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男女の「選択の自由」格差、日本の現状と国際比較

by 渡辺 由紀
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はじめに

「服装の自由度は女性のほうが高い。では、仕事の選択肢はどうか」。こうした問いに対する答えが、国際的な調査データから明らかになりました。世界的な市場調査会社イプソスが2026年3月の国際女性デーに合わせて発表した29カ国調査では、服装や自己表現の面では女性のほうが自由度が高いと認識される一方、職業選択では男性のほうが選択肢が多いと見なされていることが浮き彫りになっています。

特に注目すべきは、「若い男性の生活が親世代より良くなる」と考える割合において、日本が調査対象国の中で最下位クラスとなった点です。この記事では、イプソス調査のデータをもとに、日本社会における男女の選択肢の格差と、その背景にある構造的な課題を読み解きます。

イプソス国際女性デー調査の全体像

調査の概要と規模

イプソスは英キングス・カレッジ・ロンドンの「Global Institute for Women’s Leadership」と共同で、2025年12月24日から2026年1月9日にかけて、世界29カ国・2万3,268人を対象にオンライン調査を実施しました。ジェンダー平等に対する意識、男女の選択肢の認識、世代間の価値観の違いなどを幅広く調べた大規模な国際比較調査です。

調査対象国にはG7をはじめ、アジア、南米、アフリカなど多様な地域が含まれており、各国の文化的背景による違いが鮮明に表れる結果となりました。

「服装の自由」と「仕事の自由」の非対称性

調査結果で特に興味深いのが、生活の各領域における男女の選択肢の認識の違いです。29カ国平均で見ると、以下のような傾向が明らかになっています。

女性のほうが選択肢が多いと認識される分野:

  • 服装・身だしなみ(34%が「女性のほうが自由」と回答)
  • 交際・デート(24%)
  • 家庭内の役割(22%)

男性のほうが選択肢が多いと認識される分野:

  • 就ける仕事の種類(39%が「男性のほうが自由」と回答)

つまり、自己表現やプライベートの領域では女性に自由度があると感じられている一方で、キャリアや経済活動においては依然として男性優位の構造が意識されているのです。この非対称性は、ジェンダー平等の議論が単純な「どちらが有利か」では語れないことを示しています。

日本の際立つ特徴と若い男性の閉塞感

男女平等の進展度で世界最下位

この調査で日本が最も目立ったのは、「自国における男女平等が十分に進んだ」と考える人の割合です。日本は28%にとどまり、29カ国中最下位となりました。グローバル平均の52%と比較すると、24ポイントもの差があります。

この結果は、日本人自身が男女平等の進展に対して極めて懐疑的であることを意味します。世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数でも、日本は2025年版で148カ国中118位と低迷しています。特に政治分野は125位、経済分野は112位と、先進国としては異例の低さです。G7の中で100位圏外に沈んでいるのは日本だけという厳しい現実があります。

若い男性の将来見通しが最下位水準

調査では「現在の若い男性は親世代の男性より良い生活を送れるか」という問いも設けられました。グローバル平均では40%が「良くなる」と回答しましたが、日本ではわずか21%にとどまっています。一方、若い女性については55%が「親世代より良くなる」と回答しており、男女間で15ポイントの開きがあります。

日本の若い男性が感じている閉塞感は、複数の要因が絡み合っています。長期にわたる経済停滞、実質賃金の伸び悩み、終身雇用の崩壊に加え、「男性は一家の大黒柱であるべき」という旧来の規範が依然として根強いことが、若い男性に過度なプレッシャーを与えていると考えられます。

世代間で広がるジェンダー意識の分断

Z世代男性の伝統回帰傾向

イプソスの調査では、世代間の意識の違いも鮮明に表れています。興味深いことに、Z世代(18〜27歳)の男性は、上の世代よりも伝統的なジェンダー観を持つ傾向が強いことが判明しました。

具体的には、Z世代男性の31%が「妻は常に夫に従うべきだ」と回答し、33%が「重要な決定は夫が最終的に決めるべきだ」と答えています。これに対し、ベビーブーマー世代の男性では、それぞれ13%、17%にとどまっています。若い世代のほうが保守的な価値観を持つという、一見逆説的な結果です。

この傾向の背景には、SNSを通じた「男性性」に関する言説の影響や、経済的な不安定さからくる伝統的な価値観への回帰があるとされています。

「平等推進は男性差別」という認識の広がり

グローバル全体では、男性の54%が「平等のために男性は過度な要求をされている」と感じており、52%が「女性の平等推進が行き過ぎて男性が差別されている」と回答しています。日本でも45%がこの見解に同意しており、ジェンダー平等の推進に対する反発が一定の広がりを見せています。

一方で、日本でフェミニストを自認する人はわずか14%と極めて低い水準にあります。これは平等そのものへの反対というよりも、「平等の進め方」に対する不満が蓄積している可能性を示唆しています。

注意点・展望

数字の読み方に注意が必要

イプソスの調査はオンラインで実施されているため、インターネットにアクセスできる層に偏りがある点に留意が必要です。また、「選択肢の多さ」は主観的な認識であり、実際の制度的な平等とは必ずしも一致しません。

服装の自由度で女性が上回るという結果も、裏を返せば男性のビジネスシーンにおける服装規範の厳しさを反映しています。スーツ着用が事実上の義務となっている日本の職場環境では、この傾向が国際平均よりも顕著に表れている可能性があります。

今後の課題

日本社会がジェンダーギャップを縮小するためには、女性の経済・政治参画を促進するだけでなく、男性が抱える閉塞感にも目を向ける必要があります。「男性も女性も、それぞれの領域で選択肢が制限されている」という認識に立ち、双方向からの改革を進めることが求められています。

2026年の国際女性デーのテーマは「権利、正義、行動。すべての女性と少女のために」です。国連が掲げるこのメッセージと、調査が示す男性側の不満や不安をどう両立させていくかが、今後の大きな論点となるでしょう。

まとめ

イプソスの29カ国調査は、ジェンダーの「選択の自由」が領域によって異なる方向に偏っている実態を明らかにしました。服装や自己表現では女性に、職業選択では男性に、それぞれ多くの選択肢があると認識されています。

日本は男女平等の進展度で29カ国中最下位、若い男性の将来見通しでも最低水準という結果でした。ジェンダーギャップ指数118位という国際的な評価とも整合する深刻な課題です。男女双方が抱える「選択肢の制限」を解消していくことが、これからの日本社会に求められています。

参考資料:

渡辺 由紀

雇用・人材戦略・キャリア

雇用・人材戦略・キャリアを専門に取材。高専人材の争奪戦から中途採用市場の変化まで、「働く」を取り巻く構造変化を解き明かす。

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