな転換点を迎えています。業績不振が続く中、内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)の退任が決まり、後任にはイヴァン・エスピノーサ氏が就任しました。執行役5人のうち4人が交代するという、経営陣の大幅な刷新です。

注目すべきは、一度は破談となったホンダとの経営統合協議が、新体制のもとで再検討される可能性が浮上している点です。台湾の鴻海精密工業との協業案も取り沙汰されており、日産の将来を左右する重要な局面となっています。

本記事では、日産の社長交代の背景、ホンダとの関係の行方、そして経営再建に向けた課題を解説します。

内田社長退任と新体制の発足

5年間の業績不振に区切り

日産自動車は2025年3月11日、内田誠社長兼CEOの退任と新体制への移行を発表しました。内田氏は2019年12月に就任し、約5年にわたって経営を担ってきましたが、業績回復を果たせないまま退任することになりました。

2025年3月期の純損益は800億円の赤字に転落する見通しで、タイを含む複数の工場閉鎖と9,000人規模の人員削減が進められています。日産の指名委員会が内田氏の退任を決定し、経営責任を明確化した形です。

エスピノーサ新社長の横顔

後任のイヴァン・エスピノーサ氏は46歳。メキシコ出身で、2003年にメキシコ日産に入社しました。その後、商品企画部門でキャリアを重ね、2018年に執行役員、2024年にチーフ・プランニング・オフィサーに就任しています。

エスピノーサ氏は「安定性と成長を取り戻していきたい」と就任会見で述べています。商品企画のプロフェッショナルとして、日産の製品ラインアップの立て直しが期待されています。メキシコ出身というバックグラウンドは、北米市場の強化という観点でも強みとなる可能性があります。

ホンダとの関係はどうなるのか

経営統合協議の破談と再開の可能性

ホンダと日産は2024年末に経営統合に向けた協議を進めていましたが、条件面で折り合いがつかず破談となりました。統合が実現していれば、世界第3位の自動車メーカーグループが誕生するはずでした。

しかし、内田社長の退任が決まったことで状況は一変しています。英フィナンシャル・タイムズの報道によると、ホンダは内田社長が退任すれば統合交渉を再開する意向を持っていました。内田氏の退任が実現したことで、協議再開の条件が整いつつあります。

エスピノーサ新社長も、ホンダとの協業について「オープンな姿勢」を示しており、完全統合ではなくとも、出資受け入れや部分的な協業といった柔軟な選択肢を模索しているとみられます。

SDVや電動化での協業は継続

経営統合協議は破談となったものの、ホンダと日産の間で進められていたソフトウエア定義車両(SDV)の共同研究やバッテリー、電動駆動装置などの技術協業は継続しています。三菱自動車を含めた3社での協業関係は維持されており、技術面でのパートナーシップは失われていません。

この協業実績が、将来的な資本関係の構築に向けた土台となる可能性があります。

浮上する鴻海との協業案

第三の選択肢としての鴻海

ホンダとの再統合以外の選択肢として、台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)との協業案も浮上しています。鴻海はEV(電気自動車)市場への本格参入を目指しており、既存の自動車メーカーとの連携を積極的に模索しています。

一部では、ホンダと鴻海が連携して日産に出資する案も検討されていると報じられています。鴻海の製造技術とホンダの自動車開発力を組み合わせ、日産の再建を支えるというシナリオです。

4社協業の可能性

日産が筆頭株主を務める三菱自動車を含め、ホンダ・日産・三菱・鴻海の4社での協業という壮大な構想も視野に入っています。実現すれば、自動車産業とエレクトロニクス産業の融合という、業界の歴史に残る再編となります。

ただし、これだけの規模の協業や統合は、各社の利害調整や規制当局の承認など、多くのハードルを超える必要があります。

経営再建の課題と展望

商品力の回復が最優先

日産の業績不振の根本原因は、商品ラインアップの魅力低下にあります。特に北米市場で新型車の投入が遅れ、競合に対してシェアを失い続けてきました。

エスピノーサ新社長のもと、ハイブリッドシステム「e-POWER」の次世代版を2025年から世界で投入する計画が進められています。EVとハイブリッドの両面で商品力を強化し、販売台数の回復を目指す方針です。

構造改革の実行力

9,000人の人員削減や工場閉鎖といった構造改革は、コスト削減に直結する一方で、従業員の士気や生産体制への影響も懸念されます。新体制がこれらの施策を着実に実行しながら、同時に成長投資を進めるバランス感覚が問われます。

多方面からの厳しい視線

エスピノーサ新社長は就任時に「同時に4つ5つの危機がある」と述べており、業績悪化、人材流出、パートナーシップの再構築、新車開発の加速など、複数の課題に同時に対処しなければならない状況です。

ホンダ出資再検討と800億円赤字の焦点

日産自動車は内田社長の退任とエスピノーサ新社長の就任により、経営再建の新たなフェーズに入りました。ホンダからの出資受け入れ再検討や鴻海との協業案など、資本関係の再構築が今後の最大の焦点です。

800億円の赤字という厳しい経営状況の中で、商品力の回復と構造改革を同時に進めなければならない難しい舵取りが求められます。日本の自動車産業の勢力図を大きく変える可能性を秘めた日産の動向から、目が離せません。

参考資料:

鈴木 麻衣子

企業経営・コーポレートガバナンス

企業経営・コーポレートガバナンスを専門に取材。経営戦略の成功事例から不正会計の構造的問題まで、企業の「あり方」を鋭く問う。

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