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新型パジェロ619万円、ランクル超え価格に映る三菱自動車の勝算

by 藤田 七海
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619万円で復活するパジェロの新しい立ち位置

三菱自動車は、新型「パジェロ」を2026年12月17日に国内発売します。価格は619万3000円から795万800円で、国内向け生産を終えた2019年以来、7年ぶりの復活です。10月1日の予約開始から28日までに約5500台を受注し、発売前から年度販売計画を上回りました。

注目すべきは、最廉価モデルでも現行ランドクルーザー250より約41万円高いことです。ただし、両車はエンジンや装備が異なり、価格だけで優劣は決められません。新型パジェロの狙いは、懐かしい車名の再販売ではなく、走破性と高級感を組み合わせた旗艦SUVへの再定義にあります。

41万円差では測れないランクル250との実力差

「619万円から」が示す価格の前提

新型パジェロは、GLS、GSR、EXCEED、SUPER EXCEEDの4グレードを設定しました。価格はGLSが619万3000円、GSRが676万5000円、EXCEEDが693万円、SUPER EXCEEDが795万800円です。

これに対し、2026年10月時点で購入できるランドクルーザー250は、2.7リットルガソリンエンジンを搭載するVXの577万9400円です。単純計算では、パジェロのGLSが41万3600円高くなります。

もっとも、現在のランドクルーザー250はガソリン車のみです。パジェロは全グレードが2.4リットルクリーンディーゼル、8速AT、3列7人乗り、4WDという統一仕様であり、最廉価モデル同士でも商品内容は一致しません。

比較項目新型パジェロ GLSランドクルーザー250 VX
車両価格619万3000円577万9400円
エンジン2.4リットルディーゼルターボ2.7リットルガソリン
最高出力204PS163PS
最大トルク480N・m246N・m
変速機8速AT6速AT
WLTCモード燃費12.1km/L7.5km/L
乗車定員7人7人

パジェロの最大トルクはランドクルーザー250の現行ガソリン車を大きく上回ります。車両価格の差は、低回転から得られる力強さや燃費、駆動制御、標準装備まで含めて評価する必要があります。

一方、ランドクルーザー250のディーゼル車は2026年12月以降の再投入が予定されています。価格や装備が発表されれば、ディーゼル車同士の本格的な比較が可能になります。約41万円という差は、あくまで2026年10月時点のガソリンVXとの比較です。

全車共通とした走りの中核

新型パジェロは、最高出力150kW、最大トルク480N・mのディーゼルターボを全車に搭載します。舗装路の2H、フルタイム4WDの4H、センターデフロックを使う4HLc、低速ギアを組み合わせる4LLcを選択できる「スーパーセレクト4WD-II」も標準です。

さらに、4WD、左右輪の制動力、姿勢安定制御などを統合するS-AWCをパジェロとして初採用しました。NORMAL、ECO、GRAVEL、SNOW、MUD、SAND、ROCKの7モードを備え、ドライバーが路面に応じて制御を選べます。

一般的な高級SUVでは、上位グレードほどエンジンや走行機能が強化されます。新型パジェロは走りの核を全車で共通化し、価格差を内装やタイヤ、快適装備に振り分けました。GLSを選んでも、基本的な悪路走破性が削られない点は明快です。

日本の道路で効く55ミリの差

ボディーは全長4920ミリ、全幅1925ミリ、全高1900~1910ミリです。ランドクルーザー250とは全長がほぼ同じですが、全幅は55ミリ狭く、最小回転半径もパジェロが5.8メートル、ランドクルーザー250が6.0メートルです。

両車とも日本では大型ですが、狭い道路でのすれ違いや駐車場では、全幅と小回りの差が扱いやすさにつながります。最低地上高は20インチタイヤ装着車で230ミリを確保し、3列目には大人の頭上と足元の余裕も持たせました。

悪路性能だけを追求した道具ではなく、都市部で家族が使えることを重視した設計です。三菱自動車が掲げる「悪路快適性」は、険しい場所に到達できる能力に加え、そこまでの長距離移動を疲れにくくするという価値を示しています。

最上級へ予約が集中したブランド消費の構図

高級車として再設計した四つの選択肢

4グレードは、単純な装備の上下ではなく、都市型の上質さとアウトドア志向という二つの方向に分かれています。EXCEED系は20インチタイヤやアンビエントライトを備え、GSRとGLSは厚みのある18インチタイヤでタフな印象を強めました。

GSRには本革シート、ルーフレール、リヤデフロックを装備します。舗装路中心の豪華仕様ではなく、悪路を積極的に楽しみたい人へ向けたグレードです。対するEXCEEDはリヤデフロックを持たず、内装や照明、20インチホイールによって都会的な価値を高めています。

SUPER EXCEEDにはキャメル色のセミアニリン本革、前席ベンチレーション、ヤマハと共同開発した12スピーカーのオーディオを採用しました。専用の2トーンカラーや電動パノラマサンルーフも選択でき、高級輸入SUVからの乗り換えを意識した構成です。

