野村證券の制度に学ぶ共働き夫婦の仕事と子育て両立最適化の実践術
野村證券に見る共働き両立の実践軸
共働き家庭が当たり前になった日本では、仕事で成果を出すことと、子育ての負荷を家庭内で偏らせないことを両立できるかが、企業選びや働き続けやすさの中核テーマになっています。厚生労働省の2025年公表資料でも、若年層の約7割が会社選びで「仕事とプライベートの両立」を意識し、約7割が仕事と育児の両立に不安を感じると示されました。
こうしたなかで注目したいのが、金融業界のように対面対応や顧客都合の調整が多い職場で、両立をどう実務に落とし込むかです。公開情報だけをたどると、野村證券では制度の手厚さだけでなく、取得実績、復職率、管理職向けの運用方針まで整えようとしていることが見えてきます。本記事では、個別の家庭事情に踏み込まず、公開資料で確認できる範囲から、再現性のある両立テクを整理します。
野村證券で両立が重要テーマになる背景
金融営業に残る時間制約と家庭運営の難所
証券会社の仕事は、相場の動きや顧客対応に合わせて予定が変わりやすく、家庭側の送迎、発熱対応、学校行事と衝突しやすい構造があります。だからこそ、両立の成否は「気合い」よりも、予定変更に耐える運営設計があるかどうかで決まります。
厚生労働省の若年層調査では、「共育てをしたいが、実現には社会や職場の支援が必要」との回答が64.8%で最多でした。理想の働き方が実現したときに仕事のモチベーションが高まるとした人は74.4%に達し、逆に理想の働き方ができていない若年社会人は、できている人より離職意向が24.3ポイント高いとされています。両立支援は福利厚生の飾りではなく、採用力と定着率に直結する経営課題です。
制度の有無ではなく運用の厚み
野村ホールディングスの公開資料によると、野村證券は2007年から次世代育成支援対策推進法に基づく認定を受けており、2025年5月開始の行動計画では、性別を問わず育児休業利用率100%を目標に掲げています。同計画では、男性育休の実例共有、管理職研修、年休取得の可視化まで盛り込まれています。
実績面でも、2025年版サステナビリティレポートでは、野村證券のFY2024/25の育児休業利用者数は718人、子の看護休暇利用者数は2013人でした。育休後の復職率は男性100%、女性98%です。月平均残業時間は14.4時間、有給休暇取得率は71.6%で、少なくとも会社としては「両立のために時間をどう確保するか」を管理指標に置いていることが分かります。
成果を落とさず家族時間を守る実践テク
予定を先回りして設計する共有運営
野村の支援制度でまず注目したいのは、働く時間を後から削るのではなく、先に設計し直せる点です。公開ページでは、フレックスタイム、在宅勤務、始終業時刻の前倒し・後ろ倒しに加え、子どもが就学前までの6時間勤務、残業と休日労働の免除が示されています。さらに、子どもが中学校入学前まで使える「育児時間」は、会社承認があれば1日2回まで、合計2時間取得できます。
この制度設計から逆算すると、成果を出す夫婦の基本テクは、家事育児を「空いた人がやる仕事」にしないことです。送迎、通院、夕方の保育園迎え、急な呼び出し対応を、固定担当と予備担当に分け、週初めに両者の繁忙日を共有しておく。相場や顧客面談で動かしにくい時間帯を先に家庭カレンダーへ反映し、調整可能な仕事だけをその周辺に置く。この順番が重要です。
野村證券は、8週間以上の育休取得などの条件を満たす社員に対し、3歳未満の子1人当たり月2万円の保育費補助も用意しています。1カ月以上の連続育休取得者には基本年収の10%を支給する金銭支援もあります。つまり、制度は「休む」ためだけでなく、復職後の生活基盤を安定させ、夫婦が長期で分担し続けるための下支えになっています。
個人技で抱え込まない職場連携
もう一つのテクは、家庭内の分担を職場運営と接続することです。野村の2025年行動計画には、管理職向けに両立理解を深める研修を行うこと、男性育休の事例を社内で共有することが明記されています。ここから読み取れるのは、両立を本人だけの努力目標にすると回らないという認識です。
実務では、担当顧客、案件進捗、締切、代替連絡先を可視化し、休暇や時短が入っても第三者が引き継げる状態を常設することが成果維持の前提です。証券営業や支店業務では、「自分しか分からない顧客メモ」が最大のリスクになります。夫婦のどちらかに突発対応が出た瞬間、家庭だけでなく仕事側も詰まるからです。
厚生労働省の若年層調査では、理想の働き方を実現するために求める支援として、残業時間の抑制、在宅勤務の活用、有給休暇取得の促進が上位に挙がりました。野村側も、2025年行動計画で年休取得率70%以上と年1回の5営業日連続休暇を掲げています。ここから導ける実践知は明快です。日々の短い残業削減と、長めの休暇を取れる引き継ぎ体制の両方を整えない限り、共働き家庭の負荷は下がりません。
2025年法改正と制度利用の偏り
制度利用を阻む見えない偏り
注意したいのは、制度があっても実際の家事育児が片方に偏れば、両立は長続きしないことです。野村證券の公開情報からは制度や取得実績は確認できますが、各家庭の分担比率までは分かりません。したがって、成功事例を表面的にまねるのではなく、「誰が何をいつ代替するか」を夫婦と職場の両方で言語化できているかを点検する必要があります。
また、2025年10月からは、3歳から小学校就学前の子を育てる社員向けに、始業時刻変更、テレワーク、養育両立支援休暇、短時間勤務などから2つ以上の措置を企業が用意する義務が始まりました。妊娠・出産時や子が3歳になる前には、企業が個別に意向聴取し、仕事と育児の両立に配慮する義務も加わっています。
透明化が進む次の競争軸
2025年4月には、男性育休取得率の公表義務が従業員300人超1000人以下の企業にも拡大しました。今後は「制度がある会社」より、「取得実績と復職後の働きやすさを数字で示せる会社」が選ばれる局面が増えそうです。
その意味で、野村證券が育休利用率100%を目標化し、取得事例の共有や管理職教育まで計画に入れている点は重要です。共働き・共育て時代の競争力は、長時間働ける個人を探すことではなく、家庭責任を持つ人材が成果を出せる運営を組織として実装できるかに移っています。
野村證券の両立テクを支える4条件
野村證券の公開情報から見える両立テクは、第一に予定を先回りして設計すること、第二に家庭内の分担を職場の引き継ぎ設計とつなぐこと、第三に制度利用を個人の遠慮ではなく組織の標準運用へ変えることです。重要なのは、育休や時短を単発の救済策として使うのではなく、復職後も含めた長期運営として組み立てることです。
共働き夫婦が仕事でも家庭でも消耗しないためには、制度、管理職の理解、可視化された引き継ぎ、夫婦間の固定分担と予備線、この4点を同時に回す必要があります。野村證券の事例は、その条件を満たした職場ほど、成果と家族時間の両立に近づけることを示す材料といえます。
参考資料:
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