予約受注の約7割が、この795万800円のSUPER EXCEEDに集中しました。購入者の約半数は40代以下で、8割弱が他社ブランドからの乗り換えです。高価格が需要を抑えたのではなく、「最もパジェロらしく、最も特別に見える仕様」が初期顧客を引き寄せました。

若い新規客を呼び込む懐かしさの再編集

パジェロは1982年に誕生し、1990年代のRVブームを象徴する車種となりました。2019年3月までの国内累計販売は64万台以上、初代から4代目までの世界累計生産は329万台を超えています。

新型車は、この歴史を外観へ直接再現するのではなく、初代のロールバーから着想したCピラーや、背面スペアタイヤを思わせるテールゲートの六角形などに変換しました。インパネの表示にも、歴代モデルの3連メーターを現代的に再構成したデザインを使っています。

こうした手法は、過去を知る顧客には記憶を呼び起こし、若い顧客には由来を知らなくても力強く見える造形として作用します。懐古趣味に寄りかからず、ブランドの象徴だけを抽出して再編集した点が特徴です。

実際の予約では、旧型パジェロからの直接的な乗り換えだけでなく、上級SUVやミニバン、デリカD:5、アウトランダーからの移行が見られます。パジェロという名称が、かつての所有者を呼び戻すだけでなく、三菱車を初めて選ぶ理由として働き始めています。

一台の利益を高める旗艦車の役割

2019年の「パジェロ ファイナルエディション」は453万600円でした。新型の最廉価グレードはそこから約166万円高く、消費税率や装備、車体構造の違いを考慮しても、大幅な上級移行です。

三菱自動車は新たな中長期ビジョンで、アセアン商品群とオフロード商品群へ経営資源を集中し、6年間で13車種を投入する方針を掲げています。パジェロは単独の商品ではなく、将来のシリーズ展開を主導する中核です。

大量販売だけを狙うなら、より安価なSUVを幅広くそろえる方法もあります。しかし規模でトヨタと競うのではなく、走破性、四輪制御、冒険という三菱自動車固有のイメージを高価格帯で収益化する方が、ブランドの輪郭は明確になります。

2026年度上期の三菱自動車の国内販売は6万1335台で、前年同期比5.9%増でした。アウトランダーPHEVも2025年度に国内7794台を販売し、PHEVカテゴリーで首位を獲得しています。パジェロには、こうした専門性の高い商品群を束ね、販売店へ新規顧客を呼び込む看板としての役割があります。

生産時期と再販価値に残る購入判断の不確実性

「619万3000円から」という価格には注意が必要です。発売時点で生産が始まるのはSUPER EXCEEDとGSRで、最廉価のGLSとEXCEEDは2027年4月からの生産予定です。早期納車を優先する場合、実質的な入口は676万5000円のGSRとなります。

予約時点の工場出荷の目安も3~4カ月とされています。約5500台の初期需要が一巡した後も受注が続くか、タイでの生産と輸送が安定するかは、納期や販売実績を左右します。新型車を急いで契約する前に、グレード別の生産時期を販売店で確認すべきです。

競争環境も固定されていません。ランドクルーザー250のディーゼル車が復帰すれば、動力性能や燃費の差は縮小します。ランドクルーザーが築いてきた中古車価格や海外需要に対し、復活したパジェロがどの程度の再販価値を形成できるかは未知数です。

また、約2.4トンのディーゼルSUVは、電動化が進む市場で長期的な環境規制や税制の影響を受ける可能性があります。12.1km/Lという燃費は現行ランクル250のガソリン車より良好ですが、都市部中心の短距離利用なら、PHEVなども含めた比較が必要です。

試乗と見積もりで確かめる旗艦SUVの価値

新型パジェロは、ランドクルーザー250より約41万円高いという一面だけでは評価できません。全車ディーゼル、7人乗り、S-AWC、スーパーセレクト4WD-IIという構成には、三菱自動車が守るべき機能を廉価グレードでも削らない意思が表れています。

購入を検討する際は、本体価格に加え、燃料費、タイヤ交換費、保険、駐車環境、残価設定ローンの条件まで確認することが大切です。18インチのGSRと20インチのEXCEED系を乗り比べ、日常の快適性と必要な悪路装備を見極めれば、装飾だけに費用を払う選択を避けられます。

5500台の予約は復活への期待を証明しました。今後の焦点は、その熱気を継続的な販売と高い再販価値へ変えられるかです。パジェロの619万円は、車両の値札であると同時に、三菱自動車が自らのブランドに付けた新しい価格でもあります。

参考資料:

藤
藤田 七海

ブランド・消費文化・ライフスタイル

ブランド戦略・消費文化・ライフスタイルを幅広く取材。歴史や科学にも造詣が深く、多角的な視点で社会の「今」を切り取る。

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